ダッソーが目指す製造業の全体最適、連続的なデジタル空間で加速

仏Dassault Systemesの日本法人ダッソー・システムズ株式会社(以下、ダッソー)は、4月13日、事業戦略説明会を開催。「3D Experienceプラットフォーム」のさらなる拡充を行うとともに、自社のビジネスモデル自体も変革していく方針を示した。

ダッソーが手がける「3D Experienceプラットフォーム」は、製品の設計・開発から販売・マーケティングまで、あらゆるモノやヒトのデータを統合して3Dデジタル空間に再現し、ものづくりの全体最適をはかるソフトウェア・プラットフォームだ。

一つのインターフェースから同社の3D CAD設計ソフト「CATIA」やシミュレーション用の「SIMULIA」を利用可能。その他にも「3D Experienceプラットフォーム」上で使えるアプリケーションのポートフォリオ拡充を進めてきた。

登壇した同社代表取締役の山賀裕二氏(トップ写真)は、「今、世界の産業や社会の構造が大きく変革されようとしている。ダッソーはこの変化を『インダストリー・ルネサンス』として捉えている。特にものづくりに対する影響は大きく、その中で製造業の変革をサポートすることがダッソーの基本方針だ」と述べた。

「自動車産業においては、スマートフォンのようにソフトウェアのアップデートによって新しいユーザー体験をもたらすことに重点が変わっている。企業がその変化に対応するためには、ユーザーのニーズを速やかに吸い上げ、製品の市場投入をはかる必要がある。つまり、従来のものづくりの開発期間を短縮することが求められている」(山賀氏)

そのような背景のもと、同社は「3D Experienceプラットフォーム」を中核に、2017年度のグローバルでの新規ライセンス収入は11%増え、ボーイングやスカニアなどの大手メーカーにも導入。スカニアからは、「包括的なトレーサビリティーとデジタルな連続性」が評価されたという。

また、ものづくりの枠をこえて街を”まるごと”3D化してシミュレーションする「3D ExperienceCity」の取り組みも本格化し、現在フランスのレンヌ市とプロジェクトを進めている。

同社は、「3D Experienceプラットフォーム」の包括性と連続性をさらに高め「産業界のデジタル変革の火付け役」になるとして、3つの事業戦略を発表した。

1. CADを中核に国内ユーザーに向けた導入促進

ダッソーは、CADデータを用いた製品の設計・開発、シミュレーションを得意としてきたベンダーだ。その強みを活かし、引き続き国内における「3D Experienceプラットフォーム」の導入を促進するとした。

その中心となるのが、同社が2017年から取り組んできた「POWER’BY戦略」。同社の既存ソフト「CATIA V5」や「SOLIDWORKS」のみならず、他のベンダーのCADソフトを含めた、すべてのCADデータを「3D Experienceプラットフォーム」のアーキテクチャ上で統合できるという施策だ。

ダッソーが目指すものづくりの全体最適、連続的なデジタル空間

たとえば、「CATIA V5」のCADデータを同社の最新のCADソフト「CATIA V6」に移行できるほか、「3D Experienceプラットフォーム」上のさまざまなアプリケーションに活用できる。既に「CATIA V5」のPOWER’BY環境がリリースされており、順次「SOLIDWORKS」や他社のCADソフトにも対応するという。

シミュレーションの機能も拡充する。製品のシミュレーションと言っても、固体から流体、ミクロからマクロなど、幅が広い。過去、マクロな領域を強みとしてきた同社は、他の企業とのアライアンスにより、シミュレーションの適用範囲をひろげてきた。

昨年6月には電通国際情報サービス(ISID)と流体解析ソフトウェア「XFlow」において戦略的アライアンス契約を締結。それらのソフトウェアを「3D Experienceプラットフォーム」上で統合する。

また、複数の領域のデータをプラットフォーム上で統合することで、「コンセプトの段階で全体最適ができる」と、登壇した同社SIMULIA事業部 テクニカルセールス・ディレクターの岩本康栄氏は説明した。

