富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所、共同でグローブ型触感センサーを開発し、漢方医師の触診データ化を実現

富士通株式会社と株式会社富士通研究所、 学校法人北里研究所 北里大学東洋医学総合研究所(以下、東洋医学総合研究所)はこのほど、共同で触診時の漢方医師の触感をデータ化するグローブ型触感センサーを開発した。

一般に、漢方で病変や体調を知るための触診は医師固有の知識や経験に基づくため、診断内容をほかの医師が客観的に把握するためのデータの作成が困難だった。
今回、診察時の手触り感を損ねない程度に柔軟な薄膜圧力センサーを開発。センサーを指の腹に装着し、触診時に医師が触った感覚を数値化した圧力データと医師の手の軌跡を連動させることで触感を定量化し、データとして記録することが可能になる。これにより漢方専門医の触診を大量に蓄積・客観化して医師の触診支援に繋げる とともに、未病の発見に貢献できる。開発成果の一部は、科学技術振興機構(JST)が推進する文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)、プログラム:安全高品質な漢方ICTを用いた未病制御システムの研究開発」によるものだ。

同成果は、12月8日(火)からニュージーランド・オークランドで開催の国際会議「IEEE.International Conference on Sensing Technology 2015(ICST 2015)」にて発表する。

 

【開発の背景】

日常生活に制限のない健康寿命を延長するため、漢方医学では、疾病に至る前の段階で「疾病に向かっている状態」を発見し、それに対応することが重要と考えられている。

漢方医は、西洋医学で診ると疾病には至らないものの完全な健康状態ともいえない未病状態を検知することができるが、漢方医学の診断基準は 問診・脈診・舌診・腹診などによる漢方医の主観に依存することが多く、これまで明確化されていなかった。

 

【課題】

漢方医療において、腹部に直接触れて診断する触診は病変や体調を知る重要な判断材料とされるが、その最終判断は医師の経験や知識に依存するため、例えば、診断基準を漢方医の継承や育成などに活用するには診断の形式知化や客観化が必要だ。

また、医師の触診の感触をICTによってデータ化し、客観的にとらえて活用するためには、医師側にも患者側にも、違和感のない程度に柔軟で高感度なセンサーの実現が重要。

富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所、共同でグローブ型触感センサーを開発し、漢方医師の触診データ化を実現
図1 漢方医療の触診の様子

 

【開発した技術】

今回、富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所は共同で、触診の現場において、手触り感を損ねることなく、触感のデータ化が可能なグローブ型触覚センサーと触診位置を検出して硬さのデータ取得が可能なシステムを試作開発した(図2)。

富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所、共同でグローブ型触感センサーを開発し、漢方医師の触診データ化を実現
図2 グローブ型触感センサー(左)、触感データ取得システム(右)

開発した技術の特長は以下のとおり。

■高感度で低消費電力なフレキシブルセンサーの開発

電界が無くとも正負の電荷が分かれる性質をもつ誘電体薄膜(エレクトレット)を圧力検知素子として用い、加圧時に内部の電荷の状態が変化する特性を利用して、高感度な圧力センサーを実現(図3)。

圧力検知の素子周囲を高絶縁膜で覆う構造にして、加圧時の電荷の漏れを最小限に抑え、圧力を最初に加えた時点から電圧応答が継続するように設計されている。また、誘電率の低い絶縁材料を使用することで、圧力を検知する素子の電気容量を小さく抑え、加えた圧力に比例する電圧の出力を増大させることで、高感度を実現している。

触診時の医師の手触り感を損ねることなくセンシングするために、ポリマーフィルム(注1)を使って薄さ100から300マイクロメートルの薄膜化を実現し、柔軟性を高めている。

こうした技術により、患者に触れる圧力検知素子自体の駆動電源が不要で、高感度と安全性の高さを両立している。

富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所、共同でグローブ型触感センサーを開発し、漢方医師の触診データ化を実現
図3 フレキシブル圧力センサーの概要

■触感センシングと同期して手の軌跡を高精度に検出するシステム

グローブ先端の指先部に反射マーカーを取り付け、マーカーの動きを検知する近赤外線カメラにより、医師の手の動きを約0.2ミリメートルの精度で検知するシステムを構築。10ミリ秒ごとに触診の位置を取得可能で、圧力センサーから取得したデータと組み合わせることで、触診の正確な位置と圧力を同期 して記録することが可能。

 

【効果】

今回試作した触感データ取得システムを用いて、東洋医学総合研究所において触診を模したデータ取得実験を行った(図4)。

加えた圧力に対する応答は線形の特性を示し、平均すると1キロパスカル(kPa)あたり120ミリボルト(mV)の出力が得られた。これは、1ミリメートル角のセンシング面積に 約0.1グラムの力を印加すると120mVの出力が得られることを意味する。

試作した回路は連続的に約10mV程度のノイズが発生するが、加圧時にノイズ の10倍以上の出力が得られることから、微小な触診圧力変化にも十分な反応を示していることが分かる。これにより、圧力センサーとして実際の触診に限 りなく近い数値データを取得できることが確認された。

富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所、共同でグローブ型触感センサーを開発し、漢方医師の触診データ化を実現
図4 フレキシブル圧力センサーの応答特性

 

【今後】

富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所は、センサー感度のさらなる向上や手のひらなど圧力センサーの適用範囲拡大を検討し、開発技術により漢方専門医の触診をデータ化し大量に蓄積・客観化して、医師の触診の支援に繋げていく。

 

注1 ポリマーフィルム:電極の保護と絶縁に用いられる薄膜。

 

【関連リンク】
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