日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Fusion Middleware事業本部 ビジネス推進部 担当ディレクター 杉 達也氏へのインタビュー後半です。
後半は実際の事例を伺いました。
日本オラクル事例の紹介
ソフトバンク、電動二輪バイクレンタル
いくつか実際に使って頂いているお客様の事例をご紹介します。まずは、ソフトバンク様とやっている電動二輪バイクのレンタルサービスです。
バイクの上に通信モジュールがあって、それが位置情報やバッテリーの残量を拾い上げ、随時オラクルのIoTクラウドに投げ込んで頂いています。その情報を加工してカスタムのアプリケーションでユーザインタフェースをつくり、レンタルサービスの業務スタッフの方々の情報として利用して頂くような形にしています。
過去何日分かでどのくらい稼働したのか、選択した日の電力の利用状況を表示しています。また稼働状況やバッテリーの残量が一覧表示され、必要に応じて条件分けもできます。
全体を俯瞰して見ることもできますし、1台1台の今のこのバッテリー残量と、その後どのくらいまで走れるか、を計算して出すこともできます。そのような状況をスタッフが見て必要に応じてお客さんに通知してあげることができます。
これを非常に短い期間でやったというのがポイントで、実際に環境が使えるような状態になってから、わずか2週間くらいで最初のアプリケーションを業務スタッフの方に提供しました。そのあと使って頂きながらご要望頂いて追加機能入れたり、改善したりということをやっています。
構造は上記のようになっています。端末部分はアプリケーションと言っても、「どういう情報」を「どのくらいの頻度」で出すかというプログラミングをつくるくらいです。作る量が少なくて済むので非常に短い時間で作れました。
また、IoTクラウドサービス部分は、前半でお話しした通り、プログラミングというより設定でやる部分となります。
後ろのアプリケーションは、取得したデータから画面に表示するという事なのですが、ここの部分にも一部われわれのグラフ表示のコンポーネントを使っているので、見た目の部分の開発工数を減らすという事に貢献をしています。
まったく別の領域でいくと、弊社パートナーが検証という形でやったものですが、いわゆるスマートファクトリーに近い領域です。各工場の稼働状況を可視化するというのは、結構やられているケースは多いですが、拠点が国外にあった時に、その情報をいかに効率よくとっていくかというテーマの検証でした。
全部の情報をクラウドに流し込むのは簡単ですけど、海外ですとネットワークコストの問題があったり、または通信の帯域が日本ほど潤沢ではないようなエリアもあったりします。
そういう曲面で、工場の中でいったん情報を収集して、加工してサマライズした形で必要な情報だけを送るというような構造にしたいというのは、もともと要望としてあり、それをわれわれのIoTクラウドでやってみるというプロジェクトです。
ゲートウェイをエッジ側に配置し、そこでエッジコンピューティングのアプリケーションを配置し、ここで流れてくる情報を一時集計し、その結果を流し込むというような形にしています。
このエッジ側のアプリケーションをリモート管理できるようにしたというのが、われわれのIoTクラウドのポイントです。このゲートウェイに配置するアプリケーションをリモート配信し、クラウド側からアクティベートできます。こうする事で現地に行かずとも、調整ができるようにしました。
機器との通信も考慮すると、今の調整結果が半年後も良いかどうかも分かりません。そこで、調整を現地ではなくリモートでできるようにするという事は、大きなメリットが出るという事になるのです。
―リモートでこういう事をやるケースというのは、あまりないものなのでしょうか。

そうですね、まだ少ないと思います。ただオラクルではこの辺の話というのは、特にグローバルでは結構出ています。
取る情報をどのくらい絞ればいいのか、もしくは足りない情報を増やすのかというのを、細かく調整しないと、本当に欲しい情報が全部集まってきて、本当の意味でのスマートファクトリーにならないのです。ただの見える化で終わってしまいます。
そういう意味ではこの調整機能というのは、海外のケースでも結構使われていて、便利な機能として評価されているところです。
―機器の上にJavaが乗ればという話が冒頭にあったと思うのですが、あの話がそこで生きてくるという事ですよね?
そうですね。
―世の中にはプログラマブルなものってあると思うのですが、認定機器って機器自体が認定されてるケースが多くて、上に乗ってるソフトウェアを更新するって発想にはなかなかならないですよね。つなぎ込みはすごくやりやすいって話にはなるけど、全部クラウドで解決しようという話になりがちですよね?
