フォークリフトの安全と自動管理サービス「FORKERS(フォーカーズ)」 -三井物産エレクトロニクス 代表取締役 小野塚氏 インタビュー

総合商社は戦後、日本経済復興のためにグローバルな商取引をすることで発展した。しかし、メーカーが自ら材料を調達し、独自の販売網を築きだしたことなどをきっかけに、冬の時代を経験している。

その後も幾度となく課題に直面するが、商社機能の拡大や物流ネットワークの構築、資源開発事業の参画などを模索することで、時代に合わせ商機を見出してきた。その商社は、現在どのようなことを考えているのか。

今回、三井物産の100%子会社で、IoTを使った新しいビジネスモデルにチャレンジしている三井物産エレクトロニクス株式会社に取材をした。

  • お話いただいた方
  •  三井物産エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長 小野塚 洋氏(写真左)
     同社 ソリューション事業本部 事業本部長 丸 恒樹氏(写真右)

  • 聞き手
  •  IoTNEWS代表/株式会社アールジーン 小泉耕二

     
    -三井物産エレクトロニクス社について教えてください。

    小野塚: 三井物産エレクトロニクスは、三井物産の100%子会社です。源流は物産マイクロという半導体商社で、いくつかの子会社が合併して今日に至っています。

    会社の名前の通り、エレクトロニクス製品の専門商社として経営をしてまいりましたが、「次の成長戦略はなんだろう?」ということをずっと模索していました。

    3~4年前は「M2Mが伸びる」と言われていて、弊社もリソースもかけ、M2M用デバイスやプラットフォームを輸入して広げていくことを試みましたが、PoCまでしか進みませんでした。

    デバイスやプラットフォームの売り先は、主にシステムインテグレーターでした。彼らも、同じベクトルでM2Mの市場を立ち上げるために、試行錯誤していましたが、なかなか市場が立ち上がりませんでした。

    フォークリフトの安全と自動管理サービス「FORKERS(フォーカーズ)」 -三井物産エレクトロニクス 代表取締役 小野塚氏 インタビュー
    三井物産エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長 小野塚 洋氏

     
    -長い間PoCを実施されていたのでしょうか?

    小野塚: はい。ここに至るまでに、いくつかの分野で実証実験を行ってきました。

    そして2年ぐらい前から、M2MからIoTという言葉に代わり、さまざまなお客さまに話を聞く中で、「物流の分野は効率化の課題が残っていて、その中でもフォークリフトは、安全管理において非常に大きな課題になっている」ことが分かりました。

    そこから「我々が安全を監視するソリューションを作って、サービスとして提供する」というストーリーが固まっていきました。

    我々が幸いだったのは、三井物産グループの中に物流をやっているさまざまな事業領域の会社がいくつもあり、物流現場のニーズを聞いたり、実証実験を手伝ってもらったりして、「あ、これはいけるんじゃないか」という確信を持つことができたことでした。

    そして、1年ほど前に専ら他社の作ったIoTゲートウェーやプラットフォームを販売するというビジネスモデルから自社製品開発に舵を切って、フォークリフトの安全と自動管理サービス「FORKERS(フォーカーズ)」を開発することを決断しました。

     
    -FORKERSはどのようなことができるのでしょうか?

    小野塚: IoT技術により、フォークリフトの安全と自動管理を提供するサービスです。どんなメーカーのものでも、新品でも中古でも、設置可能なのが一つの特徴です。

    フォークリフトを急停止したり、急旋回等の危険運転をしたりすると、遠心力で荷崩れしてしまうことがありますが、今までは「いつ、誰が起こしたのか分からない」という問題がありました。しかしFORKERSは、先ずRFIDで運転者を認識し、危険運転や衝撃をセンサーで検知し、その場面の映像と合わせて報告するので、いつ誰がどんな危険運転をしたのか管理者が確認をすることができます。

    クラウドでのレポートには世界最大のCRMであるSalesforceを使っています。フォークリフトには、カメラを標準で2台付けていますが、運転者の手元も取りたいというお客さまもいるので、その際はオプションでカメラを追加することが可能です。

