日立、心疾患患者の再入院リスクを予測するAI技術を開発

株式会社日立製作所は、心疾患の入院患者が退院後30日以内に再入院するリスクについて、その根拠を提示するとともに、高精度に予測するAI技術を開発したと発表した。

米国の代表的な医療機関の一つであるPartners HealthCare(以下、PH)と共同で、PHの有する医療データを用いた効果検証を行った結果、AIが患者の再入院リスクを高精度(※1)に予測できることが確認された。

さらに、AIが予測したリスクに応じて、適切にPHの退院後ケアプログラムを適用した場合のシミュレーションを行った結果、従来基準に比べ2倍以上の患者の再入院を防止し、1人あたり年間約80万円(7,000ドル)の医療費低減効果があることが確認された。

今後、日立とPHは、今後の入退院患者に対する本AIの効果検証や、医療従事者による評価を進め、実際の医療現場への提供をめざすとしている。

※1 AUC(Area Under the Curve):0.71。AUCは統計・データ解析で用いられる、判断・分類精度の良さを0~1で表す指標。完全に正しい判断・分類が可能な場合は1。

高齢化が進む先進国を中心に、医療費の増大が社会問題となる中、政府と民間医療保険会社の双方で、医療サービスの質の向上とコスト抑制の両立をめざす取り組み(バリューベース・ヘルスケア)が進められており、米国の病院経営では、医療の質の担保のために、30日以内の再入院率が重要な指標の一つとして管理されている。

そのため、PHでは、特に再入院リスクの高い心疾患患者を対象として、退院後に脈拍データなどを収集し、メールや電話でのケアを提供するプログラム(CCCP:Connected Cardiac Care Program)を実施し、再入院率の低減に取り組んできたという。

今回、さらなる再入院率の低減に向け、日立は、心疾患患者の再入院のリスクを予測し、その根拠を説明できるAI技術を開発し、PHと共に効果検証に取り組むに至った。

同AI技術は、高精度な予測モデルを構築するためにディープラーニングを利用しており、PHが有する、入院患者に対して行われた処置や投薬、病歴などの医療情報と、過去の医療判断要素の蓄積である、医療ガイドラインの情報を学習することで、退院してから30日後に再入院するリスクを予測するものだ。

従来のディープラーニングは、利用した情報と予測結果との因果関係を説明することが困難なため、医療分野での活用において課題となっていた。そこで、日立は、ディープラーニングの学習結果を解析し、医師が理解でき、医療行為に反映するための判断ができるような数十個の要素のみを抽出して、リスク予測を行う技術を開発した。

このリスク予測式から、標準的な統計解析手法によって、再入院リスクと、判断要素の寄与度を算出することが可能。これにより、高い予測精度と、医師が理解できるリスク根拠の説明の両立を実現した。

予測モデルの構築と効果検証にあたっては、2014年から2015年に入退院した心疾患の患者約12,000人の電子カルテに記載された治療内容や患者の容体などを用いた。この結果、同技術は高い予測精度(AUC:約0.71)と評価され、実用上の一つの目安となる70%を上回った。

この予測をCCCPに適用した結果をシミュレーションしたところ、入院中の医療費が高い順に適用患者を選ぶ従来の基準に比べて、再入院を防げる患者の数が最大2倍以上になり、患者1人あたり年間で約80万円の再入院コストを削減できる見通しが得られたという。

【関連リンク】
日立(HITACHI)
Partners HealthCare

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