衣料生産プラットフォームでアパレル業界の製造を変える ーシタテル株式会社/sitateru Inc. CEO河野氏インタビュー

  • お話を伺った方
    シタテル株式会社/sitateru Inc.株式会社 代表取締役 河野秀和氏
  • 聞き手
    株式会社アールジーン 代表取締役/IoTNEWS 代表 小泉耕二
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    小泉: シタテル株式会社/sitateru Inc.について教えてください。

    河野:  sitateru(シタテル)は、2014年の3月に創業した熊本発の会社です。もともと熊本はファッションの地と言われていてファッションのカルチャーがありますが、私がコンサルタント時代にアパレルの小売業をお手伝いしていた時、小ロット生産ができないという悩みがありました。

    それはなぜかと思って業界構造を調べたところ、非常に複雑になっていて混沌とした産業構造であることがわかりました。さらに工場に出入りしたところ、繁閑に波があることもわかりました。閑散期にはロット数の少ない、新規の案件でも生産をしてくれるということがわかり、「繁閑のデータをきちんと取得することで、マーケットに衣料を提供していくとニーズがあるのではないか」と思いました。

    アパレル業界は、在庫の問題や、 IT化が遅れて衰退しているというイメージの中で、テクノロジーと仕組みの力を使って変えていきたい、という思いがあり、シタテル株式会社/sitateru Inc.を立ち上げました。

    小泉:  本当は必要な量を必要な分だけ作ることができるといいですが、なかなかそうもいかないですよね。アパレルは超プロダクトアウト思考なカルチャーがあると感じています。それはなぜなのでしょうか。

    河野: 洋服に興味がある人が100いたとしたら、洋服がめちゃくちゃ好きな人たちが上位20、洋服に全く興味のない人が20います。その間の60の人たちを、どっち付かずの人ということでポイザーと位置付けているのですが、この方たちは洋服を提案されたいのか、逆に、自分で選びたいのか、自分たちでもよくわかっていません。そこで、このポイザーたちがどう動くのかが注目されていると思っています。

    小泉:  最近、 ZOZOTOWN が始めた「おまかせ定期便」がまさにそこかもしれませんね。

    河野: アメリカのサブスクリプションサービスに関する類似モデルが日本でもたくさん出てきていますので、もしかしたらそういうカルチャーが日本にも来るかもしれないと思っています。

    最近では、自分でプロデュースした服を、月に1,000万ほど売上げているインフルエンサーたちがどんどん登場しています 。メーカーのプロダクトアウトではなく、「自分たちが欲しい服を作って売り出していく」という文化に変わる時代なのかもしれません。

    シタテル株式会社/sitateru Inc. CEO河野氏インタビュー
    シタテル株式会社/sitateru Inc.株式会社 代表取締役 河野秀和氏

    小泉:  小ロットから生産していただけるといっても、さすがに10着からというのはダメですよね?

    河野: いえ、50着から数万着まで受付けます。sitateruは、Amazon の AWS のリソース管理に似ていまして、AWSは個人の方でも大企業でも使うことができますが、我々も洋服でも同じことができると思っています。

    小泉:  詳しく教えてください。

    河野:  われわれは「衣服生産プラットフォーム」を提供しています。人、仕組み、テクノロジー を使って、衣服の産業課題を解決して社会をより良くしていきたいと考えています。

    衣服にテクノロジーを取り入れるといっても、仕組みがうまく機能しないと、テクノロジーが生きてきません。 われわれも IoT として工場にテクノロジーを入れることをやってきたのですが、 それを動かすための仕組みや、一定数のデータ、分析する力がないと、なかなか一体感が出ないことがわかりました。

    小泉:  このLIFETECHのインタビュー企画の始まりが、まさにそこです。人とテクノロジーの話しかなくて、あいだにビジネスプロセスやビジネスモデル、エコシステムが 戦略として成立していない状態で「とにかく始めよう」と多くの人が参入してきていることに疑問を持っていたのです。

