MWC2024レポートの第四段はドイツテレコムのブースから。
例年、ネットワーク関連やB2B向けの展示が多いドイツテレコムのブースだが、今年はブースの正面に大きく「MAGENTA AI」の文字が表示され、AIを活用したコンシューマー向けのコンセプトモデルが多く展示されていた。
まずCONCEPT AI PHONEだが、これはBrain.ai、クアルコムと共同で開発したスマートフォンでOSとAIが一体化し、アプリ操作が不要となっている。
AIが全てのアプリを管理・操作することで、ユーザーは、いちいち目的別にアプリの切り替え、ダウンロード、設定をする必要が無くなる仕組みだ。
この考え方はこれまでのスマホ向けAIと大きくレイヤーもビジョンも異なるもので、AI搭載モデルが増加している今後のスマホ端末動向にも影響を与えそうだ。ちなみに展示されていたスマートフォンはAndroid OSである。
他にもConcept Tと言われるデザインプロジェクトから生まれたコンシューマー向けのコンセプトモデルをいくつか展示していた。
その中でも話題になっていたのはConcept Viewと言われるホログラムデバイスだ。
デバイスの中にいるホログラムで可視化されたAIアシスタント“エマ”は自然な対話ができ、買い物やコンテンツの相談、ヘルスケアサポート、ドイツテレコムの契約管理などもしてくれるという。
Concept Levelはインテリジェントルーターが展示されていた。
4つのデバイスで構成されているのだが、ベースのWi-Fiルーターに加え、AIアシスタント、家の中のモニタリングや住人の生体データをセンシングするスマートホームデバイス、暗号通貨を管理するWeb3デバイス、そしてWi-Fiカバーエリアを拡張するメッシュデバイスという構成だ。
もちろんそれぞれ個別に利用することができ、Wi-Fi給電を可能としているため、家の中でWi-Fi接続が可能な場所であればどこに設置しておいても自動で給電されるという。
ただし、Wi-Fi給電に関しては、どこまで実用的なのか、ブースでは確認できなかった。
Concept Buddyと呼ばれる家庭用ロボットも展示されていた。
こちらはAmazonのAstroと同じようにモニター部分にロボットが表情を見せるようになっていて、情緒的なコミュニケーションができる。
また、搭載しているプロジェクターで映像を活用したコミュニケーションや生活支援ができるものになっている。もちろん音声操作も可能だ。
例えば、これまでスマホでは文字を入力して検索したあとに出てきたレシピをみながら料理していた人が、音声でレシピ動画を見せるように指示するだけで、ハンズフリーで空間や近くの壁に投影された映像を見ながら料理するような新しい行動を次々と生み出していくだろう。
残念なことに、これらのデバイスはすべて研究用のコンセプトモデルであり、現状においては発売の予定がない。
ただし、個々の機能が自社、またはパートナーの製品に搭載されて商用化される可能性はあるという。
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未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。