MWC2024レポートの第五弾は、フランスの通信会社Orangeだ。
今年開催されるパリ・オリンピックに向けた取組みが展示の大半を占めていた。
リアルタイムでスポーツの映像を中継・配信するためのソリューションとして、5G Private Network Coudを活用したライブストリーミングのデモもあった。
5G Private Network Coudはソフトウェアベースの5Gネットワークで、現場から配信サーバーまたは放送局までのバーチャルな専用線を提供するサービスになる。
ブースではマルセイユにあるVelodromeスタジアムの映像をバルセロナに中継していた。Orangeだけでなく、様々な国でQoDが可能な5G SAや5G Private Networkの映像配信活用が実現し始めており、パリ・オリンピックを皮切りに多くの地域でライブ映像配信用途での5G活用が進みそうだ。

Velodromeスタジアムではネットワークの省電力化も進めている。
必要なときだけPoE(Power over Ethernet)を通じてWi-Fiの電源をオンにするSmart Power Delivery Solutionを開発し導入している。
この仕組みでWi-Fiのエネルギー消費を50%以上削減したという。Smart Power Delivery Solutionは時間帯によって人口密度が大きく変わるイベント会場などで特に有効で、基本的にどのような場所でも導入することが可能だ。

また、トレンドのNetwork APIについても取組みが紹介されていた。
OrangeはスペインのTelefonicaとVodafoneとともに、セキュリティ強化のためのAPIの提供を開始している。
スマホでの金融取引などの増加に伴い、セキュリティ強化ニーズが高まっていることも背景の1つだ。
このAPIでは増加するSIM Swap(SIMの乗っ取り)詐欺を防ぐために位置情報を活用し、特定のエリアまたはエリア外での利用に対する通知や、自身が保有するもう1つのSIMとの距離を活用した認証ができるようになるという。
後者はデュアルSIMが一般的なエリアでは広く活用ができるものとなりそうだ。

5Gと6Gの狭間でもある今回のMWCにおいて、欧州を代表するテレフォニカ、ドイツテレコム、オレンジが、それぞれが異なったテーマで展示してきたが、紹介したソリューションはいずれも今後各国で普及する可能性がある内容だ。
各社のソリューションがそのまま拡がっていくというより、同様のアプローチが様々な国や地域で顕在化していくはずで、それと同時に領域別APIなどの標準化も進んでいくだろう。
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未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。