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IoT/AIによる、小売業の「買われ方」の変化 [Premium]

Amazonの小売改革が激しさを増している。

すでにご存知の通り、Amazonは、1994年その前身となるCadabra.comをスタートした。その後、1995年に改名し、1997年にNASDAQへ上場、1998年にはAmazon Music Store、2002年にAmazon WEB Serviceをスタートしている。

その後、クラウドネイティブな企業にとって欠かせないクラウドサービスプロバイダーとして成長していくのだが、2007年には生鮮食料品販売のAmazon Freshを開始、2014年には、Amazon Echoを発売開始し、ついに今年はホールフーズも買収、今後は物流企業への進化も噂されている。
(参考:Wikipedia)

そんなAmazonの成長だが、日本企業にとっても対岸の火事とはいえなくなってきている状況で、楽天vsAmazonなどと、インターネットの世界では以前から競争が存在しているが、小売業や物流業もついに、お尻に火がついてきている状態といえるだろう。

よくAmazonの活動について解説されている記事はあるが、国内の流通業がどのような影響を受けて、どう変わらないといけないのか、について解説しているケースはあまりない。

そこで、Amazonの動きをリファレンスしながら、IoTやAIをつかうことで、小売や流通業にどういう変化が起きているのか、そして国内の流通業がどうしていくべきなのかを解説していく。

IoT/AIによる購買のあり方の変化

小売・流通業は当たり前だが、一般消費者に商品を売って儲けている。

まずはじめに、小売・流通業にとって気になるのはこの、「購買のあり方がどう変わっていくのか」だろう。

かねてより、「オムニチャネル」への対応が言われてきているが、ヨドバシカメラに代表されるようなオムニチャネルへの対応が進んでいる企業は決して多いとは言えない。

いきなり各論を述べる気はないのだが、テクニカルには、一元化された顧客IDをキーにして、リアル店舗とバーチャル店舗(いわゆるEC)のどちらでも購入可能な状況を生み出すのが一般的な手法だ。

国内の流通業の歴史としては、ポイントカードに代表されるような顧客を特定する仕組みはもともとあるものの、実態としてはCRMのキーとして活用するよりも、ポイントによる来店・購買促進といった「販売促進」の要素で使われることが多かった。

一方、アマゾンではどうだろう。

Amazon.comはECサイトなので当然顧客IDを持っているのだが、アメリカの物流網の貧弱さから、商品がすぐに届かないケースが多かった。

そこで、Amazon Primeサービスという、年会費が必要なサービスを始めたのだが、この会員になることでアマゾンは配送日の問題と費用の問題を一気にクリアしようとしたのだ。

日本では「10日に到着する」というと、配送日に配送されないことの方が珍しいという物流網なので、このサービスは対岸のことだと思っただろう。

しかし、アマゾンは、これをきっかけにAmazon Primeの特典を全方位に展開しだすのだ。

  • 早期到着、無料配送
  • 無料ビデオ視聴
  • 室生音楽視聴
  • セール品へのセール開始前30分前のアクセス

など、プライム会員になるメリットは大きいと言える。(実際に国内の利用者でも、配送料が無料になることや、デジタルコンテンツが無料視聴できることをきっかけにプライム会員になる利用者も多い)

そして、Amazon.comの構造を見るとわかるのだが、一つのコンテンツを見ようと思うと、いろんな見方を提案される。

たとえば、とある本を読もうとすると、kindleで読めることが提案されるように、映画を見ようとすると、ストリーミングでも、ダウンロードでも、購入でも利用が可能なのだ。

