7月15日から17日の3日間、中国・上海で「Mobile World Congress Shanghai」(MWC上海)が開催された。MWC上海は、3月に開催されたMobile World Congress(MWC)のアジア版という位置づけ。主催は各国の携帯電話キャリアが加盟するGSMAという団体で、携帯電話関連の様々な展示があったほか、キーパーソンの基調講演も開かれた。
キャリアの業界団体が開くイベントという性質上、IoTについては、やや派手さに欠ける展示だった。イベントの主なテーマは5GやLTEなどの通信インフラが中心で、IoTはあくまでも周辺テーマの1つでしかない。一方で、5Gは、膨大なデバイスがネットにつながる、まさにIoTの世界を想定した仕様になろうとしている。各社の基調講演でも、このような観点でIoTへの言及があった。
たとえば、世界最大キャリアの中国移動は、会長のシー・グオホワ(奚国華)氏自らが中国政府が掲げる「インターネットプラス」という概念を解説。
重点プロジェクトとして、「オペレーターだけでなく、社会にある核となる事業者の発展を促す」と発言した。こうしたキャリアの方針は、日本も同じだ。
ドコモの代表取締役社長 加藤薫氏は、同社が締結したGEとの提携を例に出しながら、注力分野としてIoTやM2Mを挙げている。
ドコモとGEは、「工業機械に取り付けられたセンサーをドコモが集め、GEのクラウドにためて、そのデータに基づき、さまざまな予測や診断を行う」(加藤氏)という役割分担になる見込みだ。
こうした基調講演に加え、展示会場にもIoTの“具体例”が並べられていた。中でも展示に力を入れていたのが、韓国キャリアのSKテレコム。同社は「oneM2M」という携帯電話業界が主導するM2Mプラットフォームをベースにしたサービスを、すでに商用化している。
SKテレコムの展示会場には、スマホからコントロールできるエアコンやテレビ、家の鍵などが一堂に会しており、いずれも、韓国ではすでに発売されているもの。他社がプロトタイプや実験レベルの展示しかしていなかった中で、先進性を打ち出していた。
もっとも、IoTの分野では、標準をめぐり、さまざまな規格が立ち上がっている。
クアルコム主導の「AllSeen Alliance」や、アップルの「HomeKit」、グーグルの「Thread Group」など、各社が押すプラットフォームが乱立している状況だ。SKテレコムが存在感を発揮していたのは、キャリア主導のMWC上海という点を割り引いて見る必要はあるだろう。
一方で、SKテレコムは、すでに実現しているサービスに加え、通信の進化に伴うIoTの将来像も提示していた。
同社のブースには、「Oculus Rift」のようなヘッドセット型VRデバイスが置かれており、これを使ってゲームを楽しめるようになっていた。
これを何を示しているかというと、5Gの実力だ。5Gでは、通信速度が高速化することに加え、遅延も従来のLTEやLTE Advancedよりさらに短くなる。
現在、スペックは策定中だが、1ms以下をターゲットにすると言われている。つまり、5Gのスペックがあれば、3Dの映像を遅延なく目の前に送ることができ、ユーザーの反応をダイレクトにネットワーク側に伝えられるというわけだ。
同様のコンセプトは、3月に開催されたMWCでも、エリクソンなどの通信機器ベンダーが提示していた。5Gに先駆け、4GとなるLTE Advancedでも、制御信号を削減し、接続の安定性を高める規格がNECによって開発されており、標準化機関の3gppによって採用されている。
現状では、IoTで想定されている通信方式はWi-FiやBluetoothが主になる。一方で、LTE Advancedやその先の5Gが本格化すれば、セルラー網を活用した製品がもっと増える可能性はある。こうしたインフラの方向性をつかめるのが、MWCやMWC上海の醍醐味と言えるだろう。
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