企業情報システムのシステム間インタフェースにおいて、HUFLTが利用されるシーンは多い。
HULFTというのは、それぞれのシステムに専用のモジュールをインストールしておくことで、システム間でセキュアに送受信することができるだけでなく、システム間インタフェースの前後に処理を加えるようなこともできるソフトウエアだ。
今回、HULFTを開発しているセゾン情報システムズがIoT向けの商品を作ったということで、HULFT事業部 マーケティング部 部長の堀野氏と、製品開発部 IoT担当マネージャーの友松氏にお話を伺った。
ー私(小泉)、25、26歳くらいの時にHULFTの設定やってました。
堀野氏(以下 堀野): 本当ですか?
ーバッチアーキテクチャーの中で自動送受信の機能があったんですけど、結構大規模なシステムで、システムの数があの当時で多分10くらいあったのです。基幹業務システム側をやっていたので、他のシステムと全部繋がなくてはいけなくてですね。システム間インタフェースは全部HULFTだったのです。だからすごい昔ですけど。使っていました。
設定も簡単で使いやすかったという覚えがあります。通信の前後で処理をつけられるところがありがくて、重宝しておりました。
堀野: 今もあまり変わっていないですよ。
ー通信がきちんと終わったって、完全に保証してくれるじゃないですか、HULFTって。
堀野: そうですね、はい。
ー私が言うのもなんですけども(笑)システム間インタフェースだから、当然ただファイルだけこられても困るのです。そのあとデータベースに突っ込んだりしたいじゃないですか。
そういうこともいちいち作り込まなくてもHULFTがトリガーになってくれるというのはすごく楽でした。では、早速ですけれども、今回のHULFT IoTの話を伺えればと思います。
友松氏(以下友松): HULFTの新しいコンセプトとして、従来のHULFTをIoTのシーンでも使っていただけるように新しく開発をしたのが、HULFT IoTというものになります。
もともとは、HULFTというとコンピュータとコンピュータの間でデータの転送を安全確実に行うツールとして、デファクトスタンダードとなっています。このHULFTをデバイスの世界に持っていこうっていうのが、このHULFT IoTのコンセプトになります。
HULFT IoTの構成イメージなのですが、通常のHULFTだとP2P(ピアツーピア)型なので、双方にアプリケーションを入れて、双方で設定していくというイメージとなりますが、それを集約型に変更しています。
まずデバイスの方に、転送だけを行うように小さくしたHULFTを導入していただきます。これを「HULFT IoT Agent(ハルフトIoTエージェント)」と呼びます。これを製造装置だったり、車載だったり、ウェアラブルデバイスだったり、そういったものに導入して頂いて、設定はすべてサーバ側にある「HULFT IoT Manager(ハルフトIoTマネージャー)」で行う形になります。
ミドルウェアなのでいくつか利用条件があって、HULFT専用のプロトコルがTCP/IPベースなので、TCP/IPが利用できる必要があります。また、デバイス自体がOSを持っている必要があるのと、ファイル転送が前提なので、データ自体がファイル化されているという条件があります。
そこで、そういった条件をクリアできない場合、例えばプリミティブなセンサーなどの場合は、IoT Gateway(ゲートウェイ)に一度集約して、IoT GatewayにHULFT IoT Agentを入れることでクラウド側に転送していくこと形になります。
ーこの製品の特徴はどういうところですか?
HULFTの強みを生かしたIoT製品ですので、大きく3つ特徴があって、「安全確実にデータの転送ができること」「すぐに使えて、環境セットアップも非常に簡単に出来ること」です。それから「コストの低減が出来るというところ」ですね。ちょっとこのあたりをお話します。
まずやっぱりIoTと言うと、データ転送で使われるプロトコルは、MQTTやHTTPSになるかと思います。それらそれぞれ特徴があるとは思っているのですが、「到達保証」とか「整合性チェック」、つまり確実にデータを転送したかどうか確認する時にどうするかと。
MQTTやHTTPSでそのあたりを解決しようとすると、結構作り込みが必要で、特別な開発が必要な場合が多いです。
しかし、HULFT IoTでは、「到達保証」も「整合性チェック」も、プロトコルレベルで機能としても持っています。ですので、開発することなく、それらの機能を実現できます。
また、すぐに使えるというところでは、インストールして設定するだけですぐ使えるようになっています。必要な設定はすべてGUIでできるようになっており、誰でも簡単に設定が可能です。それからエージェント側へのインストールについても、マネージャー側からコントロールできるような仕組みを今開発しています。
ーマネージャーがコントロールするのですか?
