日本アイ・ビーエム株式会社 Watson IoT事業部 事業部長 林 健一郎氏より、IBMのIoTプラットフォームである、Watson IoT Platformとパートナーシップに関する説明があった。
日本IBMのIoTに関する取り組み
現状、三菱電機や、ソフトバンク、ミネベア、などいくつかの企業との取り組みが進んでいるということだ。
領域 | 企業 |
製造業 | 三菱電機株式会社 |
ライフ | ソフトバンク株式会社 |
ヘルスケア | ミネベア株式会社、千葉大学 |
コミュニケーション | 株式会社リコー |
コネクテッドカー | 富士重工業株式会社、本田技研研究所 |
業界特化ソリューション
IOTのマーケットが、2014年では、5.4兆円であったが、2020年には13.8兆円のサイズになるという調査結果がIDC Japanから提供されており、このサイズは、ITビジネスのマーケットサイズと同等のサイズだ。
このマーケットの中を産業別にブレークダウンすると、組立製造、プロセス製造と呼ばれる、製造業の領域が一番多いとされ、コネクテッドカー・スマートファクトリーの領域、続いて公共・公益の領域、運輸サービス、小売りと続くとみられている。
そういう背景の中、このプラットフォームは業界別での利用を想定しており、現在考えられている業界は以下の通りということだ。
- IoT for Automotive(自動車)
- IoT for Electronics(エレクトロニクス)
- IoT for Insurance(保険)
- IoT for Industy Products(産業機器)
- IoT for Retail(小売)
- IoT for Telecom(通信)
このうち、現状使えるのが、AutomotiveとElectronicsということだ。
IBM IoT for Automotive
自動運転を行うには、天候、事故、工事の情報などの情報をリアルタイムで集めてくる必要がある。そういった収集と分析の仕組みを提供するということだ。それらの情報を地図上にプロットしていくことで運転手などクルマを取り巻くステークフォルダーに対して価値を提供するのだ。
先行するクルマが工事現場を発見すると、後続のクルマに対して工事の情報を伝える。それによって後続の車は迂回することができる。また、ABSをつかったという記録をクラウド上で共有することで、道路が滑りやすいことを認識する。
また、運転手の動向(急ブレーキや急カーブなど)の情報をえて、テレマティクス保険に活用することもできるのだ。
こういった情報を収集・分析するための基盤を今後IBMとしては提供していくということだ。
現在進んでいるプロジェクトとしては、カーナビメーカーのアルパイン社と提携し、新しい車載器の開発を進めていて、IBMのクラウド情報と、アルパインの車載器がタッグをくむという考え方だ。
また、米国(マイアミやラスベガス)では、3Dプリントでクルマを開発したローカル・モーターズ社のミニバスに自動運転の技術を加えている。ここに、Watsonを組み合わせることで、クルマに話しかけることで情報提供を行うというサービスが始まっている。
現状の機能としては、以下が実装されているということだ。
- ドライバの特性を収取する機能
- コンテキストマッピングと呼ばれる、道路状況を収集・集約する機能
- ダイナミックマップと呼ばれる、実際の地図に何が起きてくるかを動的にマップする機能(今後)
IBM IoT for Electronics(現在β版サービス)
エレクトロニクスの分野では、家電のIoTが想定されている。これにより、洗濯機の水漏れ、冷蔵庫の予防保全などのソリューションが実現できる。
家電の登録を行い、使用状況を常にモニタリングし、故障しそうな場合、遠隔操作で治せる場合は遠隔操作を行い、難しい場合はメーカーやサポート企業と連携をする。というソリューションに使えるということだ。
特にグローバルで活躍する家電企業にとっては、保守サービスは簡単ではない。そこで、この仕組みが活用されるということだ。
IBMのIoT Platformの特徴
ここまでみてきたプラットフォームは、Bluemix上にある、Watson IoT Platform上で集約する。そこで各アプリケーションと連携していくということだ。
特徴としてはWatsonと連携することで、過去の経験値に基づく対応をみいだしたり、映像解析の仕組みを利用したりすることができる。Watsonを使うところとしては、ユーザ体験に利用していく想定ということだ。
また、どの機器がどの場所に存在するのかを管理するためにブロックチェーンの技術を使っており、その結果、どのデバイスがどの場所にあるのかということが明確になる。
さらに、数万個のデータをクラウド側に集約していくという流れがあるが、今後それでは処理ができない場合に、エッジ側(デバイス側)で処理を行うということにも対応しているということだ。
最後にウェザーデータをWeather Companyから収集しているが、その情報を活用してコネクテッドカーなどの利用シーンにも役立てている。
基幹システムとの連携に関しても重要だ。IoTで集めてきたデータを現在存在する基幹情報システムとの連携も連携APIを持っているため接続も可能となるということだ。
実際に利用する際は、あくまで部品の提供となるので、アプリケーションの作りこみは必要となるということだ。
他社との違いとしては、Bluemixをベースにしているので手軽に構築できるということと、Watsonやブロックチェーン、気象情報、エッジへの対応ができること、世界中でのIoTを推進していく際IBMのインフラが利用できこと、などがあげられるということだ。
ドイツのミュンヘンに開発チームや、コンサルタントなどが1,000人規模のWatson IoTのセンターが設立してく流れもあるということだ。
ここでは、お客様企業が各専門家とともに検討をすすめることができるということだ。IBMのWatson IoTへの意気込みが感じられる。
Watson IoT Platformパートナーエコシステム
このパートナープログラムでは、Watson IoT Platformを活用したビジネス、技術、教育、マーケティングの支援活動を通じて、共にエコシステムを構築し、日本におけるIoTビジネスの拡大に貢献していくということだ。
2016年7月26日現在、17社のパートナーがすでに集まっている。
今後もパートナーエコシステムは増やしていく想定ということだ。
また、Watson IoT Platform Arcadeというリアル・バーチャルのイベントを開催し、パートナー企業とともに開催していくということだ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。