たとえばクルマの場合、顧客の声などマーケティングのデータ、クルマのパッケージング、過去の製品データを統合してコンセプトモデルをつくり、耐久性などのシミュレーションを行うことができるという。

製造においてはサプライチェーン全体のデータも「3D Experienceプラットフォーム」上で統合し、設計から製造まで一気通貫で最適化できる環境の構築を進めてきた。

「それでも、工場内にはアナログな部分がまだ多く残っている」(同社DELMIA事業部 ディレクター 藤井宏樹氏)とし、同社は新製品「3D Lean」を先月リリースした。

通常、工場内では掲示板や会議室の壁にKPIの進捗管理をするための「紙」を貼り、それを見ながら会議をするなどして、日々改善につなげている。これを「3D Experienceプラットフォーム」と連動したデジタルボードで代替し、管理するというものだ。

既に導入した工場では、生産性が向上しただけではなく、「受け身だった作業員が自発的にアイディアを出すようになるなどの成果にもつながっている」(藤井氏)という。

2. 材料開発など、多角化の推進

製品の設計・開発と言っても、上流から下流までそのフローにはさまざまな要素が必要だ。たとえば、クルマのバッテリにおいては、アセンブリからセル、セルのコンポネント、さらにはその材料までさかのぼる。材料においては分子・原子レベルでのシミュレーションが必要だ。

ダッソーが目指すものづくりの全体最適、連続的なデジタル空間

さきほど述べたように、同社はそれぞれの領域で強みを持つ企業とアライアンスを結び、「3D Experienceプラットフォーム」上で利用できる機能を、下流(マクロ)から上流(ミクロ)まで拡充している(上図)。連続性を持たせ、顧客の開発プロセス短縮につなげることが狙いだ。特に「BIOVIA」ソフトを活用した材料開発の分野に注力していくほか、医薬品の設計などにも取り組むという。

3. ”ものづくり版”マーケットプレイスを提供

小売業界においては、セラーがWeb上に製品を公開し、それを見たバイヤーが商品の選択を行い、取引が完了するという「マーケットプレイス」は一般的となっている。

それを製造業においても展開しようと、同社は今年の2月に「3D Experienceマーケットプレイス」を本格リリース。現在、2つのサービスが始まっている。

ダッソーが目指すものづくりの全体最適、連続的なデジタル空間

1つは、Web上での部品調達ができるサービス「Part Supply」だ。もう1つはオンデマンド製造サービス「Make」で、Web上で他のメーカーに製品の設計・製造依頼ができる。「Make」第1弾では3Dプリンター加工が始まっており、順次CNC加工や射出成型などにも展開していくという。

同社のCADソフトである「CATIA」や「SOLIDWORKS」のインターフェースから直接アクセスできるほか、メッセージ機能などもあり、依頼から納品までのコミュニケーションを簡素化する仕組みも整備されている。

支払、為替、請求といったバイヤーとセラーの取引全般、また取引記録のトレーサビリティの管理もマーケットプレイス上で行われる。また、セラーとバイヤーのマッチングをはかるコミュニティサービスも提供。ダッソーはそのエコシステムを運営する側に回り、トランザクションから収益を得るという。「ダッソー自らがビジネスモデルを変革していく一つの取り組みだ」と山賀氏は説明した。

今年2月の発表時は50社だったグローバルでの参加企業は、現時点で約200社に増加。さらに登録を待っている企業が100社以上あるということだ。

最後に山賀氏は、「ダッソーはこれまでCADを中心に顧客の個々のプロセスに貢献してきたが、これからは3D Experienceプラットフォームを通じて、顧客のビジネス全体のバリューチェーンに関わっていく。売り切りのビジネスはしない。顧客の組織変革をも促すような関わり方をしていく。そのために、自社の営業部隊の体制強化も行っていく」と述べた。

【関連リンク】
ダッソー・システムズ(Dassault Systèmes)

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