国土交通省では、2016年度より、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスでICT等を活用する「i-Construction」を推進している。これにより、建設現場の施工管理は、今後ICT技術が全面的に活用されることで大きく変わることが予測される。
複数の種類やメーカーの建機の位置や稼働状況、現場での消費燃料量、移動土量、施工の進捗との関連性など、建設・土木工事現場の現場管理者は、多岐にわたる情報を正確に把握し、生産性の向上に繋げることが必要とされている。
このような中、ボッシュ株式会社では、対象物を継続的に監視・追跡する事ができるIoTソリューション「TRACI」を提供している。「TRACI」による位置・稼働状況見える化ソリューションは、「TRACI」タグ、ゲートウェイ、クラウドコンピューティング及びアプリケーションで構成されている。
対象となる建機に、機械の位置や稼働状態のデータを取得する「TRACI」タグをマグネットで装着する。 取得したデータは、LPWAの1つであるオープンな無線ネットワーク規格LoRaWANを介してボッシュのIoTクラウドに送信された後にデータ処理され、スマートフォンのアプリやウェブブラウザで直接閲覧することが可能になる。さらにユーザーは、取得されたデータや処理された結果を、自社の管理システムに統合することもできる。
これにより、遠隔地から状態を把握できるようになり、管理の効率化ならびに生産性向上に繋がる。
欧州では「TRACI」を使用した実証実験が行われており、今回ボッシュは、日本の土木工事現場での「TRACI」の有効性を確認するため、日本国内の建設・土木工事現場で、「TRACI」を活用した建機位置・稼働状況取得及び法面状態監視の実証実験を、清水建設株式会社と実施した。
建機を対象にした位置・稼働状況取得の実証実験は、神奈川県の清水建設の土木工事現場で実施された。同実験では、GNSS位置情報や加速度情報に基づいた建機の状態を把握する事ができ、その有効性が確認された。なお、清水建設との協議により、「TRACI」の新たな使い方を検討し、検証を進める。
また、法面状態監視の実証実験は、静岡県の清水建設の土木工事現場で実施された。近年、日本では台風、地震、豪雨などの自然災害による土砂崩れの頻度と規模が拡大しており、土木工事現場における施工中の盛り土による法面の継続的な状態把握も重要となる。
同実証実験では、土木工事現場の法面に「TRACI」タグを設置し、法面の崩壊に伴う表土のすべり検出に向けた反応閾値の検証を実施した。結果、「TRACI」タグを使用することで、悪天候時の法面状態の巡回監視の頻度が低減され、土木工事現場での省人化につながる可能性が確認された。
ボッシュでは、「TRACI」タグの開発段階から、データセキュリティとデータ統合の容易さに加え、建設・土木工事現場の環境条件に適した耐久性も重視している。そのため「TRACI」は、衝撃、雨、粉塵だけでなく、機械の高圧洗浄など、建設・土木工事現場での過酷な環境に耐えるように開発された。「TRACI」タグは一次電池を内蔵しており、使用可能期間は通信頻度設定により5年が想定されている。
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