NECは、CPUと書き換え可能な専用LSIのFPGA(注1)を広帯域な伝送路でつないだプロセッサ(密結合プロセッサ)において、CPUとFPGA間の高速通信を実現する「異デバイス共通通信方式」を開発した。
IoTにおいて、センサや機器からの大量なデータを高精度に分析するには高性能なプロセッサが不可欠だ。昨今、高性能なプロセッサとして、CPUとFPGAという種類の異なるコンピューティングデバイスを密結合したプロセッサが検討されている。
今回、NECは、センサからのデータ分析などIoT向けアプリケーションに対してCPUとFPGA間の高速通信を実現する「異デバイス共通通信方式」を開発。
同方式の有効性を、インテルのCPU-FPGAを密結合した試作機を用いて評価した。同方式とNECの半導体設計ツール「CyberWorkBench(サイバーワークベンチ、以下CWB)」(注2)を併用することで、CPU-FPGA密結合プロセッサ上でのIoTの高精度な分析処理の高速化に必要な設計時間を約1/50に短縮できた。
NECは「社会ソリューション事業」に注力しており、その中でIoT事業の強化に向けた通信技術の開発を進めていくという。
背景
IoTの進展により、社会インフラにおけるセンサや機器等からの大量データを高精度に分析処理できる高性能なクラウドコンピューティング基盤が不可欠になっている。また、クラウドで利用する高性能なサーバを実現するために、CPUとFPGAを密結合した高性能なプロセッサが検討されている。それぞれ特徴が異なるCPUとFPGAを組み合わせることで、サーバの高速化および低電力化の実現が期待されている。
従来から、FPGAの設計には、専用ハードウェアの設計スキルと、長い開発期間が必要だったが、NECは独自の半導体設計ツール「CyberWorkBench(以下CWB)」を提供し、短期間での開発を実現している。
しかし、CPU-FPGAの密結合プロセッサでは、CPUとFPGA間の通信速度が性能に大きく影響する。このため、プロセッサの持つ高い通信性能を引き出すために、CPU上のソフトウェアとFPGA上のハードウェアを開発する必要があり、開発が長期化することが課題だった。
今回、CPUとFPGAという異なる種類のコンピューティングデバイスを密結合したプロセッサ向けの「異デバイス共通通信方式」を開発。これにより、様々な処理に対し、ソフトウェアの改変を不要にしつつ、CPU-FPGA間通信の高速化を可能にする。
技術の特長
ソフトウェアの改変を不要にする通信方式により、開発期間の短縮を実現
FPGAがCPU上のデータにアクセスできるという密結合プロセッサの特徴を活かした通信方式を開発。FPGAがCPU上のデータを直接読み書きすることにより、従来FPGAを利用するときに必要であったCPU上のソフトウェアの改変が不要となった。
データ通信単位の最適化により、様々なアプリに対する高速化を実現
FPGAがCPU上のデータをまとめて読み込むことで、密結合プロセッサにおけるCPUとFPGA間の広帯域な伝送路を活かす技術を開発。また、処理により異なる通信データサイズ及び要求性能に柔軟に対応してデータの通信単位を調整することで、様々なアプリケーションに対して高速化を可能にする。これにより、処理に合わせて性能チューニングを行う手間を大幅に短縮できるようになった。
なおNECは同技術を、Design Automation Conference(6月5日(日)から6月9日(木)まで米国オースティンで開催(注3)で7日(現地時間)に発表する。
(注1) FPGA:Field Programmable Gate Arrayの略。回路構成が書き換え可能な半導体。
(注2) CyberWorkBench:NEC独自のASIC・FPGA設計向けC言語ベース高位合成ツール。ソフトウェアプログラムからハードウェア記述を合成でき、ASICやFPGAの設計スキルをもたない技術者でも短期間でハードウェア開発が可能。
(注3) Design Automation Conference :電子システムのデザインや設計自動化、組み込みシステム・ソフトウェアに関する国際学会
【関連リンク】
・日本電気(NEC)
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