    それぞれのフォークリフトの稼働時間を確認することができますので、明らかに短い使用時間のフォークリフトは、リースアップしたり他に回したりなどして、フォークリフトを効率的に運用することができます。

    また、お客さまの要望で、部品のメンテナンス時期にアラート出す機能も付けたので、ダウンタイムが発生する前にエンジンオイルを交換したり、走行距離を見てタイヤを交換したりすることもできます。もちろん防水・防塵で、雨の中で使うのは全く問題ありません。

     
    -事故の抑制に一番効果がありそうですね。

    小野塚: そこがまさに、皆さんが関心をお持ちのところです。事故が起きると現場が止まってしまいますし、ましてや人身事故となると労災という話になりますから企業が被る損失は膨大です。安全への意識が高いお客様からは「あ、こういうのを探していた」と言っていただくことが多いです。

    FORKERSは、稼働データや危険運転画像をWi-Fiと3Gで自動的にクラウドに配信することができるので、今までのようにSDカードを抜いてわざわざパソコンに落として危険運転場面を探すという作業がない点も、大変好評をいただいている理由かと思います。

    あるお客さま企業では、事故があった際に「動画を早送りしながら危険運転が行われた場面を探し、動画Fileを切り取って報告書を作成する」ことを実際にやっておられました。FORKERSはセンサーで危険運転を感知していますので、危険運転の状況が自動的に報告されるため、管理者に手間をかけることがありません。

     
    -つまり、加速度センサーで急発進などの危険運転を認識したら、直前直後の何秒間かのデータをクラウドにあげるという機能が付いているということでしょうか。

    小野塚: その通りです。通常、自動車やトラックの場合は3軸センサーで危険運転を認識しますが、フォークリフトはそれではうまくいかないので、我々は6軸センサーを使用しています。フォークリフトは、その場でスケートのように回るので、その特徴的な動きを認識できるようにしています。

     
    -なるほど。3軸だと横軸方向の回転が分からないということですね。実際には、どの辺に取り付けるのでしょうか?

    小野塚: フォークリフト後部のピラーと呼ばれる柱部分です。(下記写真)

    フォークリフトの安全と自動管理サービス「FORKERS(フォーカーズ)」 -三井物産エレクトロニクス 代表取締役 小野塚氏 インタビュー
    フォークリフト後部のピラー部分に車載機を取り付ける
    フォークリフトの安全と自動管理サービス「FORKERS(フォーカーズ)」 -三井物産エレクトロニクス 代表取締役 小野塚氏 インタビュー
    左側がGPSショックセンサー、右側が電源ボックス

    : フォークリフトは、機種により電源電圧が異なるので、ユニバースにどんな電源でも取れるようにしています。

    小野塚: 価格についてですが、車載器やカメラのセット価格は標準で198,000円、クラウドのサービス利用費と通信量、全部込みで月額3,500円(税抜)です。通信はソラコムを使っています。お得なプランのご用意もありますので、詳しくはお問い合わせいただければと思います。

     
    -「それぞれの車載器セットがどのフォークリフトに設置されているか?」は、どのように認識する仕組みになっているのですか?

    : 弊社でキッティングして全部ひも付けした上で出荷しています。また、運転手がIDをかざさないと警告音が鳴り続ける設定になっているので、必ず運転者を特定できるようになっています。

    フォークリフトの安全と自動管理サービス「FORKERS(フォーカーズ)」 -三井物産エレクトロニクス 代表取締役 小野塚氏 インタビュー
    三井物産エレクトロニクス株式会社 ソリューション事業本部 事業本部長 丸 恒樹氏

     
    -フォークリフトに保険はないのでしょうか?