こうやって、一つのコンテンツに対してリアルとバーチャルの世界で多様な利用の仕方を提案することで、多様なニーズにも対応していっているのだ。

生活動線の中に購買を入れ込んだAmazon Dashボタンという発明

あまり語られなくなったが、アマゾンの強みは、デジタルからリアルに渡る、全方にわたる商品の配置だ。

「とりあえずアマゾンに行けば買える。」というイメージが定着することで、次の発展が始まる。

デジタル化可能なコンテンツでの利用や、膨大なアイテム数を擁するECサイトでの購買が進んできたところに、さらにAmazon Dashボタンをリリースする。

Amazon Dashボタンとは、物理的なボタンがあって、そのボタンはAmazon.comでの購買と紐付いている。

設定したボタンを押すだけで、注文がされ、自宅にそれがとどくという手軽さが売りだ。

国内の家庭にいないオジサマには不評を買っているようだが、実際に生活しながらこのボタンを利用するととても便利だ。

消耗品を中心に、それを使う場所にボタンを配置する。例えば、トイレットペーパーがなくなることはトイレにいて一番わかることだから、トイレにトイレットペーパーの注文ボタンを配置するという具合だ。

しかし、このボタン、消費者にとっては実はとんでもないボタンなのだ。

実際に使ってみるとわかるのだが、例えばトイレットペーパー。いつも同じ銘柄を使っているから、同じ値段かと思いきや、安い日も高い日もある。

つまり、ボタンを押した日によって価格の変動があり得るのだ。

そんなこと、気にしない人ならともかく、安売りの日を狙って買い込む節約主婦からするとありえないだろう。

ところが、このボタンはそこを割り切っているところがすごい。(おそらく日本のスーパーだと「できない」というだろう)

そして、将来的にこのボタンが普及することで、消耗品や卵や牛乳といった日々使う商品の安売りをきっかけに来店を誘引するという、従来型の誘引試作が機能しなくなることが恐ろしい。

日本のネットスーパーが、従来型のチラシによる来店誘引から抜けられず、雨の日の利用に限定されている状況をみれば、いかにこの「購買のありかたの変化」が追従しがたいものかがわかるだろう。

アマゾンからすれば、消耗品や日配品からスタートして、注文する習慣をつけてもらったら、その後はアイテムを増やしていけば良いということになる。

Amazon Echoが与える購買への影響

Amazon Echoなどの音声対応スピーカーは、国内では「スピーカーとして意味があるのか」「日本語の処理能力が低い」という議論が多いが、特に小売業においてはこれはまったく本質を見ていない的はずれな議論だ。

Amazon Echoは当然Amazon.comと繋がっていて音声による注文が可能なのだが、この脅威は実は、Amazon Dashのそれと全く同じなのだ。

例えば、料理をしている最中にドレッシングが切れそうだとわかったら、「ドレッシングを注文しておいて」と言えばよいのだから、もはやスマートフォンを取りに行って、ロックを解除して、注文するという行為も不要となる。

Amazon Dashにしても、Amazon Echoにしても、大事なことは注文行為そのものが、「わざわざお買い物をしようとしていない」ことだ。

「必要になった時に、必要になった場所で、すぐ買える」こんなことがどんどん実現されてきていることが重要なのだ。

ここで、賢明な読者なら気づいたかもしれないが、もちろん、外出先でふと思い立った時も同じ仕組みですぐに注文していおけるから、もはや「買い物リスト」がいらなくなる。

 
そんなことを言っても、「何もかもをアマゾンだけで買うとは限らない」という議論を持ちかける人がいるが、そんなことは当たり前だ。すべてを一つの店舗で充足するということは不可能だし、買い物を楽しみたいという気分はこの買い方では満たせない。

ここで重要なのは、そういうことではなく、購買の入り口が変化することで、これまでの「安売りのチラシ一点張り」が、より一層効かなくなるということなのだ。

新聞を取るのが当たり前で、そこにチラシが入っているのも当たり前、チラシに丸をつけてスーパーに買い物に行く専業主婦が大半を占めていたという、ある意味画一的な社会で成長してきた既存企業は、生活者のライフスタイルの変化に対して、このようなあたらしい購買手段の多様化を提案してこれただろうか。

