オレンジ, テレフォニカ、SKテレコムのソリューション ーMWC2023レポート6

MWC2023レポートの第6弾は、前回に引き続き海外キャリアの状況だ。

Orange

フランスのOrangeブースは中央に「Energy Efficiency」とあり、家庭のエネルギー効率向上に向けた取り組みを紹介していた。

OrangeグループのSoftAtHomeのWi-Fiマネジメントソリューションを活用すると、Wi-Fiの電源管理や、出力の最適化などを行うことでエネルギー消費を削減するという。

確かに、自宅に誰もいない時や睡眠時で通信が行われていない時などは、Wi-Fiの出力はゼロにする方が良いのは明らかだ。またOrangeは企業としても2040年までにネットゼロを実現するための取り組みを継続している。

テクノロジー系のイベントではメタバース関連の体験提供が定着している。HMDの軽量化やスタンドアロン化、映像品質の向上は明らかであるもののHMDの普及が足踏み状態であることもあり、HMDに依存しないメタバースの取り組みにも注目が集まっている。

そんな中、Orangeもブース中央にグラスレスVR体験ができるドームを設置し、パリの街を走る「Immersive Run」というコンテンツを提供していた。

MWC2023 海外キャリア動向 Orange
Orangeは、ドーム型の仮想空間へ没入する仕組みを展示

ドーム内は360スクリーンがあり、パリの街並みが映し出され、ボディトラッキングカメラで捉えたドーム内にいる人の動きに合わせて映像や音声が動く仕組みだ。

2015年にKDDIが東京ミッドタウンで提供した「warp cube」をよりお手軽にしたイメージだ。

「warp cube」は天井も床も壁もLEDになっている部屋に入ると、全ての面の映像が一瞬で切り替わり瞬間移動する体験を提供していた。

今回のOrangeの環境は、近い将来、自分の部屋でも実現できそうな仕組みで構成されていて、新たな体験をもたらす通信活用用途がまた1つ見えてきた。

テレフォニカ

スペインのテレフォニカは、ブースの入り口のところにボリュメトリック環境を設置して、異空間での撮影を楽しめるようになっていた。

クオリティ的にはやや粗い仕上がりではあったが、ボリュメトリック自体は以前に比べると非常に簡易にできるようになっていることもあり、一気に進化、定着していく可能性が高い領域でもある。

MWC2023 海外キャリア動向
20個ほどのwebカメラを360度に設置した撮影環境が可能となっていた
MWC2023 海外キャリア動向 テレフォニカ
撮影した映像は、すぐに撮影場所の横にあるモニターでメタバース記念写真が表示される

テレフォニカ・テックが開発したスマート農業ソリューションのデモにはスマート灌漑管理についても触れられていた。

スマート灌漑は2027年には世界で4000億円以上の市場規模となると予測されており、地球上の天候変化、異常気象の多さからも注目を集めている領域だ。

デモでは、スペイン北西部のブドウ畑の寄稿や土壌の状態をリアルタイムで遠隔監視し、IoT機器から得られる土壌水分の情報や衛星画像、降雨情報に基づいて最適な灌漑プログラムを遠隔で提供できるという。

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スペイン北西部のブドウ畑の寄稿や土壌の状態をリアルタイムで遠隔監視し、IoT機器から得られる土壌水分の情報や衛星画像、降雨情報に基づいて最適な灌漑プログラムを遠隔で提供

これら以外にも肥料や農薬の効率化や生産・流通プロセスをブロックチェーンで管理する仕組みなどもあり、統合的に農業のスマート化を支援できるとのことだ。

またこのソリューションによって水消費量の削減や循環型経済の推進に貢献することが立証されているため、スペインの標準化認証協会からエコ認定を受けている。

先だってのCES2023でジョン・ディアの登壇が話題になったが、このような環境貢献と効率化の両立、そして生産量の増加や作物の品質向上といった事業貢献も実現することが「スマート農業」と定義されていくのではないだろうか。

SKテレコム

韓国のSKテレコムは、eVTOLがブースのアイコンになっていた。

eVTOLには仮想体験シミュレーターが搭載されていてソウルと釜山の上空を移動するバーチャルフライト体験ができた。

MWC2023 海外キャリア動向 SK telecom
SK telecomのeVTOLの展示

韓国のNo.1モビリティサービスプラットフォーム「TMAP」とも連携し、複数の交通手段を利用した旅行全体のプランニング、航空機のバッテリー充電、飛行中のインフォテインメントサービスを体験することも可能だ。

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また、UAM(Urban Air Mobility)フライトシミュレーターでは、SKTが独自に開発した4Dの軌道マネジメントシステムによる軌道推定機能が体験でき、経路逸脱すると警報が出て衝突を防止することもできる。こういった機能が正常に動作することで展示されているeVTOLのようなUAMの安定運行が可能となる。そのためにも高品質な空中ネットワークの提供が欠かせないため、通信品質の検証を実際のeVTOLで行っているとのことだ。

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AIロボット

SKテレコムではロボティクスにも注力している。AI Robotはカメラなどで空間を把握し、荷物の大きさ、荷台のスペースなどから何をどこに積むことで運搬がしやすくなるかということを考え最適な積荷を形成する。デモでは同じ形状の荷物が置かれていたが、多様な形状の荷物がある場合、人が考えて整理するよりも圧倒的に早く処理できるとのことだ。

商業施設向けロボはクアルコムと韓国のロボットメーカーIntegritと共に開発したもので、既に市場に提供されている。

カメラで人を認識し、その人が求める情報をボディ部分に表示することはもちろん、対話することや、ターゲットと思われる人に広告を見せることもできるようになっている。

これまでのサイネージはタッチパネルなどで表示を切り替える程度にとどまっていたが、このようなロボットになることで、移動できることだけでなく、インタラクティブ性も向上し、公共情報デバイスでありながら、一人ひとりの想いに応えられるような進化が進んでいる。

多くの企業がHMDを活用したメタバース体験やデモを提供していたが、メタバースに関してはHMDを活用しない領域での価値提供、体験提供に関心がシフトしているように思えた。

ネットワークの進化は人の体験をどう変えていくのかが重要となるため、やはり提供したい体験がどのようなものかをどれだけ具体的に描けているかが、ネットワーク活用・進化においてもさらに重要になっていくだろう。

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