IoTとAIで物流を再定義することで生まれる、小売や飲食業を巻き込んだビジネスチャンス[Premium]

先日、ヤマト運輸が全車両にIoT機器(車載端末)を導入したという記事を掲載した。

ヤマト運輸、IoT活用ですべての集配車に車載端末を導入

もともと、物流業における車両管理は、IoTの以前から注目が高く、以下の様な利用用途が考えられていた。

  • 資産管理
  • 安全運転
  • 車両の位置情報の管理

ここで、「資産管理」は、大量に購入またはリースされた車の車検の状態や保険、保守の状況などを管理することだ。

「安全運転」は、車載機に加速度センサーなどを搭載することで、急発進や急ハンドルの状況をモニタリングすること。

危険運転は事故につながるので、ここを可視化することでドライバーの教育にも利用するという動きもある。

そして、「位置情報」は、トラックがいまどこを走っているのか?を把握することで、荷主や荷受にとっての付加価値サービスが展開できる。

 
これらのことは、直感的にも判りやすい内容だと思うが、実は、IoTとAIによって、こういった単純なメリットだけではなく、あらたなビジネスチャンスが生まれようとしていることに気づいているだろうか?

ハンブルグ港湾局の事例にみる、物流IoTのポイント

IoTの初期の事例として有名なのが、ドイツ・ハンブルグにおける港湾局の事例だ。

ハンブルグは、地図をみていただくとわかるのだが、エルベ川の河口から100kmも内陸にある港湾都市だ。

港に向かう道路に続く道路はいつも大混雑だったのだという。

港の敷地には、巨大な船が横付けするのだけど、船に積み込むべきコンテナは「倉庫番」のゲームのごとくうまい配置をしておかないと、無駄に人件費と時間がかかることとなる。

そこで、港としての工夫をさまざま試みるのだが、流通量が多くなるにつれて、敷地の有効利用だけではどうにもならない問題がでてきたのだ。

先の港に続く道路の渋滞がそれだ。

大渋滞の結果、本来時間に到着すべきトラックが到着しない。その結果、必要な荷物を船に積み込むことができなくなるという事態が起きだしたのだ。

クルマの自然渋滞の理論と同じで、こういうことがどこかの船で起きると、港全体の機能にも影響を及ぼし出す。

そこで、港を運営する港湾局は、トラックにIoTデバイスを搭載することを決意したのだ。

具体的には、

  • トラックの位置情報を車載機やドライバーのスマートフォンで可視化
  • 鉄道や船の運航情報を把握、駐車場の空き状況も把握
  • 船の入港時刻にあわせてトラックを港にいれるため、少し離れたパーキングでトラックをまたせる

といったことを実現したのだ。これを、「スマート・ポート・ロボティクス」という。

つまり、トラックと積荷が今どこにいるかがわかるだけでなく、トラックが港にくるタイミングを指示することで、港に通じる道は大渋滞から逃れることができたのだ。

全部のデータが集まった時のメリットとは

ハンブルグ港湾局の事例では、川の沿岸の敷地をこれ以上拡大することができないという地理的要因と、今後も増え続けるであろう荷物の量と、ロッテルダムやアントワープという、海辺の港町が競合としてでてきているなかでプレゼンスを出す必要があった。という大きく3つの要因からこの取り組みは始まっている。

170万人いる人口のおよそ10%(15万人程度)が働く港町を守るために、IoTを活用して工夫をしたという事例だ。

 
ここで、話をヤマト運輸の例に戻すと、物流のIoTにおいて、データの持ち主は誰だろう?

もちろん、物流業者だ。ヤマト運輸の場合は、もちろんヤマト運輸だ。

ヤマト運輸はパートナーを含む、自社のトラックを自社の物流センターから配車し荷物を運んでいる。

アマゾンをはじめとする流通の変化によって、「荷物の量は年々増加」しており、「ドライバー不足」も年々深刻になってきている。

そういう中で、どう効率化していくかということはとても大きな課題なのだ。しかし、これまでは車の位置や配送設備の状態も全てが可視化できているわけではなかった。

では、IoTによって、「全部のデータ」が集まったらどうなるだろう?

