MWC2023レポートの第三弾はNTTドコモだ。
2019年以来のリアル出展となったが、ドコモブースは、「6Gに向けたロードマップを示し、6Gは人に何をもたらすのか?」を軸にブース展開していた。
6Gに向けたロードマップ
ブースでは複数のプレゼンテーションが行われており、6G-IOWN推進部長 中村武宏氏から、6Gに向けたロードマップの説明があった。
6Gに向けて、ミリ派のカバレッジ向上を5Gの進化の中で進めつつ、6Gでは100GHzを超える帯域を含むサブテラヘルツ帯の活用、NTN(非地上波ネットワーク)とTN(地上波ネットワーク)の融合など、海の中の通信についても言及があった。
6G時代の人間拡張
6G時代では人間の能力拡張が可能なることを想定し、様々なユースケースの研究が進んでいるという。
これらは「人間拡張プラットフォーム」と位置付けられ、今回のブースでもデモンストレーションが数多く見ることができた。
人間拡張プラットフォームの1つが、リアルタイムで動作を他の人にコピーするものだ。
これは左にいる電子サックス奏者が演奏をすると、右側にいる人が同じタイミングで同じ演奏ができるというものになっている。
仕組みとしてはコピー元の奏者に取り付けられているセンサーが筋肉の動きをデジタル化し、コピー先の奏者のセンサーからは電気信号に変換され指を動かすといったものだ。
現状では複雑な動きや、激しい動きに対応することはできないが、理論的には様々な動きがコピーできるようになるという。
また遠隔ロボット操作のデモも行われていた。
お茶を煎じるロボットを人の動きを転送する仕組みによって操作するデモだ。これは過去のMWCでも行われていたが、引き続き取り組んでおり、実用に向けて研究が進んでいる領域だ。
O-RAN新ブランド「OREX」を発表
以前よりドコモが推進しているO-RANの新ブランドである「OREX」がMWC2023と同時に発表された。
※O-RANとは、Open Radio Access Networkの略で、5Gをはじめとする次世代の無線アクセスネットワークをより拡張性が高く、よりオープンでインテリジェントにすることを目的に活動している通信事業者および通信機器ベンダによる団体
発足時点でのOREXのパートナーはAMDテクノロジーズ、DELL、富士通、HP、intel、NEC、NTTデータ、NVIDIA、MAVENIR、Qualcomm、RedHat、vmware、WNDVRの13社だが、これらの企業だけで見ても、得意とする事業領域がかぶるプレイヤーが目立つ。
閉じられていた通信インフラのオープン化で、コスト面でも、要求仕様の面でもフレキシブルな対応が可能となり、世界における通信格差を無くすことをビジョンに掲げている。
xRの可能性
xR系もまさに人間拡張の一つであり、xR事業を推進するNTT QONOQによるMatrix Streamの体験ができた。
バーチャルアイドルのライブ体験、ギフティング、コミュニケーションができるプラットフォームになっていて、国境も次元も超えた“推し活”の仕組みとしてコアユーザーに受け入れられるものだという。
xR関連は他にもMagic Leap2を使ったボリュメトリックのデモや、ゴジラ等のIPが登場するxRワールドの紹介もあった。
撮影された映像から3Dの空間データを再構築するボリュメトリックのデモでは、自分の部屋にネコが登場し、リアルでは飼えないけれど、実際にネコを飼っているような体験が提供される。こんなMixed Realityの提案は、過去のたまごっちなどの流行を踏まえると、多くの人に受け入れられやすい領域なのかもしれない。
正直、現状における5Gの実体験はそれほどイノベーティブなものにはなっていない。
それはスマートフォンが体験の中心にあるからであり、6Gのカタパルトとしての5Gと捉えると、大きな変化は2020年代後半から進んでいくことが予想され、その具体のいくつかを可視化することができたドコモブースだった。
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未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。