    小野塚: あります。ただ、ある保険会社は、「フォークリフトの事故が多く、いただいている保険料よりもお支払いする保険金の方が多い」という悩みを抱えておられました。彼らは事故を減らすためのコンサルテーションをされていることもあり、「FORKERSで事故が減るなら」ということで、協業の話を進めています。

    フォークリフトの事故は、労災として認識されるものが年間約2000件、その内死亡事故が約30件、物流業界だと5大労災原因の一つとなっています。これは実際には氷山の一角と思われ、ヒヤリハット事例は更に多くの件数に上ると推測されます。

     
    -他のトラックも含めた物流業者を車両管理している企業と提携もできそうですね。Salesforceだから提携しやすいと思います。

    小野塚: そうですね。拡張性が高く、自由度が高いクラウドを選んでいます。Salesforceベースなので、従業員データなどの労働管理とのクロス活用にも使えると思っています。また、トラックとバスの安全・車両管理ソリューションとして「Cariot forデジドラ」というサービスも提供しておりますので、トラックを持っているお客さまには「デジドラ」をご紹介しています。

    : 日本は今後どんどん人不足になっていくと思われますので、色々な分野でIoTを活用して業務効率化を一生懸命進めていかないと、そのうち国がなりゆかなくなるのではと思っています。物流や介護など人がたくさん働いている業界などでの活用が進んでいくと考えています。

    フォークリフトの安全と自動管理サービス「FORKERS(フォーカーズ)」 -三井物産エレクトロニクス 代表取締役 小野塚氏 インタビュー
    IoTNEWS代表/株式会社アールジーン 小泉耕二

     
    -今後の展開について教えてください。

    小野塚: FORKERSとデジドラ、2つの物流IoTソリューションを打ち出して、物流IoT分野で我々のプレゼンスを確立させたいと思っています。すでにお客さまから「この機能を付けてほしい」などのご要望をいただいているので、機能アップを重ね、お客さまのニーズを満たすソリューションを作っていきます。

    : 人手に頼ることが多い分野なので、ITの活用余地が未だかなり残っている分野だと思います。また、日本国内ローカルの市場も非常に大きいです。例えば我々が戦略市場として選んだフォークリフトはニッチな市場で国内稼働台数の統計がないのですが、国内出荷台数が年間7万台前後、これが10年以上使われるようですので、国内でざっと100万台以上が動いていると言われています。ニッチではありますが、規模感のある市場なのです。

     
    -熟練者がどんどんリタイヤされて、若い人や外国の人達が入ってきた時にこのようなサービスがあるといいですよね。今後、「荷崩れしたら減点します」などの管理をしていく流れができてくるかもしれません。

    小野塚: そうですよね。そのための客観的な可視化したデータを提供できます。

    例えば、食品メーカーさん等はどの会社も「食の安全」を追及していますが、配送中で事故が起きてしまうと「安全ではない会社」だと認識されてしまう可能性があるそうです。せっかく食の安全を突き詰めていても、そういう場面で足を引っ張られてしまいます。ですから、FORKERSはそういう付加価値にもなっているケースもあります。

    その他、非常に高額な製品を取り扱っている物流会社が、フォークリフトで運んだ際に事故を起こしてしまうと大変なことになってしまいます。そのような企業さまには、「攻めの投資として検討したい」とおっしゃっていただいています。

    口コミでお引き合いをいただくケースも増えており、我々としても非常に手ごたえを感じているところです。

    : 「〇〇工場で事故が起きて、人がお亡くなりになった」ということがニュースになってしまうと、ブランドイメージが大きく毀損されてしまうケースもあります。それによる損失を考えると、事故を防ぐための投資をするのは、合理的であるというお話しもいただいています。

    実際にそこに気付いていられる方にお話すると、「ああ、いいよね。」というご評価をいただきますので、そういう反応が少しずつ多くなってきたかなというのが、現在の肌感です。“ビジネスモデルの提案”或は、“付加価値の創造”という点では、メーカーではなく我々のような商社の方が長けているところはありますので、そこで勝負していきたいなと考えています。

    小野塚: トライアルで1カ月ぐらいお試しいただけるプランもありますので、多くの方にお問い合わせいただきたいと思っています。

    フォークリフトの安全と自動管理サービス「FORKERS(フォーカーズ)」 -三井物産エレクトロニクス 代表取締役 小野塚氏 インタビュー
    三井物産エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長 小野塚 洋氏

     
    -本日はありがとうございました。

    【関連リンク】
    FORKERS(フォーカーズ) 

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