友松: はい、イメージ的に言うと、デバイスが、マネージャー側にアクセスできるような状態をまず作っていただく。そうするとマネージャー側からエージェントをダウンロードできますので、後はインストーラーを起動すれば、自動的にセットアップしてくれます。
ー対応製品(デバイス)が決まっているという事なのですか?
友松: 今は汎用的に作ろうと思っているので、LinuxかwindowsのOSが乗ってれば使える想定です。
ー手動でインストールするのであれば、出来るのはよく分かるんですけど、さっきの自動的にインストールするタイプだと、何かもともと入ってないと無理じゃないかなと思ったのです。
友松: ああ、そうですね。手順としてはマネージャー側にモジュールが置いてあって。すごい技術的な話になっちゃうのですけど・・
ー大丈夫ですよ。
友松: まずエージェントのセットアップモジュールをマネージャー側からwgetみたいなコマンドでファイルをダウンロードしてきます。そして、そのモジュールを起動すると自動的にセットアップされる仕組みです。
相手側へ通信をし始める時にはアクティベーションをする必要があるのですが、MACアドレスのようなデバイスを特定できる情報を渡してあげると、認証されて、そこからデータの転送が始まるようになっています。
ーそれを自力でやるわけですね。マネージャーまではwgetで取ってくるのだけど、そこから先はネットワーク情報をマネージャーに設定すればデバイスが自力でどうにかコピーしようとするわけですね?
友松: そうですね。
ーなるほど。では、ポートだけ空いてればいいって事ですか?
友松: そういうことですね。一連の動きをひとつのプログラムでまとめてあるので、ドンと実行してあげると自動にセットアップがされるようなイメージですね。
それから、対応機器の話なのですが、汎用的にという事で普通の一般的なLinuxとwindowsに対応しようと思っています。
ARMアーキテクチャでできているデバイスとかも存在するので。そういうものは、ある程度ピックアップをして事前検証をする予定です。いわゆる認定製品みたいなイメージで、いくつか製品をリリースと同時に公開させて頂こうかと思っています。
今すでに検証が済んでいるのは、ぷらっとホームさんのOpenblocksとか、あとアットマークテクノさんのArmadilloなどになります。あともうひとつ、コストの低減のところですね。やはりIoTで一番ボトルネックになるのは、転送にかかる通信コストです。
3G・LTEの回線を使うと、通信コストがどうしても大きくなりやすくなります。そこでデータ圧縮が必要になってきます。
ほかのプロトコルですとメッセージとかテキストの圧縮というのはなかなか難しいですが、HULFT IoTではデータの圧縮が出来ます。しかも、データを転送しながら圧縮することができ、デバイス側の負担を軽減することができます。
ーもともとファイルベースだからMQTTとかHTTPSとデータの話があんまり一緒にはしづらいですよね?
友松: はい。そうですね。
ーあくまでも単なるストリームデータとして何バイトくらいのデータを送るようなMQTTと、ファイルになってて中に色んな情報が書いてあるHULFTが扱う世界って、なんか用途が違いそうじゃないですか?
友松: そうですね、おっしゃる通りです。なので「どちらか」というわけではなくて、使い分けだと思っています。特に重要度が高くて秘匿性が高く、且つデータ量が多いようなシーンにはHULFT IoTが使えますよね。
リモートモニタリングでログデータをドカっと送りたいとか。そういったシーンの場合はHULFT IoTで。
バシバシストリームで送りたいって場合は、HTTPSとかMQTTを使って頂くようなイメージ。ですので使い分けで、セキュアで秘匿性が高いところをHULFT IoTを使っていただくようなイメージかなと思っています。
ーHULFTの特徴である通信後の後処理や、通信前の前処理機能などもIoTではかなり使い勝手が良さそうですが、その辺どうですか?
