自宅や会社のドアにかぶせるだけで、スマホで鍵を開け閉めできる後付け式スマートロック「Akerun」。今年の4月に発売されるとすぐにIoTNEWSも購入し、オフィスのドアに取りつけている。
どのようにして「Akerun」が作られ、今後どのようなスマートロックの世界を描いているのか、共同創設者の1人でプロダクトマネージャーの熊谷さんに話を伺った。
Akerun誕生のきっかけは飲み会で
-Akerunを作ろうと思ったきっかけを教えてください。
もともと社長の河瀬や他のメンバーとは学生の頃から繋がりがありました。卒業したあとはそれぞれ別の企業に就職したのですが、定期的に連絡を取り合ったり飲み会をしたりしていました。ある時、飲み会で「何をハックしたら面白いだろう」というアイディア出しあった時に、盛り上がったのが「鍵」でした。
鍵って個人個人で色々なエピソードがあると思うのですが、「家の外に鍵を隠しておいたよね」「帰ってきて疲れてるのに、暗い中かばんの中の鍵を探すのってイケてないよね」「彼女に合鍵を渡すのってどうしてる?」などという話から、鍵をデジタル化したらどういう世界があるんだろう、と盛り上がりAkerunの開発がスタートしました。
それから、ソフトウェアエンジニアやハードウェアエンジニアも加わり、おこづかいを出し合って週末に秋葉原に部品を買いに行って、試作を作ったのがはじまりのきっかけです。最初の半年くらいはそんな感じでした。
![IoTベンチャーが目指すスマートロックの世界 -Akerun](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2015/09/P1010010.jpg)
-その後、法人化を決められたのですか?
はい、そこからプロトタイプができて、運よく日経新聞に取り上げていただきました。その後問合せをいただくようになり、「ぜひほしい」という方もいらっしゃって、「これは本気でやるべきだね」という話になり起業しました。創業から量産に約半年というスケジュール感です。
プロトタイプはできたが、量産化はわからないことだらけ
-作っていて大変だった点を教えてください。
特にセキュリティについては、量産化となると試作品とは違う大きなプレッシャーがあり、外部にご協力いただきながら作りこみました。また、鍵のつまみが思ったよりバリエーションがあって、押して回すタイプやサイズ違いなどで、苦労しました。
-はじめは3Dプリンターなどで型をつくるのでしょうか。
金型を作る前に3Dプリンター等で試作品を作っています。当初は3Dプリントや切削加工で試作品を何度も作りました。3Dプリンターやレーザーカッターを持っているメンバーもいるんですよ。
-自宅にレーザーカッターがあるのはすごいですね。量産に向けた工場探しなどはどうされましたか。
色々なハードルがありました。工場探しなどはもちろん、部品調達はどうするのか、製造計画はどうするのか、販売価格はどうするのか、複合的な問題に直面しました。技術的、ビジネス的な問題に対して、さまざまな方にアドバイスをもらいながら進めたので、私たち自身すごく学びがあったなと思います。
私はハードウェアの設計・製造を担当していますが、工場には行ったことがあるという程度でしたし、図面を書いて金型作って、組み立ての手順書を作ったりするなど全てのフローを経験してきたわけではありませんでした。しかし、逆にいうと想いさえあれば、そういった経験が不足する部分を補えるということを実感しました。
![IoTベンチャーが目指すスマートロックの世界 -Akerun](https://iotnews.jp/wp-content/uploads/2015/09/P1010139.jpg)
-海外などで、クラウドファンディングで資金を集めたものの、製造過程でつまずいてストップしてしまうケースもある中、様々なご縁で成り立っているのですね。
本当にありがたいことです。また、なんとかする、というのはこの会社のDNAでもあります。
-技適マークなどの取得はどうしてらっしゃいますか?
技適取得済みのモジュールを使用しています。チップメーカーさんや、通信機器を製造する工場にも相談しました。また、組み立て時にどこに技適マーク印字するかとか、お客様はこれを見てわかるのかなど、技適ひとつとっても色々な課題があるんだなと感じました。
-スマートロックというと海外でも国内でもありますが、他社の製品を見てどう思われますか?
面白いなと思っています。その中で僕たちが国内で一番先に旗を揚げて、スマートロックを製品化できたのは、声をあげていいところかなと思っています。一緒に市場を盛り上げていけたらと思っています。
Akerunの進化
-先日、インターネットから開け閉めできるサービスもリリースされましたね。
Akerunは3GやWi-Fiで常時通信すると電池がすぐなくなってしまうので、Bluetoothを使ってスマホ越しにインターネットに繋がっています。先日発表したサービスでは、Akerun RemoteというIoTゲートウェイを使って常時インターネットと繋がっている状態にし、遠隔でカギの開け閉めができたり、状態を見たりすることができるようになりました。常時インターネットにつながることで、よりスマートロックを便利なサービスだと認識していただけるのではないかと思います。
スマートロックは基本的にスマートフォンが必要なものが多いのですが、AkerunだとPCの管理画面上からURLを発行してフィーチャーフォンでも使うことができます。インターネットに繋がればどんなデバイスでも使えるというのが新しいのです。Wi-Fiの場合はネット回線を引いていない場所だと使えないのですが、3G(電話回線)ですと多くのご家庭やオフィスでも使うことができます。
-その代わり、SIMが入っているので月額使用料が発生するわけですね。
はい、それに加えて、24時間サポートや大量のIDを管理するためのサーバー、管理画面のAkerunマネージャーで権限の管理を一括でしたり、カギを一覧で管理できたりしますので、これらを使っていただくための使用料になります。
-今後の展開を教えてもらえますか。
Akerunは「鍵をインターネットに繋げる」というのが大きなきっかけでしたが、鍵やドアのあるべき姿や、本当に便利で快適な形を突き詰めて開発していきたいですし、私たちは早い段階でお客様に提供して使っていただているため、使ってみてわかる課題を多く知ることができました。今後もAkerunをより使いやすいプロダクトにできるようどんどん進化させていきたいと思います。
スマートロックはまだイノベーター層に手に取られている段階だと感じていますので、私たちが思うスマートロックの世界をもっと多くの人に伝えていきたいと思っています。
-本日は、ありがとうございました。
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自宅の鍵管理に月額費用がかかるのは、なかなか導入しづらいと思うが、ビジネス用途で、オフィスの入退室を全て記録し防犯に繋げたり、例えば不動産の内見希望者にインターネット経由で鍵を渡すことができたりすることは、低コストでメリットが大きくなる可能性が高い。
インタビューから数日後、近づくだけで解錠できる「ハンズフリー機能」が追加された。スマートフォンを取り出さなくても、ドアの数メートル手前に近づいただけで自動的に解錠できるという。
さらに進化していくAkerunに注目したい。
【関連リンク】
Akerun
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