    IoT は実業がある方々に役に立つ技術なので、IT企業の甘い言葉にまどわされて実際の事業がうまくいかなくなるのは本当に困ります。私は IoT/AI に非常に強い思いを持っていますので、御社のような会社を応援したいと思っています。

    河野: ありがとうございます。最近発表した在庫リスクゼロの新流通システム「SPEC(スペック)」をご紹介します。これは、 我々が AWS のような生産のインフラに加え、ファッションブランドの ECの新しい売り場を作ったイメージです。

    今大手小売とスタートさせてもらっていまして、 EC サイトの横に特設サイトを作り、アーカイブ商品と言われる過去に売れた商品や、リバイバル商品などを掲載します。そこに数がわかるカウントの仕組みがあり、これが100枚達成したらそのまま生産をするようなイメージです。

    管理はファッションブランド企業が担当し、生産は API で連携されており、 それ以下は我々のシステムと連携し、非対面で生産へ流れていきます。

    購入する側は、通常の EC サイトでショッピングをするのと同じ流れですが、在庫があるものが届くわけではなく、購入したものが作られる仕組みになります。これはマーケティングとしても利用可能ですし、一番のメリットは在庫が出ないということです。

    シタテル株式会社/sitateru Inc. CEO河野氏インタビュー

    小泉:  企画を始める前に上代や原価は決めておく必要がありますよね。

    河野:  厳密に言うと、まずサンプルを作ってサイトに表記させる必要があります。 現在は大手ブランド企業での利用が決まっていますが、将来的には個人の方も使えるようになるといいなと思っています。モノを作りたいけど在庫を抱えるのが大変という中で、マーケティングの要素を加えてあげて、売れる仕組みと一緒に提供していきたいと考えています。

    現状では、産業構造として、誰かがモノを作りたいと思った時にサプライヤーにたどり着かない現状があります。 大手ファッションブランドは独自のサプライチェーンを作っていますが、産業全体では全体最適が図れていません。 そこを弊社はプラットフォームを提供することでモノづくりのプレイヤーと、工場のプレイヤーが増えていく座組みにしています。

    小泉: プラットフォーム化することで、ビジネスプロセスを綺麗に流れるようになるということですね。最適化の話なので、一つの工場に20%でも枠を作ってもらえたら、全体としてはかなりのボリューム感が出ますよね。工場が大手だけに依存している場合のリスクヘッジにもなりますね。

    河野:  まさにそうです。衣服作りに関わることが全てsitateruで済みます。大手であればいろんなものが揃ってる一方で、生産が追いついていないという悩みがあります。小さい事業主であればパターンデータや生地を調達しなければいけないなど、大小の課題があると思いますが、どんな方でもsitateruにくるとそれが解決できます。

    おかげさまで、現在の登録社数は6000社を超えました。それだけモノを作りたい企業が多いということだと思います。工場や生地メーカー、資材メーカーは400社を超えました。ファッションブランド系企業のリピート率が80%を超えています。

    もうひとつのサービスとしてWE ARE(ウィア)があり、こちらは事業会社がお客様です。アパレルの繁忙期は春と夏に2つ大きな山がありますが、これは季節要因が大きいので、それ以外の時期に企業が物販するものや洋服以外のものも生産することによって、閑散期に工場の稼働を埋めることができます。これにより季節にとらわれないものづくりができます。

    小泉: 様々な企業の制服としても利用しているのですよね。制服を着た時の雰囲気がおしゃれだと、その人にとっての「職業体験」が変わってきますよね。同じ制服を着るのであれば上質でおしゃれな方がいいと思います。

    河野: ありがとうございます。TRUNK(HOTEL)や、BAKE(ベイク)、freee、自治体などでも利用されています。

    小泉: 弊社でもTシャツを作りたいなと思いました。昔は、 オリジナルのウェアを作るというと、Tシャツのボディを買ってきてプリントするというのが流行った時期があったのですが、Tシャツの生地が分厚かったり薄かったり、おしゃれじゃなかったりして作る気にはなれませんでした。