友松: そうですね。そのあたりも融通よく使っていただけると思います。
IoTの話を企業の方とさせていただくと、結構この辺のところって、みなさんあまり考えられてなくて、「とりあえずPoCなので」「とりあえずなんとか作ろう」って作られている方がほとんどですね。
それで、実際にシステム稼働させていった時に、そのセキュリティって大丈夫なのとか、到達保証って大丈夫なの?みたいな話がこのあと出てくると思っています。
先進的なお客様は最初からそのお話いただいて我々と一緒にやらせてもらっているお客様も何社かいらっしゃるのですけど、比較的このあたりっていうのは、まだまだ考えられてなくて、絶対このあと課題になるだろうなっていうのを感じるのです。
ーなると思いますね。
友松: ですので結構われわれとしては、IoTミッションクリティカルっていうものが存在するはずだと思っています。
ーああ、なるほど。それいいですね。IoTミッションクリティカルですか。確かにそういう言い方する人、あんまりいないですね。
友松: いないですよね。
ーMQTTが流行ってるから余計そうですよね。もっと雑でいいじゃんみたいな(笑)。ところで、具体的に導入は進みそうですか?
友松: 既存のHULFTのパートナーさんがいらっしゃるので、HULFT IoTどうですかって色々お話をお伺いしていく中で、こんなところで使えるのではないかと、色々アイデアを頂いています。
ひとつは製造業ですね。予兆保全とか、品質検査などで、データを収集するケース。それからエネルギーのところで、需要予測であったり、スマートメーターのデータ転送などですね。公共の分野でアイデアは頂くことが多いのは、例えば東京オリンピックがあるので、監視カメラとかを色んな所に付けていくとかっていう時に、映像とか画像とかそういったものがやっぱりMQTTで送れないので。
ーそりゃそうですよね(笑)。分量的にまず送れないです。
友松: ですのでこれをHULFT IoTでやったらどうかってお話を頂いたりというのは結構あります。
あとは流通系だと、決済の話ですね。それから、輸送物流の所だと、トレーサビリティとか、燃費管理みたいなお話もあって、トラックの中の燃費情報を取得してみたいのもあります。
実証実験をしていただいているお客様がいらっしゃるので、少しご説明させて頂きます。
まず1社目が工作機器のメーカー様ですね。自動車系の製造で使われるような高額な工作機器を作っている会社で、何百万から何千万レベルの機器を製造されているメーカー様です。
やりたいことは、工場に納品した工作機器をリモートで監視をしたいということです。
まずお客様の工場の中に入るので、工場のネットワークが使えません。ですので、別のラインでネットワークを作る必要があり、3G・LTEでやることになります。また、リモートの保守や予兆検知をするので、ログを漏らさず全部クラウドにアップロードする必要があります。そうでないと何か故障が起きた時に、その部分のログがもれていたらメンテナンス自体が出来なくなってしまいます。
しかも、工作機械は多数のセンサーが付いていて、1週間で10ギガ程度のデータにもなります。
これをLTEで転送とすると、そもそも送れないということになってしまうのです。その点、どうしたらよいかとずっと悩まれていて、それで、我々にお声掛けを頂きました。
HULFT IoTの場合、先ほどのご説明の通り圧縮ができるので、圧縮のテストを行ったところ、95%の圧縮が実現できました。
ー95%ですか、すごい圧縮率ですね。
友松: ログデータなので、テキストであるというのと、羅列した数値データが多かったので非常に圧縮率がよかったようです。
ですので、これは理想的な数字と思って頂いた方がいいかもしれません。それでも、今回は10ギガが0.5ギガに圧縮されたので。これだったら問題なく通信できるようになりました。
ー確かに、500メガバイトだと問題なく通信できますよね。
友松: いけるねって話になって。それで今、ビジネスサイドにもうちょっと使おうということで、もう少しビジネスに突っ込んだ検証を今やらせていただいている状況です。
もう1社さんが、精密機器の部品を作られているメーカーさんです。すごく細かい部品を作られている会社さんです。
その品質をすごく気にされていて。今までだと、熟練の職工の人が見て『あ、この品質OKだね。』という判断をしていたそうですが、やっぱりグローバルで展開していくと、そういった人材を育てるのが非常に大変になったということです。
ー熟練工の育成は難しいですよね。
友松: そこで、全部高解像度な写真を撮って、クラウドで集約して見る事によって、人間でなくても、それなりのクオリティを出していけるようにしましょうということです。
且つ、これはお客様が出来たらいいなとおっしゃっていた話なのですけど、機械学習を取り入れて自動的にそれを見て、品質が良いのか悪いのかって判断させるような事をやられたいと。
この事例も、送信するのが画像なので、大きなデータを飛ばす時にMQTTだと難しいという事でお声掛けをいただきました。
このお客様もすごくいい例で、もともとMQTTを使ったデータ収集の基盤をお持ちなんですよ。
でも、やっぱり画像がどうしても出来ないって言うので、アドオンするようなイメージでHULFT IoTも使いたいというお声掛けを頂いている状態です。
ーなるほど。
友松: 他にも、よくある話として、例えばIoT Gatewayを使っていた場合に、IoT Gateway自体に故障してしまったら使えなくなりますよね?
