matterは業界標準となるか ーCES2023レポート

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matterは、昨年10月に正式リリースされた、スマートホームデバイスを、メーカーの垣根を超えてつなぐ規格だ。

Apple、Samsung、Amazon、Google、Zigbee Allianceといった、スマートホーム業界の大手企業が参画していることで、大きな話題となっていた。

しかし、サムスンのプレス向け発表では、matterというキーワードは登場せず、同社のスマートホームアライアンスの規格である「SmartThings」が大きく取り上げられていた。

そういうシーンを見て、「なんだかんだ言って、相互接続性は担保するけど、自分の領域はそれで拡大していく」という感覚を得てしまったのは私だけではないはずだ。

一方で、Google Homeのホームページを見ると、「Google Homeバッジまたは、matterバッジのついたスマートデバイスをお求めください」と明記されている。

Google Homeのホームページ
Google Homeのホームページでの表現(出典:Google Home https://home.google.com/intl/ja_jp/welcome/)

実際会場ではどんな状況なのだろうかと興味を持って、対応スマートホームデバイスを探してみた。

スマートホームアライアンスの歴史

ここで会場の紹介をする前に、少し前に遡って、スマートホームアライアンスにおける歴史的経緯から紹介する。

2016年のCESレポートを読み返すと、スマートホームの問題点として、「アライアンス間の分断」を取り上げている。

アライアンス
2016年当時のCESでは、さまざまなアライアンスが林立し、勢力争いをしていた

多くのアライアンスや規格が林立し、勢力争いをする様相を呈していたが、その後、スマートホームのデバイスで、生活の何がよくなるのか、手でやっても良いことをガジェットがやるだけなのか、といった問いに凝灰全体として答えることができていなかった。

しかし、2017年になると、AIを活用した音声応答システムとなる、Amazon EchoやGoogle Homeが話題となり、これまでのアライアンスやデータ通信上の仕様を乗り越えて、音声応答システムとどう連携するかということが話題になった。

amazon Echo

連携の方法も、スマートホームのハブからデバイスへという連携だけでなく、クラウド間連携や、スマートフォンとの連携などさまざまな連携が実現されるようになり、CESでもデータ通信に関するアライアンス対応よりも、Amazon Echo対応や、Google Home対応をうたうデバイスが、会場を占めるようになった。

しかし、ご存知の通り、こういった音声応答システムも話題にはなるものの、一家に一台という状況にはならず、さまざまなデバイスを制御する部品としては入り込んで行っているものの、スマートホームのハブとして、存在感を示すにはいたっていない。

さらに、GAFAの勢いが急激に失速した昨年11月、Alexa部門の大量リストラが報じられた。

matterの発表が10月だったので、個人的にはmatterはどうなるのだろうと不安に感じたものだ。

matterはどうなるのか

CES2023では、matterの発表が最近であったからか、ロゴが踊っているという状態ではなかった。

多くのデバイス接続を行なっているハブを提供するメーカーも、11月段階で対応を表明しているものの、展示としては打ち出してはいなかった。

Tuyaのmatter対応
matter対応を表明しているTuyaブースでも、matterのロゴが露出する状況ではなかった。

特に、今後サステナビリティ軸で、家ナカの電化製品は、冷蔵庫や電子レンジ、空調以外にも、太陽光発電装置やEV車などがホームハブに連携し、電力使用量を調整してく流れになる。構想上はすでに各メーカーこの取り組みは始まっているが、消費者からすれば同じメーカー、同じブランドで家中の電化製品を統一するわけでもない。

一方で、自分の使っている家電製品が、グローバルに何らかの統一規格で繋がっていてくれた方が、恩恵に預かりやすいのは言うまでもない。

一度購入した家は、何十年と住むわけだし、買い足した家電も10年は使うだろう。

そう考えると、世界中のメーカーが、何らかの統一規格でつながることが前提となっているのは、非常に重要なことであると改めて感じた。

また、技術面からみた、matterの良いところは、Wi-FiとThreadの上位層であるアプリケーション層で機能することだ。Threadは、Google傘下のNest Labsが主導して運営している、低消費電力のメッシュネットワークを実現するIPv6ベースの高速ネットワーキング・プロトコルなので、こういった特徴を継承することができる。

これが実現されることで、インターネットとの接続が切断されても、デバイス間連携を維持しながら動作することができることも重要だ。

逆に、課題としては、現在まだ主流ではない、Wi-Fi6が前提となるところだといえる。

こういった状況を踏まえると、期待感、実現性共に「これから」とも言える規格でもあるので、matterを中心に、多くのデバイスがシームレスにかつ連動してつながり、本当の意味でのスマートさを実現してほしい。

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