    河野: sitateruだとボディから作るので、質の高い服をご希望の企業や個人に向いています。

    小泉:  私はマラソンを走るので、 T シャツをくれるマラソン大会に参加することもあるのですが、あまり着たくありません (笑)ぜひsitateruで作ってほしいです。

    シタテル株式会社/sitateru Inc. CEO河野氏インタビュー

    河野: まさにそういうことで、「もしかしてここで使えるのではないか?こういう使い方ができるのではないか?」 などの会話が生まれるサービスでありたいなと思っています。アパレルを長くやってらっしゃる方からは「そんなサービスはうまくいくわけない」など厳しい意見もいただくことがありましたが、蓋を開けてみれば業界内外から反応をいただいてここまでやってきました。以前の当社の記事が、SNS上で話題となり 会話がされているのは非常に嬉しかったです。

    我々は、オフィスに「イマジネーション」というキーワードを掲げていますが、洋服を作りたい側のイマジネーションもそうですが、工場側にもイマジネーションがないと新しい案件を獲得したり変化をしていくことが対応できなくなってくると思います。

    小泉: 私は世界中のIoT事例を調べているのですが、イノベーションが起きるタイミングというのはほとんど門外漢が作っています。テスラなども、もともとはクルマ屋ではないですし、 UBERも同じです。

    マーケットシェアとして、今すぐテスラがトヨタを凌駕するかというとそうではないと思います。しかし、先日ラスベガスで行われた家電ショーであるCESでも色々見ていると、新しい車がどんどん登場するわけです。それは塊となって何社か勝ち残っていき、10~20年というスパンで見ていくとひっくり返る可能性はあります。

    例えばデンソーなどは Mobility-as-a-Service:MaaSといって、クルマを内側から見るのではなく、 外側から「移動」を見てモビリティを見直そうとしています。御社も、洋服屋をふと外側から見て作られたのだろうと感じました。

    最後になりますが、シタテル株式会社/sitateru Inc.の今後について教えてください。

    河野: 「全体最適」がひとつキーワードとして大きいと思っています。 衣服の製造は閉鎖的な産業の代表格みたいなところがあるので、そこをいかにオープンマインドなカルチャーを作っていけるかが重要です。そうすることで、正確に人々の欲求にこたえていける洗練されたプレイヤーが増えていくことが必要だと感じています。

    小泉: 世界ではマス・カスタマイゼーションと呼ばれている、 フルオーダーメイドが広がりつつあります。御社は、最初からマス・カスタマイゼーションお話をされていて、ただ最初からダイナミックな規模ではできないので、できるところから始められていると思いますが、どっちが先に追いつくかですよね。このサービスが広がって、 自分が欲しいファッションが作ってもらえるようになると夢が広がりますよね。

    河野: マス・カスタマイゼーションに関しては、われわれがサービスに着手するというよりは、インフラが必要になってくる時期が来ますので、それまでにいかにネットワークをしていくかが重要だと思っています。いかにお客様の目的を実現させるかかなと。

    洋服のマス・カスタマイゼーションは頭で考えるといけそうなのですが、実際にはすぐの実現は難しいと思います。とはいえ、「こういう服が欲しい」という方に1着からでも提供できるのは素敵だなと思うので、何か貢献したいと思っています。

    すみません、今日ってIoTの話できましたか?

    小泉: はい、めちゃくちゃIoT の話でした。マス・カスタマイゼーションの話はインダストリー4.0のメインテーマです。 IoT の話をするときに皆さんプラットフォームビジネスをやりたいとおっしゃるのですが、IT屋さんがいうプラットフォームは、クラウド上にソフトウェアを作って「あとはよろしく」という感じです。いわゆる Google や Amazon がやっているようなことを、単純にIoTの世界でやるのはかなり難しいと思います。

    全部がインターネットだけで完結する世界ではそれで良いのかもしれませんが、 IoT はリアルと繋がらなければいけないので、自分の足で工場回ったり店舗を回ったりしないと、こういうのは実現できないと思っています。

    具体的に、リアルに動いている人やリアルに動いている産業に足を使って入り込んでいって、つないで作られるプラットフォームが産業の基礎になると感じています。

    本日はありがとうございました。

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