その時に、経路の切り替えをやる必要が出てくると思うのですけど、HULFTの場合、それはわざわざ現地に行って切り替え作業するみたいな事しなくても、マネージャー側でそれを全部コントロールできるような仕組みがあるのです。
ーその切り替えというのは、なんか待機系のマシーンを1台置いとくようなイメージですか?もう1台置いといて、さっきのアクティベートの仕組みあるから、アクティベートしないで置いといて。壊れたってなったら待機系を起こすみたいなやり方ですか?
友松: そのようなイメージですね。
ーそういうニーズはありそうですね、確かに。
友松: HULFT IoTは、もともとわれわれが持っていた強みを生かしている、すごくシンプルな製品ではあるのですけど、そういった強みをIoTに特化させています。
IoTの世界でHULFTをそのまま使って頂けるような機能実装を、追加で行っているイメージですね。
ーこれはもう販売開始されてるんですかね?
友松: リリースはまだでして、4月に先行検証版をリリースしました。実際の製品リリースは、今年度の夏くらいをターゲットにしています。
先行検証して実際にお客様に使っていただいて、フィードバックを受けてそれをもとにもう少し機能強化をして、夏くらいにご提供したいなと考えています。
さらに、もうひとつわれわれのメッセージとして出したいなって考えているが、グループ会社でアプレッソという会社があって、DataSpider(データスパイダ)って製品を持っているのです。
これを使うと、収集してきたデータを、変換をして他のアプリケーション側に渡す、見える化を実現する為にデータベースに書いてあげるとか、データをつなげて一つにするとか、そういったデータ変換やマネージドも、DataSpiderで提供できるのです。
HULFT IoTと合わせると、ミドルウェアのみで、ノンプログラミングでIoTのシステムって作れるようになってくるんです。
ーDataSpiderにGUIがあって、繋ぎ込みとかも全部出来るようになってるわけですね。
友松: そういう事ですね。
正確に言うと、データをファイル化するところはどうしてもプログラミングは残っってしまいますが、そこまで出来ているのであれば、あとは集約していくところは、ノンプログラミングで出来るということになります。
現状のIoTシステムでは、まだPoCが多くて、製造ラインを試しに1個作ってみたり、工作機械のメーカーさんだと、プロトの工作機を1個作ってみたりしています。
そうするとやっぱりシステムをその都度改変する必要がどうしても出てくるので、ガッツリ作り込むと言うよりは、こういったもので取りあえず作ってみて動かしてみようみたいな、プロトタイピングが必要になってきます。その時には、この組み合わせは有益だと思います。
また、マネージャー側で、エージェントが今生きているのか死んでいるのかとか、何処にあるのかみたいなところも管理が出来るので、デバイスの個体管理などの利用シーンでお声を頂くことがあります。
ですので、われわれとしても、広くソフトウェアとして使って頂くっていうご提供方法もあるかと思いますが、いわゆる組み込みみたいな形でOEM的に最初から組み込んでもらって使ってもらうっていう方法もあるかなと思っています。
ーさっきの工場のカメラの話がありましたが、それ自体がGatewayになっていて、中にHULFT IoTも入っているってなっていたら、SIをやるには楽ですよね。
友松: そうですよね。
ーサーバには、HULFT IoTのマネージャーとにかく突っ込めばいいし、このカメラを買ってきて、工場の然るべき所に設置さえしてくれれば、あとの品質管理は外で出来ますよという話で、現場でやらなくていいわけですよね?
友松: そうですね。
ですので、そういったプロダクト作られようとしている企業さんとか、サービサーの方々とか、そういう方々に組み込んでもらっても面白いかなと思ったりしています。
ー本日はありがとうございました。
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