人との出会いがプロダクトをつくる
「POCKETALK」誕生には、実はシリコンバレーが深く関わっている。シリコンバレーに自宅をかまえるソースネクストの松田氏は、次のように語った。
「シリコンバレーに住んで気づいたのは、人との出会いとグローバルな製品をつくることの重要性だ。シリコンバレーは世界中から人が集まってくる。この7年間、ほぼすべての食事のたびに人と会ってきた。ソラコムの安川健太CTO(最高技術責任者 兼 共同創業者)と親交を深めたのも、シリコンバレーにある私の自宅だった。もし、シリコンバレーに住んでいなかったら、ソラコムのSIMを使って世界中で使える翻訳機をつくる、という発想に至らなかったと思う。グローバルな環境での出会いから、ビジネスは始まるのだと感じる」
シリコンバレーにある松田氏の自宅を訪問したこともあるというGROOVE Xの林氏は、シリコンバレーについて次のように語った。
「シリコンバレーはスタートアップのコミュニティの成熟度が高い。起業がスタンダードで、エコシステムによってスタートアップを成長させるしくみがある。日本で起業を考えている人は、シリコンバレーを見ておく必要がある。一方、シリコンバレーはサービス設計とソフトウェアの分野は強いが、ハードウェアの技術はそこまで高くない。『POCKETALK』のような優れた製品はつくれないだろう。その点は日本の企業に優位性があるのではないか」。
「人々の暮らしがこれからどのように進化していってほしいか?」という膳場氏の質問について、松田氏は「翻訳については、これから精度もスピードも確実に上がる。ビジネスや暮らしの中で言葉の壁が少なくなることで、日本の産業の競争力も高まるだろう」と語った。
林氏は、「当社の目標は、四次元ポケットのないドラえもんをつくること。ドラえもんは本当によくできたプロダクトで、ユーザーの個性や環境に応じて柔軟に対応を変える。のび太は自分を無制限に受け入れてくれるドラえもんがいることによって、がんばれる。つまり、機械が人間の行動変異を起こしている。こうした、機械が人間の成長をサポートする役割は、これから益々重要になる。その第一歩が『LOVOT』だと考えている」と語った。
最後に、「SORACOM Discovery 2019」に参加した人に向けて、松田氏は「プロダクトは、会社どうしの結びつきから生まれる。今後も『POCKETALK』に続き、さまざまなIoT製品を出していく予定だ。一緒に協業してくれるパートナーがいると嬉しい」と、協業の大切さについて語った。
林氏は、「世の中にはまだ『LOVOT』を知らない人の方が多い。見ただけでは価値が伝わらないことが理由の一つだ。体験した人の9割以上が満足してくれている。まずは体験してほしい。そして、さまざまな企業と協力して、日本発のドラえもんをつくりたい」と語り、「ドラえもんはメイド・イン・ジャパンであるべきじゃないか」と参加者に問いかけた。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。