株式会社富士通研究所は、様々な企業や個人から入手したデータの出所や加工履歴といったデータの成り立ちを示す来歴情報が確認でき、安心してデータ利活用が可能なブロックチェーン拡張技術「ChainedLineage(チェーンドリネージュ)」を開発した。
企業間で利活用可能なデータは、いくつものデータから生成されていることが多く、かつ複数の企業によって加工されている場合がある。それらのデータを活用する企業にとって、入手するデータの信頼性確保が重要だが、現状は一つ一つデータを遡って来歴情報を問い合わせる必要がある。また、個人情報保護法やGDPR(※1)などに準拠したデータ入手も課題となっている。
同技術により、企業などが公開したデータの来歴情報を一元管理できるため、複数の企業を経由したデータ加工の履歴を容易に追跡できるほか、GDPRの要件として求められる本人同意済み個人データの効率的な入手も可能になる。同技術の特長は以下の通り。
- 複数の企業を経由して生成・加工されたデータ履歴の情報を統合する技術を開発
従来、企業ごとに保有していたデータ加工履歴情報と、ブロックチェーン上で共有されている企業間データ取引履歴情報を、他の企業からも確認できるように、加工履歴情報およびデータ取引履歴情報のハッシュ値(※2)を介して統合する技術を開発。ある企業が生成・加工したデータがさらに別の企業に活用されていくデータ活用環境で、加工履歴情報は企業をまたがってチェーン状に統合されていく。このデータ構造は、データ提供元企業の加工履歴情報のハッシュ値がデータ提供先企業への取引履歴情報の中に含まれ、データ取引履歴情報のハッシュ値がデータ提供先企業の加工履歴情報の中に含まれるように構成されるため、企業をまたがった追跡や改ざんの検出を可能とする。
- 複数の個人データを条件指定によるリクエストで一括取得する技術
データ流通基盤である「富士通VPXテクノロジー」(※3)上に、個人データ利用許可の同意ポータルを配置し、アクセス管理プロトコル標準であるUMA2.0(※4)を用いて、データ要求元に対する本人の提供同意が済か否かを確認し、データへのアクセス権を与える。また、このアクセス権をデータ取得リクエスト時に指定する条件(性別、年齢層など)と関連付けることにより、複数人の利用許可済個人データの一括取得を可能にする。
GDPRの要件に対応する本人同意の制御技術は、ブロックチェーン技術を活用したデータ活用のためのクラウドサービス「FUJITSU Intelligent Data Service Virtuora DX データ流通・利活用サービス」の拡張機能として2018年度中の実装を目指す。企業をまたぐ来歴管理技術を含めた「ChainedLineage」の全体システムとしては、2019年度の実用化を目指し、今後データ利活用シーンにおけるフィールド実証実験を進めていく予定としている。
※1 GDPR:一般データ保護規則。2018年5月25日に欧州で施行された個人情報保護に関する法律。
※2 ハッシュ値:データから計算して得られる固有情報。データが改変されるとハッシュ値も異なる。
※3 富士通VPXテクノロジー:富士通研究所が開発した、ブロックチェーンの応用によるデータ流通ネットワーク技術。
※4 UMA2.0:User-Managed Access 2.0の略。アクセス管理プロトコルの標準の一つ。
提供:富士通
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