STマイクロエレクトロニクス、安全な自動運転の実現にむけマルチバンドGNSS測位用ICを発表

半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は、自動運転の安全性を向上させるマルチバンドGNSS測位用ICを発表した。

同製品は、セーフティ・クリティカルな車載機器や、数十センチから数センチメートルの高い測位精度を持つPPP(高精度単独測位)およびRTK(リアルタイム・キネマティック)向けに適している。

従来の車載用ナビゲーション・システムは、レシーバと商用衛星サービスを使用し、数メートル以内の測位精度で目的地までのナビゲーションを行っている。

現在、車線逸脱警告(LDW)、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、自動駐車、自動操縦といった自動化システムの普及に伴い、安全性と信頼性を確保するためのさらなる高精度化が要求されており、カメラ、レーダー、LiDARなどの近接センサと組み合わせた運転環境の自動モニタリングが必要となっている。

また、将来の完全自動運転車の実現に向けて、高精度な測位技術が求められている。

STのGNSS測位用ICであるTeseo APP(Automotive Precise Positioning)は、各衛星システムが使用する周波数バンドを2つ以上同時に受信しながら、すべての衛星システム(※1)のトラッキングを行う(その他の製品では、1つの周波数バンドのみを受信)。

これにより、PPPおよびRTKの処理アルゴリズムに必要とされる高品位の測位データを提供する。その結果、高精度の測位と収束時間の短縮が世界中で可能になるという。

高い精度に加え、衛星データの完全性を監視するインテグリティ・チェック機能を持った測位用ICである同製品は、何らかの理由でデータの正確性が低下した場合にはシステムに通知することができる。

これにより、車載機器メーカーは自動車産業における機能安全性規格のISO 26262による最も厳格な自動車安全性レベル(ASIL)に準拠した、セーフティ・クリティカルなシステムを実現することができる。

また、Teseo APPはセキュア・マイクロコントローラを搭載し、セキュア・ブートとデータ認証が可能なため、外部の攻撃から重要なデータを保護する。

Teseo APPに加えて、STはTeseo Vも発表した。この測位用ICは、マルチバンドによる同等の高精度測位技術を搭載し、セーフティ・クリティカルではない機器向けに、インテグリティ・チェック機能を省いたシンプルな製品だ。

STは現在、高級車向け自動運転システム(2020年/2021年に導入予定)を開発している主要顧客にサンプルを提供している。

※1 GPS、GLONASS(グロナス)、Galileo(ガリレオ)、BeiDou(北斗)、QZSS(みちびき)、およびIRNSS

GNSSによる従来の車載用測位システムやナビゲーション・システムには、商用利用可能なL1周波数帯で動作する、単一周波数のGNSSレシーバが使用されており、マルチパスや電離層での伝播位相遅延といった環境に起因する誤差により測位精度が低下することがあった。

Teseo APPは、利用可能なすべてのGNSS信号を、複数の周波数帯(GPS、GLONASS、Galielo、BeiDou、QZSS、IRNSSのL1、L2、L5周波数帯、およびPPPの補強データを含むGalileoのE6信号)で追跡することで、このような誤差をなくし、数十センチメートル・レベルの精度を世界中で実現するという。

これまで、高精度測位情報を含むGNSS信号は、商用ならびに政府機関に専有されていた。精度を向上させるその他の技術には、地上基地局の信号と衛星信号を組み合わせた高コストなディファレンシャル・システムや、RTKなどの技術があるが、一般的には高密度の基準局ネットワークが必要となる。

新しいTeseoは、最大3つの衛星システムで2つの周波数バンドを同時に受信することで、自動運転に適した高い精度を実現するという。

このようなマルチバンド化により、さまざまな環境における電離層とマルチパスの影響をより高い確度でモデル化することで、タイミング・クリティカルな車載機器において高い測位精度を短い収束時間で実現すると期待される。

【関連リンク】
STマイクロエレクトロニクス(ST)

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