富士通、船舶の交通量が多いシンガポール港でAI技術など検証

富士通株式会社、シンガポール科学技術研究庁(以下、A*STAR)の組織であるInstitute of High Performance Computing(IHPC)、Singapore Management University(以下、SMU)は、シンガポール海事港湾庁(Maritime and Port Authority of Singapore:以下、MPA)と、シンガポール港における船舶の交通マネジメントのための技術を活用して、共同実証を開始した。

同共同実証では、AI(人工知能)とビッグデータ解析などを用いて、海上貿易が盛んで船舶の交通量が多いシンガポール港とその水域の管理を最適化する技術を共同で研究開発し、MPAから提供される船舶の交通データをもとに、海上の渋滞予測や衝突などのリスクが高いホットスポットの予測精度を検証する。

富士通、A*STAR、SMUは、2014年に共同で設立した先端研究組織(Urban Computing and Engineering Center of Excellence:以下、UCE CoE)の下、2015年より海上交通マネジメント技術の研究開発を進めてきた。

今回は、これまでUCE CoEが行ってきた高速・大規模計算科学技術を用いて持続可能な社会創造に向けたソリューション・技術の開発をさらに進めるもので、業界や政府が直面する社会課題に応用し、シンガポールの実環境で実証を行う。

今後は、これまでの共同研究開発の成果と、今回のMPAとの検証により得られた知見やノウハウを統合し、富士通の海事向けソリューションとして、提供していく予定だ。

背景

マラッカ・シンガポール海峡は、船舶の交通量の多い世界有数の海上交通路の一つ(※1)で、世界の商用の海運交通の重要な航路として、海上運行の安全性を維持し続けることは極めて重要だとされている。

今回の実証においては、富士通のデータ解析技術とAI技術、IHPCがもつエージェント・ベース・モデリング(※2)やシミュレーションの知見と確率モデリングおよび機械学習の手法、SMUが得意とする大規模マルチエージェント最適化モデリング(※3)の知見を活用する。

共同実証における活用技術

富士通、IHPC、SMUの研究開発の成果として、船舶の交通マネジメントの改善に向けた技術を応用して、MPAが保有する船舶データを取り入れて検証を行う。

  1. リスクおよびホットスポットの算出モデル(富士通)
    • 様々なリスクモデルの統合によって、船舶同士のニアミスのリスクを精緻に定量化するモデル
    • 時空間データ解析を用いて、刻々と変化する海上におけるリスクのホットスポットを検出するモデル
  2. 予測モデル(IHPC)
    • 機械学習と運動物理学を用いて直近の船舶の軌跡を高精度に予測するモデル
    • 過去の船舶データを活用して、船舶の型ごとの交通パターンに基づいた今後の海上の交通状況を予測するモデル
  3. インテリジェント・コーディネーション・モデル(SMU)
    • 海上における衝突事故やニアミスを防止するために迂回ルートを導出するモデル
    • リスクが高いホットスポットを減らすために船舶の航行タイミングを調整するモデル

いずれのモデルも、リスクの軽減と最小化、スムーズな海上運行の持続に向け、リアルタイムな意思決定を支援するものだという。

上記のモデルについて、例えば、IHPCがもつ直近の船舶の軌跡予測モデルと富士通のリスク計算モデルを組み合わせることで、ニアミスが起こる10分前にリスクを検出することが可能となり、海上運行の安全性向上につなげる狙いだ。

また、IHPCの海上における今後の交通予測モデルと富士通のホットスポット計算モデル、SMUのインテリジェント・コーディネーション・モデルを組み合わせることで、刻々とリスクが高まるホットスポットを、30分前に予測し、未然に衝突などのリスクを軽減することが期待されるという。

※1 船舶の交通量の多い世界有数の海上交通路の一つ:
シンガポール港には常に約1,000隻の船舶があり、2~3分に1隻がシンガポール港を離発着している。(出典:MPA)

※2 エージェント・ベース・モデリング:
自律的な固体・組織体の行動・相互作用を、全体への影響の観点からシミュレーションするための分析手法。今回の場合、対象となる個体・組織体は船舶。

※3 大規模マルチエージェント最適化モデリング:
自律的に判断・行動する多数のエージェント間の相互作用をシミュレートし、社会課題やビジネス課題に対する最適な解決策を求めるためのモデリング技術。

【関連リンク】
富士通(FUJITSU)

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