IoTを進めるための具体的なプロトタイピング開発について、東京エレクトロン デバイス株式会社 CNカンパニー アプリケーションサービス開発室 神本光敬氏に話を伺った。
-御社について教えてください。
まず東京エレクトロンデバイスという会社は、エレクロニクス商社で事業は3つです。
一つ目は、デジタル、アナログをといった半導体を日本の製造業のお客様に提供し、技術支援をしていくという半導体および電子デバイス事業で当社の生業です。
二つ目は、ITインフラを中心としたネットワーク、ストレージ、データーベースといった製品の販売と、システム構築、アプリケーション開発、データ分析などの技術サービス等をエンタープライズ企業やデータセンター、サービスプロバイダーのお客様に提供しています。
三つ目はメーカー的な機能でインレビアムという自社ブランドビジネスです。インレビアムでは自分たちの目でマーケティングを行い、開発者にとって使いやすい評価キットになるといった目線で半導体のボードを作って世に出すということをやっています。

TEDのIoTへの取り組み
神本:では弊社のIoTの取り組みについてのお話に移らせていただきます。昨年末からIoTという市場について事業部の壁を越えて全社視点でのIoT戦略の検討を開始し、全社プロジェクトを立ち上げました。
「TED Real IoT アイデアをビジネスへ」という新しいコンセプト打ち出し、お客様が考えているアイデアをかたちにし、そしてビジネスにつなげる支援をしていくということをテーマにしています。
具体的なソリューションとしては、大きく二つのアプローチを展開しています。
一つはIoTのプロダクトソリューションです。これは、お客様のニーズに合わせてIoTの実現に必要な製品をご提供するという製品を中心とした考え方です。つまり顧客価値は、提供する製品の「機能・性能・コスト」といったものになります。
ラインアップとしては、センサー、ネットワーク、ゲートウェイ、クラウド構築といった幅広い領域において主要な取り扱い製品があります。また、今年の4月からは、Microsoft Azureの代理店としての展開も開始しており、お客様への提案も強化しております。
もう一つは、IoT開発サービスです。製品だけ提供してもなかなかお客様の実現したい事が形にならない場合も多々あるため、「課題解決」を顧客価値として、製品の提供ありきではなくお客様の課題解決に必要なデータの収集、蓄積、活用に必要な製品、開発、技術を一括して提供していくサービスです。具体的には、アイデア検討フェーズのお客様には、企画検討を支援する「Design Aid」というサービスを、具体的な開発を検討されるお客様には、IoTのプロトタイプ開発サービス「Min Lab」というサービスの展開を開始しています。以下の図をもとにもう少しご紹介させて頂きます。
上記図の青部分は、お客様が検討ステージにいらっしゃるフェーズです。現状のビジネスにおいて、そもそも課題があるのか、ある場合データ活用により解決するのか等をお悩みのお客様です。そうしたお客様には、最新の技術情報やユースケースなどをご紹介、技術を理解するための評価キットの提供等を通じてお客様の企画検討を支援しています。
次に赤部分は、お客様が「実際にこういう事をやりたい」という目的が明確になっていらっしゃるフェーズです。そうしたお客様には、プロトタイプ開発サービス「Min Lab」をご提案しています。「Min Lab」は、サービスのプロトタイプ開発に必要な、ハード・ソフト、ITインフラ、アプリ開発・分析まで一括して開発支援するサービスです。
IoTではどのようにデータ活用すればビジネス価値になるのかという要件定義を事前に行う事が難しいため、プロトタイプ開発が重要な役割を果たすと考えています。「Min Lab」のプロトタイプ開発では、要件変更に柔軟に対応できるよう、お客様とも準委任の開発契約を締結し、アジャイル開発を共に行う形態をとっております。
またこのフェーズではビジネス要件の確認を最優先事項と定義しています。そのため、性能、拡張性、運用等のシステム要件は重視しません。まずビジネス要件のプロトタイピングしっかり確認できた後に、システム要件を加味して最終的にはプロダクションの開発を進めるというのを基本的な考え方にしています。
TED Real IoTは、お客様の視点に立ちアイデア・かたち・ビジネスというフェーズに合わせてご提案していくことを重視しています。
現在のお問い合わせは、企画検討とプロトタイプ開発フェーズのお客様が中心です。そのため、企画検討の支援はもちろんですが、プロトタイプ開発でのデータ収集、蓄積、活用までのステップをできる限り簡単、シンプルに実現できるようなお客様に寄り添った開発サービスを行っています。
近年、様々なデバイス、クラウドサービス、最先端のデータ分析技術が出てきていますが、お客様自身がそれらを使いこなすのは、まだまだハードルが高く、だれかがそこを支援する必要があると考えています。
お客様ごとに要望が異なる中で、当然手間がかかる要素も多々ありますが、逆にここを埋めることで、お客様のデータ活用によるビジネス価値創出をご支援できればと考えています。
デモンストレーション
5月に東京ビックサイトで開催されましたIoT M2M展で展示したデモをご紹介します。このデモは、「振り子システムの寿命を予測する」というのがテーマです。
まず、角速度が計測できるセンサーに紐を付けて振り子にします。
振り子を振りますと、角速度センサーの情報がBluetooth通信で弊社の開発したPCのデモアプリにリアルタイムに送られてきます。このままでは単純な生データでビジネス価値はありません。そこで、その生データをリアルタイムに周波数解析を実施し、どの周波数帯にどのくらいエネルギー量があるかというのを時系列で見ていきます。
その解析結果を元に、寿命予測モデルを開発し、そのモデルを使って、何秒後に振り子が止まりそうかというのを予測するということやっているのです。この寿命予測までできて初めて、ビジネス価値になるという事です。
このようなデモを行った背景には、製造業のお客様から装置の寿命予測をしたいというニーズが多いため、それを簡単なデモに模写してみようという事で、本デモを開発しました。
-(振子が止まりそうになって)「危険です」になってます。止まりそうですね。
「メンテナンスします」すると、また正常になります。周波数帯としては振りがデカいので、例えばこれを大きくと振ると、
-ああ、エネルギーがデカくなりますね。
リアルタイムに生データを取ってリアルタイムに周波数解析し予測モデルを動かしています。
また、このデモはデータをクラウド等の外部環境に送らなくても、PCでデータ活用までを確認できる仕組みになっているのが特徴です。このデモに限らず、お客様のアプリに置き換えても、同様にPCベースでデータの収集、解析、分析が可能です。
-Bluetoothで飛ばした方がいろいろもめなくていいですよね。「工場のデータは外に出せない」という話も出ないでしょうし。
始めやすいというのが、やはりお客さんにとってはすごくポイントかなと思います。
-さっきからおっしゃってるように、これでビジネス的価値が出ると分かったら、本当に開発すればいいですよね。
そうですね。ビジネス要件を確認する事が一番難しく重要だと思います。もちろんシステム要件はその次のフェーズできちんと検討する必要はありますが。弊社としては、このビジネス要件の確認フェーズからお客様のデータパートナーになれるよう頑張って参ります。
-本日はありがとうございました。
【関連リンク】
・東京エレクトロンデバイス
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