三菱電機、AIを搭載した冷蔵庫で家事の時短と食品ロス削減

昨今、様々なメーカーによってスマート家電が開発されている。

冷蔵庫もスマート化が進んでいる。たとえば、冷蔵庫に食材を詰め込み過ぎると、冷蔵庫に搭載されたAIが音声で詰め込み過ぎを指摘するといった製品がある。これは詰め込み過ぎにより全体に冷気が行き渡らないことを防ぐ目的として提供されている機能だ。

他にも、外出中にスマートフォンから冷蔵庫の中に何が入っているのかをカメラでチェックでき、買い物で重複買いや買い忘れを防ぐ機能を搭載した製品もある。

こうした機能はあると便利だが、本来の冷蔵庫の役割である「食材の品質を落とさず、なるべく長く保存する」ための冷却機能そのものもアップグレードされていくと良い。

これまで三菱電気株式会社(以下、三菱電機)は、肉や魚などの生鮮食品の鮮度を長持ちさせるための工夫を凝らした冷蔵庫を開発・販売してきた。生鮮食品の鮮度を長持ちさせるための具体的な機能としては、「氷点下ストッカー」と「切れちゃう瞬冷凍」の2つだ。

「氷点下ストッカー」とは、約-3度~0度で肉や魚を生のまま保存することのできるストッカーだ。すぐに食べたい肉や魚はとりあえず冷凍するものの、味が落ちることは避けられない。しかし、肉や魚を氷点下ストッカールームに入れておくと、肉や魚を傷めずに生のまま保存できるので、味が落ちない。

三菱電機冷蔵庫氷点下ストッカーD
三菱電機冷蔵庫氷点下ストッカーDの説明。冷蔵室やチルドで保存するよりも長く保存できる。 source:三菱電機

なぜ、味が落ちないのか。まず食材が冷凍されると、なぜ味が落ちてしまうのかを考える必要がある。食材は冷凍されると、食材そのものに含まれる水分が凍り始めて「氷の核」になる。さらに、氷の核は体積を増やして「氷の結晶」になる。この膨張した氷の結晶はとがった針状の形をしているため、食材の細胞膜や細胞壁を押しつぶす。その結果、食材のうま味や栄養が損なわれる。

そこで氷点下ストッカーは、食材をゆっくり静かに冷やすことで、食材を凍らせず、温度を下げる。食材をゆっくり静かに冷やせば、「過冷却」と呼ばれる状態となり、氷点下であったとしても、水分が氷に凝固しないのである。氷にならないということは、細胞破壊がないため、肉や魚が傷まない。

生鮮食材の鮮度を長持ちさせるための具体的な機能として、もう1つ挙げた「切れちゃう瞬冷凍」は約-7度で食材を冷凍保存する冷凍室だ。切れちゃう瞬冷凍は食材を「冷凍」するため、氷点下ストッカーよりも長く、味が落ちずに保存することができる。

しかし、氷点下ストッカーの仕組みは、冷凍しないようにゆっくりと氷点下になるまで冷やすことで、味落ちせず食材を保存できる、ということだった。切れちゃう瞬冷凍は食材を冷凍してしまうため味落ちが懸念される。しかし、切れちゃう瞬冷凍も味が落ちずに冷凍することができる。その理由は、氷点下ストッカー同様、過冷却の現象を利用しているためだ。食材はゆっくり静かに冷やされると、水分が氷に凝固せず、氷による細胞破壊が生じないと説明したが、過冷却した食材に刺激を与えると、一気に凍っていく。ただし、過冷却した状態から刺激を加えた場合に出来上がる氷は針状ではなく、微粒子状となっている。そのため、細胞が破壊されない。※なお、約-7度から凍結点まで急速に温度を上げることが「刺激」になる。

切れちゃう瞬冷凍の特徴は味が落ちないだけではない。一般的な冷凍庫の保存温度が約-18度だが、切れちゃう瞬冷凍は約-7度で凍らせる。そのため、冷凍した食材がそこまで固くならない。凍っているのに包丁で「切れちゃう」ほどにソフトだ。そのため、必要な分だけ取り出して使うことができる。

三菱電機冷蔵庫切れちゃう瞬冷凍
三菱電機冷蔵庫切れちゃう瞬冷凍の説明 source:三菱電機

2020年1月9日、三菱電機は三菱冷蔵庫「置けるスマート大容量」MX-MBシリーズ新商品を1月31日に発売することを発表した。

三菱冷蔵庫新商品
新商品 左からMR-MX57F MR-MX50F MR-MX46F MR-MB45F source:三菱電機

これらの冷蔵庫は、「氷点下ストッカー」、「切れちゃう瞬冷凍」にAIを搭載している商品となり、それぞれ「氷点下ストッカーD A.I.」、「切れちゃう瞬冷凍A.I.」というように名前を変えている。

新商品の冷蔵庫のすべての扉にはセンサーが搭載されており、このセンサーが日々の扉の開閉データを収集する。そして、AIは収集したデータから、ユーザーの行動を分析・学習して生活パターン(活動時間と非活動時間)を予測する。

AIは予測した生活パターンに合わせて、温度を調整する。「氷点下ストッカーD A.I.」では、ユーザーが就寝しているような非活動時間においては、温度を下げることで、鮮度を保つが、活動時間では凍結リスクを抑える温度に保つ。

その結果、「氷点下ストッカーD A.I.」は、牛ブロック肉、豚ロース肉の保存期間を従来の約7日間から約10日間に延長することができた。「切れちゃう瞬冷凍A.I.」は、肉や魚の保存期間を従来の約2~3週間から約3週間に延長できた。

同商品を使うと、食材が長持ちするため、まとめ買いがしやすくなったり、保存期間内に使い切れず、ユーザーが途中で食材を冷凍室に移し替えるといった手間が減る。そのため、三菱電機は家事の短縮に貢献できるとしている。

また、食材が長持ちするということは、食材が消費されないまま、廃棄されてしまうことを減らすため、食品ロスの削減にも貢献するとしている。

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