ダイダン株式会社は、株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)の協力を得て、ビルの空調制御をIoTの活用により完全クラウド化するシステムを開発し、ダイダン技術研究所の新研究棟に実装、本年12月19日より試験稼働を開始した。
同システムは、通常はビル内に設置される制御機器であるPLC(Programmable Logic Controller)を含め、ビルの空調制御に必要となるすべての機能をクラウド上に実装したシステムだ。
ダイダンは、同システムの2019年度中の商用化を計画しており、試験稼働を通じて課題抽出と機能拡充を図っていくとしている。
ダイダンは、かねてより「IoTを活用したスマートビル制御システム」の開発をISIDと共同で進めており、本年5月には、IoTセンサーとクラウドを活用してビルの照明・空調を最適化するシステムの実証実験を行った。
今回開発されたシステムは、PLC自体をクラウド化するという新たな試みに加えて、実稼働中のビル制御システムに適用することで、より実用レベルに近い構成を実現したという。
一般的に、ビル設備をコントロールする自動制御は、建物内に設置されたPLCにより行われている。
PLCを活用した制御システムは、部屋の用途や要求が変わる度に制御プログラムを書き換えたり配線を変更したりする必要があり、従来の仕組みではその都度エンジニアが現地に赴き調整を行っていた。
今回開発されたシステムは、IoTを活用することでPLCを仮想化し、クラウド上で動作する。さらに、建物内の制御にかかわる通信は、全て無線化している。
これにより、遠隔地から即座にプログラムを更新できることに加え、運転状態の確認や設定内容の変更をスマートフォンやタブレットのアプリから簡単に行えるため、ビルメンテナンスに関わる利便性・効率性が向上する。
また、複数の建物の制御システムをひとつのクラウドに集約して管理することも可能で、自動制御システムの運用コストの低減が図れるほか、従来施工する必要があった制御配線や制御機器が不要となるため、省資源化にも貢献するという。
同システムの概要をまとめると以下の通りだ。
- 建物内に設置していた制御機器(PLC)をクラウド上に実装
- 空調設備機器をIoT化
- 遠隔地から設備の監視やエンジニアリングが可能
- 1つの仮想PLCで複数の建物の制御が可能
またクラウド上でのデータ集約・管理やモバイルアプリ構築には、ISIDが提供するバックエンドサービス「FACERE」(ファケレ)を活用している。
「FACERE」は、Google Cloud Platform(GCP、Googleが提供するクラウドサービス)上に構築されており、PLCもGCP上に実装した。
今回は空調制御のみを対象としているが、同試験稼働の成果を踏まえてシステムの信頼性やユーザビリティをさらに向上させるとともに、今後は照明制御や水道衛生設備などのビル制御全般に同様の仕組みを実装し、2019年度の市場投入を目指すという。
また将来的には、AIなどの先進テクノロジーを活用し、ウェルネスオフィスの実現、省エネルギー、省CO2をサポートするソリューションの提供を目指すとしている。
【関連リンク】
・ダイダン(DAI-DAN)
・電通国際情報サービス(ISID)
無料メルマガ会員に登録しませんか?

技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。