2018年9月末~10月頭にかけて行った、20,000人を対象としたAIスピーカーの自主調査レポートの第二弾は、この調査から見える、「ポストスマホ」の兆しについてだ。
私自身もAIスピーカーを利用し始めて約1年になるが、家族の利用状況から、すっかり生活に溶け込んできていることがわかる。
我が家の子供たちは、面白がって遊んでいた初期と違い、ちゃんとAIスピーカーで何ができるのかを理解し、単語の意味や歴史を調べることや、聞きたい曲を上手に再生している。「邪魔だから置かないで。」と言っていた妻も、天気の確認やタイマーなどで自然と利用している。
しかし、これは1つの事例に過ぎない話なので、AIスピーカーのある家庭では、実際にどのような使い方がされているのかを調査した。
AIスピーカーの利用実態
まず、利用率が50%超えている機能は「音楽を聞く」「天気のチェック」の2つで、「アラーム/タイマー設定」が3番となった。
この結果は、ある意味予想通りではあったが、これらの機能は、ほぼ半数が利用しているもので、機能として定着し始めていることがわかる。
また8番目の「ヒマな時の話し相手」に関しても興味深い。
この結果から、5人に1人がAIスピーカーと会話をしているという認識を持っているということになる。
では、TVCMなどでも見かける、家電などのデバイスの操作インターフェースとしてはどうだろうか。
家電などのデバイスとの連携実態を見ると、テレビとの連携とスマホとの連携が目立つ。
この理由はシンプルで、スマホはもちろんテレビも多くがインターネット接続対応していて、AIスピーカーとWi-Fiネットワークで接続可能になっていることが考えられる。
ただし、全体の傾向としては、家電連携には課題が多いことも明らかになった。現状の保有率が8%ということなので、現在の利用者の殆どが「イノベーター」や「アーリーアダプター」であると考えるべきだ。
一方で、「イノベーター」や「アーリーアダプタ」の家庭であっても家電連携利用は伸び悩んでいるといえる。
AIスピーカーと家電の連携における課題
現時点で、家庭にある殆どの家電が、標準ではAIスピーカー対応していないため、AIスピーカーを操作インターフェースにするためにはオプションが必要となる。
赤外線のマルチリモコンは、多くの家電に対応するものの、利用するためには、それぞれの機器に対応させる設定が必要になる。
さらには、マルチリモコンでは、個々の家電のユニークな機能が操作できないことも課題となる。
10年くらいすれば、家庭にある殆どの家電にWi-Fi等のコネクテッド機能が搭載され、APIも標準化されるだろうが、現在はその未来に向けての「検証フェーズ」と捉えるべきだ。
このように課題も多く、利用されている機能も限られているが、AIスピーカーは一度使い始めると手放し難いものにもなっているという事実もあるようだ。
スマホよりもAIスピーカーの方を使ってしまう用途は、音楽やラジオの音声コンテンツをはじめ、天気やアラーム、料理のレシピを調べるようなことまで広がっている。
このようなシンプルな用途であっても、AIスピーカーの方が圧倒的に便利であるという実感を半数近くの人が得ているからだ。
現状では機能は限定されるものの、「スマホよりAIスピーカーの方が楽」と感じるものが出てきていて、その結果、「スマホで何かを操作することが面倒」と感じるようになり始めている。
AIスピーカーというテクノロジーが生活環境に浸透し、当たり前が変わることで、今まで便利なものとして無意識に近い状態で利用していたスマホが「面倒」と感じる状態が生まれてきているのだ。
このような感覚の変化から、「スマホ離れ」や「ポストスマホ」は生まれていくのではないだろうか。
「今後、AIスピーカーが普及するか」ということに関しては不明だが、「AIスピーカーが人の行動を変えるか」というと、それは間違いなく「YES」だ。
AIスピーカーのような音声だけで何かを知ることができる、操作することができる環境が広まる中、その時に感じる便利さやベネフィットは現時点の感覚とは異なるものになる。
今後、プロダクトを企画・開発するメーカーにとって必要なことは、その時代の生活者の当たり前を予想し、その環境に向けたデバイスやサービスを提供することではないか。
調査概要
記事内でご紹介した調査データはIoTNEWS生活環境創造室の
自主調査によるものです。
スクリーニング
調査時期:2018年9月末
調査手法:WEBアンケート調査
調査対象者:全国15~59歳男女
調査サンプル数:20,000ss
※エリア、性年代は人口構成比に準ずる
本調査
調査時期:2018年10月上旬
調査手法:WEBアンケート調査
調査対象者及びサンプル数:全国15~59歳
男女AIスピーカー利用者:300ss
AIスピーカー利用意向者:700ss
※スクリーニング調査における保有者の性年代構成比、意向者の性年代構成比に準ずる
調査項目
- AIスピーカー認知状況
- AIスピーカー保有有無
- AIスピーカー保有機種
- AIスピーカー利用可否
- AIスピーカー利用期間
- AIスピーカー利用停止理由
- AIスピーカー利用意向
- AIスピーカー非意向理由
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未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。