Amazon.comの子会社Amazon Web Services Inc. (以下、AWS) とマイクロソフトは、新しい深層学習ライブラリであるGluonを発表した。Gluonによりあらゆるレベルの開発者が、クラウド、エッジデバイス、そしてモバイルアプリに向けて、高度な機械学習モデルをプロトタイピングし、構築し、トレーニングし、展開することが可能になる。
現時点ではGluonはApache MXNetをサポートし、近い将来にはMicrosoft Cognitive Toolkit (CNTK) をサポートする。Gluonインターフェイスにより、開発者はシンプルなPython APIと最適化された多様なニューラルネットワークコンポーネントを使用して機械学習のモデルを構築できる。
これにより、あらゆるレベルの開発者が性能を妥協することなく、簡潔なコードによりニューラルネットワークを容易に構築できるようになる。AWSとマイクロソフトはGluonの参照仕様を公開しているため、他の深層学習エンジンもインターフェイスを統合することができる。
開発者は、学習データ、モデル、そして、アルゴリズムという3つのコンポーネントを使用してニューラルネットを構築する。アルゴリズムはモデルをトレーニングし、データ内のパターンを理解できるようにする。
データ量は膨大であり、モデルとアルゴリズムは複雑であるため、モデルのトレーニングには数日、さらには数週間を要する。トレーニングプロセスの最適化と迅速化を支援するためにApache MXNet、Microsoft Cognitive Toolkit、TensorFlowといった深層学習エンジンが登場してきている。
しかし、これらのエンジンでは開発者が長く複雑で、変更が困難なコードを使用して最初の段階でモデルとアルゴリズムを定義する必要があった。モデル構築を容易にした深層学習ツールもあるが、その単純性のゆえに学習性能が低いという問題があった。
Gluonインターフェイスは両者の優れた部分を提供する。つまり、プログラマーがニューラルネットワークモデルのプロトタイピングと実験を迅速に行うための簡潔で理解しやすいプログラミングインターフェイス、そして、基盤となるエンジンの処理速度への影響を最小化したトレーニング手法となる。
開発者はGluonインターフェイスを使用して、ニューラルネットワークを迅速に作成し、そのサイズと形状を動的に変更できる。
さらに、Gluonインターフェイスは、学習アルゴリズムとニューラルネットワークモデルを組み合わせているため、開発者はモデル学習を一段階ずつ進めることができる。これはニューラルネットワークのデバッグ、更新、再利用が容易になることを意味する。
Gluonインターフェイスはオープンソースであり、Apache MXNet 0.11 向けに既に公開されている。CNTKは将来のリリースでサポートされる。初心者および熟練者向けのチュートリアルも公開されており、開発者はMXNetでのGluonの使用方法を学ぶことができる。
【関連リンク】
・Gluonインターフェイスの入門情報(英語)
・Gluon初心者および熟練者向けのチュートリアル(英語)
・アマゾン ウェブ サービス(AWS)
・マイクロソフト(Microsoft)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。