そして、「全部のデータ」を活用して、一番効率的な動きをAIが提示できるとしたらどうだろう。

 

荷物の量の増大に対する対応

配送センターには、トラックを駐車するキャパシティに限界があるが、ここは、ハンブルグ港湾局の例のように、荷物の出荷状況をリアルタイムで監視することで最適化されるので、これまで駐車場として活用していたスペースも荷物を置く倉庫として利用が可能になるのだ。

荷物のサイズは配送時間を把握することで、どのトラックにどの荷物をどのタイミングに積み込めば良いかがわかる。

こうすることで、荷物の増加に対応することができる。(他にも手法はいろいろとあるが割愛する)

ドライバー不足に対する対応

そして、すべての車の位置情報と荷物の積載状況、配達状況などがわかれば、ドライバーへの配送ルートの指示が効率化される。

ドライバーには申し訳ないが、サボっている時間は今以上になくなる。

こうすることで、ドライバー不足にも対応するのだ。

物流業にも外資の波がやってくる

様々なニュースなどで、アマゾンのハイテク物流センターについて報じられる中、物流の世界もかなりデジタル化、ロボット化が進んでいることをご存知の方も多いだろう。

それ自体は、アマゾンが特別進んでいるということではないのだが、問題はサプライチェーンの考え方だ。

いかに、物流倉庫で自動化されたロボットが高速に動いて、入荷や出荷の処理が効率化されたとしても、物流全体で考えるとトラックの輸送時間やよく言われる再配達の問題など、具体的に荷物が届くところの問題が多い。

ドライバーを含むトラックも一つの「モノ」と捉えて、すべての情報をクラウド上にリアルタイムにアップロードし、状況に応じた指示をデジタルの力で実行してしまう。

もちろん、そこには「交通情報」や、「届け先の家庭での不在状況」も含むべきだ。

荷物を送る側にとってのお届け日が「明日の午前」であっても、荷物を受け取る側にとってのお届け日は「明日の午後」の方が都合がよいかもしれない。

こういった情報も全部クラウドで管理することで、とても複雑な、複数のパラメータ管理すべき状況もデジタルの力を使えば最適化することが可能になる。

IoTとAIで物流を再定義することで新しいビジネスが生まれる

みなさんは、「UBER」をご存知だろうか。いわゆる白タクだが、利用者もドライバーもスマートフォンを持っていて、利用者が、現在地と目的地を設定すると、ドライバーが現在地まで迎えに来て、あらかじめ登録されているクレジットカード情報を使って支払うというサービスだ。

このサービスの中に、ライドシェア(相乗り)があるのをご存知だろうか?

例えば、4人乗りのクルマの場合、ドライバーをのぞけば3人乗ることができる。

利用者は、相乗りを指定すると割安で利用することができるのだ。ドライバー側も一人を乗せるより多くのフィーがもらえる。

では、多くのクルマと多くの利用者が街にいる状態で、それぞれの利用者はいろんな場所を指定するのだが、UBERのシステムはどうやって配車をしているのだろう。

どのドライバーが誰を乗せていけば、一番利用者にとってストレスがないルートで目的地に到着することができるだろうか。

おそらく人が意思決定することは不可能だ。

 

ここで、ピンと来た方も多いと思うが、荷物の集荷と配達でもこれと同じことが可能なのだ。(トラックの場合は積載量があるのでこれより複雑になるだろうが)

つまり、サプライチェーン的な(とあえていう)ビジネスプロセスの場合、すべての状況をクラウドで把握することでこれまでできなかった効率化が実現可能となるのだ。

現状現実的とは言えないが、例えば「スマートフォンなどで近所のスーパーに肉と野菜を注文したら、ヤマトのトラックがAIに指示されて、スーパーの近くを通る時に注文の品をピックアップして、自分の家に届ける」なんてサービスも今後は可能になるのかもしれない。

さらに、「とあるレストランで窯焼きピザを頼んだら、ヤマトのトラックがピザをピックアップして届けてくれる、なんて日が来るかもしれないのだ。

ヤマトに限らず、様々な物流企業が個々の状況(データ)をすべてシェアして、物流網全体をつないでいくことで、今では考えられない便利なお届け生活が実現される可能性がある。

ヤマトやアマゾンがいかに物流網を整備していったとしても、「全部」を取り込むことは不可能だ。競合するだけでなく、うまく協業することで、既存の物流企業はもちろんのこと、小売業・飲食業にとっても新しいビジネスを始めるチャンスとなるだろう。

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