そうなのです、おっしゃる通りです。われわれのJavaのチームは、エンタープライズのJavaという領域をカバーするチームと、組み込みのJavaのチームが専属でグローバル、日本も含めています。
古くで言えば家電の領域ですけど、ブルーレイの規格にはJavaの組み込みが入っています。家電もしかり、こういう産業機器もしかり、地道にJavaの対応をずっとやってきました。
―なるほど。あの当時はわりとみんな冷ややかな目で見ている人もいましたけど、携帯電話もひとつのモノだって言い方をすれば、上にJavaが乗ってて、なんならゲームもできますからね(笑)。
おっしゃる通りです。これも偶然ですが2週間で完成しました。先ほどのソフトバンク様のケースと、スコープがだいぶ違うので、同じように比較はできないのですが、結果的には似たような効果が、時間的には効果が出ました。
このパートナー様では、リモートでアプリケーション配信できるという事で、逆に不正なモジュールの問題や、不正に接続された時にどんな挙動を示すかという観点での検査もされています。
そこがちゃんとブロックされるとか、認証が入ってないものがアクティベートできないようになっているだとか、というのは確認を頂いています。
一体型設計のメリット
業務要件としてのセキュリティーやガバナンスは、特に後ろと前をつなぐという事になると、非常に重要になってくるので、そこを作らなくても用意されたものを使えるような状態にしているという一体型設計というものは、すごくメリットになってくというところです。
―バリューチェン全体を横串にするようなIoTの考え方って、そもそも考えられてないケースが多いですね。いろんな方と話していると、ついにリアルタイムができるようになってきたなって感じがしてるのですが、なかなかそこに至らないですね。さっきバッチっておっしゃっていましたけれど、最短で1日に1回ですよね?
そういうケースをよく耳にします。
―グローバルになってくると、1日に1回ってどこが1日なのだという話もあり、少なくとも末端の情報はリアルタイムに取ってこれるわけですから、生産計画や、ロジスティクスなどにフィードバックしていくことができるようになりますよね。ようやく20年くらい前に言われてたERPのコンセプトが実現できる感じがします。
おっしゃる通りです。どうしてもそこは技術的な問題と、これは日本のお客様に多いのですが、組織的な問題があって、なかなかここからここまでは自分の組織の役割で、ここから後ろは別の組織なのでと言って、そこで分断されてしまうケースがありました。しかし、そうも言っていられない時代になりつつあると思います。
―北米ではわりとそういう考え方は多くなってきているというお話は聞かれますか?
そうですね、北米ヨーロッパはそういう意味では日本ほど縦割りではありません。まあこれは良し悪しあるのですが、日本のお客様は縦割りというか部門の壁が厚いけど、部門の中での個別最適化はものすごく進むという傾向があります。
逆に欧米は個別の組織とは別に、トップダウンで全体最適をうまくやるっていう傾向があるので、全体最適化という観点でいけばこういう大きな話というのは進めやすいです。
―みなさんお話ししていると、IoT、IoTと騒いでる人たちが多いおかげで、わりと経営問題にあがりつつあるという話は聞きます。
そうですね、そういう観点ではいいと思います。
―そうなると何かちょっとやり方も変わってくる気がします。
末端の機器から出てくる情報が、売り上げやコストにどう紐づいていくのかというところが見えないと、情報としては意味がないものになってしまいます。ただ末端からの情報だけだと、末端の作業改善というところだけにフォーカスをしてしまって、そこはもう十分やってるよって話になります。
どちらかというとその情報がいかに売り上げにどう紐づいているのかとか、コストにどうつながっているのかとか、1個1個の単価が果たして適正なのかとかという話と、その情報自体ERPやバックエンドのシステムに入ってる、稼働情報やコストを紐づけることが重要です。
―ただ、一方で繋いだからじゃあ300円儲かったみたいな話とかはでないですよね(笑)。予兆保全の話などが多いです。予算の取り方自体が、そもそもビジネスプロセスからみて横串じゃないですよね。会計処理との連動も重要だと思います。
そうです。そういう観点で行くとオラクルがERPのアプリケーションベンダーであるというところは、ひとつ、メリットではあると思います。
ERPとしてのベンダーでもあるし、エンタープライズテクノロジーのベンダーでもあるし、あとは末端のJavaの組み込みも持ってるということでいくと、比較的全般的にカバーできる素地を持ってるというところは、面白いところだと思います。

―そうですよね。今日はありがとうございました。
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