私が知りうる限り、一所懸命顧客を分析をしようとするが、それはチラシの伝え方を細分化する程度の話で、自分たちの売り方は変えてこなかったように見える。

嗜好性の高い商品をダイレクトマーケティングで誘引するというアプローチの落とし穴

これまでの小売業の顧客分析は、顧客のセグメンテーションに始まり、ダイレクトマーケティングと呼ばれるターゲティングされた顧客に興味がある商品をぶつけていくというアプローチが取られてきた。

もちろん、このアプローチはCRMとして正しい。

例えばにんじんを買う時に、「生産者の顔が見える安心だけど少し高いにんじん」「千葉県産とかかれたにんじん」「栄養価が高くてブランド力の高いにんじん」とあったときに、みなさんはどれを買うだろうか?

そして、「栄養価が高くブランド力の高いにんじん」を買っている人には、どういうキャベツを進めるだろうか。

このアプローチに決定的に欠けている観点がある。それは、「そもそもそのお店で買うという前提があること」だ。

もし、アマゾンが同じにんじんを扱ったらどうなるだろう?ということには議論が及んでいない。

嗜好性の強い商品は、指名買いができるため通信販売に適しているということはご存知の方も多いだろう。

生活動線の中に深く入り込んだ、さまざまな仕組みが普及していくと、アマゾンからするとこういった商品を訴求する顧客とのコンタクトポイントがますます増えて行くのだ。

現状、Amazon Dashボタンも、Amazon Echoも各家庭に入っているとは言えない状態で、いきなりこういう事態が一般化するとは思えない。

しかし、ここに書いたように多面的な見方で戦略的に家庭内の購買のポイントを押さえてくる「ソツのなさ」は、研究する必要があるだろう。

国内の店舗型の小売・流通業が取るべき対策

では、国内の店舗型小売・流通業が取るべき対策はなにがあるだろう。

まずは、オムニチャネル対策だ。これは、もうおそらく逃れることができないことだと思われる。

実際、若者向けアパレルブランドを展開する、ナノユニバースの話を聞いた時も、かなりの売上比率がZOZO TOWNとなっているという現状があるということだ。

今や店舗でショールーミングして、ECサイトで買う、ECサイトで買ったものも試着してどんどん交換する、最終的に買ったものはメルカリで売買する。といった流れがアパレルには存在している。

ここでも重要なのは、顧客のインサイトではなく、「買われ方の変化」だ。

デジタル社会はこの10年で大きく変化したと言える。特に、iPhone3GS以来のスマートフォンの普及がこれを大きく後押ししていると言えるだろう。

オムニチャネルの環境を整備したら、次は「生活の変化に伴う買われ方の変化を考える」のだ。

Amazon EchoもAmazon Dashもここで示した例は、日用品や食料品といったこれまでスーパーが売ってきた商品だ。

こういった日常使いの商品購入のあり方は、ネットスーパーが登場以降もそれほど変わってこなかった。

つまり、日常使いの商品を扱っている企業は、「買い方の変化」にいますぐ対応していく必要があるのだ。

ありがたいことに、Amazon Dashボタンは、ボタンを押した際の挙動を自分でプログラムすることができるタイプのものもある。

そこで、オムニチャネルに対応したら、次は自社サービス版のAmazon Dashボタンを作るべきだろう。

Amazon Echoにしても、アマゾンはAPIを公開しているので、自社のECサービスと連携することは可能なのだ。

アマゾンが攻勢をかけてきたからといって、手をこまねいている必要はない。

インターネットのオープンな考え方のもとに作られた仕組みを、借りることで自社もいくらでも、いますぐにでも最新の手法に居着くことができる。

大事なのは、これまである顧客の基盤を失うことなく、新しい仕組みを取り入れて成長することなのだ。

手を尽くさないでいると、気づいた時には大きくシェアを落としている状況になりかねないのだ。

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