NEC、毎秒10万件超の取引を可能にするブロックチェーン技術を開発

NECおよびNEC欧州研究所は、取引記録に参加するノード数200ノード程度の大規模接続環境下で、毎秒10万件以上の記録性能を達成するブロックチェーン向け合意形成アルゴリズムを開発したと発表した。

ブロックチェーンは、複数の参加者がデータの記録と共有を行い、データの保証や改ざん防止を行うものだが、記録速度や参加ノード数の拡張性に課題があった。この課題はブロックチェーンが参加ノード間の合意形成に用いるアルゴリズムに起因していたという。

今回、NECは、記録性能、参加ノード数で従来を超える性能を持つ合意形成アルゴリズムを備え、かつ関係者外からデータを秘匿可能なソフトウェアを開発。さらに、IoTデバイスからの高速参照も可能にしたという。

背景

ブロックチェーンは、参加者がインターネット上でデータの記録と共有を行うための仕組みだ。信頼できる組織や中央サーバを介さなくても改ざんされていないデータを共有していることを保証できるという特徴がある。

現在、ビットコインを始めとする仮想通貨の処理に活用されているほか、セキュアな情報共有の手段として注目を集め、世界各地で証券取引、貿易取引、エネルギー取引、サプライチェーン、公文書管理など多岐にわたる用途での実証実験が活発に行われている。

このように大きな注目を浴びる一方、ブロックチェーンには課題もあるという。

一つは、ブロックチェーンが用いる合意形成アルゴリズムに起因する、記録速度や参加ノード数の限界性だ。ビットコインのブロックチェーンは誰もが自由に活用できるが、毎秒7件の書き込みが性能限界とされている。

ビジネス向け用途を想定した参加者限定型のブロックチェーンにおいても、参加ノード数が数十ノードを超えると性能が極端に悪化してしまう。

もう一つの課題は、データの秘匿性だ。全ての参加者が全ての記録を見ることができるため、個人情報や企業秘密を記録するには支障があるということだ。

新技術の特長

1. トラステッドハードウェアをフル活用して高い処理速度を実現

参加ノード数が200ノード程度の大規模環境下で、毎秒10万件以上の記録性能を実現した。これは、近年の汎用プロセッサが備えるトラステッドハードウェアTEEのセキュリティ機能を最大限を活用して、参加ノードが合意形成するために必要な通信量ならびに通信回数を削減することで実現したという。

TEE(Trusted Execution Environment):メモリ空間の一部を特定のプログラムからしか読み書きできない領域として保護する機能。たとえ管理者権限があってもその領域は読み書きできないため、サーバやPCが攻撃者に乗っ取られても、その領域内で行われる処理は正しいことが保証される。代表例は、Intel SGXやARM TrustZoneなど。

2. 取引情報のプライバシーを保護

取引情報を全参加ノードに一律に公開するのではなく、取引情報の公開範囲を限定できる仕組みを開発。これにより、特定グループ内の取引情報はグループに属するノードにのみ公開するという制御が可能になるという。

3. IoTデバイスからも高速で安全なデータ参照を実現

IoTデバイスがブロックチェーンのデータを参照する際に、個々の参加ノードが故障や悪意により記録と異なる情報を回答する場合があるため、複数の参加ノードに問い合わせて検証する必要があり、処理能力が限られるIoTデバイスには負担になる。

そこで、参照の際にも、各参加ノードのTEEを活用して、IoTデバイスでも高速な検証を可能にしたという。
 

同技術により達成された性能は、世界規模のクレジットカード取引を支えるシステムに必要とされる、毎秒数万件を上回っており、記録性能やノード数の制約によってブロックチェーンの適用を断念していたケースへの対応が期待できる。

また、取引情報のセキュリティとプライバシーを保証することで、個人情報や企業秘密にあたる取引の取扱も可能になるという。

【関連リンク】
日本電気(NEC)

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