IoTのデータ通信で、低消費電力、長距離通信が可能なLPWA(Low Power Wide Area Network)が話題だが、その中でもLoRaWANは、誰でもプライベートなネットワーク網を構築することができるということで、様々な分野での利用が期待されている。
今回、ソラコムが行った、LoRaWAN Conference2017では、これまでセルラー通信で培われた様々な技術が、LoRaWANでも利用可能となった。
SORACOM Air for LoRaWANという名称で、今後はSORACOMのコンソールからコントロールすることができるということだ。もちろん、これまでのSORACOMサービスと同じく、APIも提供されているのでプログラムなどで制御することも可能となる。
さらに、LoRaゲートウェイとして、LoRa インドア・ゲートウェイ(屋内で使うゲートウェイ)も発表された。デバイス側もLoRa Arudino開発シールドも発表し、どちらもSORACOMのコンソールから購入が可能ということだ。
所有モデルと共有モデル、2つのサービスモデル
LoRaWANで通信を行うには、ゲートウェイとLoRaが搭載されたデバイスが必要になるのだが、今回の発表では「所有モデル」と呼ばれる、タイプと「共有モデル」と言われるタイプの2タイプがあるという。「所有モデル」は、ゲートウェイを購入しデバイスを登録することで、自分だけのネットワークを構築することができるのだ。また、「共有モデル」では、ゲートウェイの持ち主がソラコムとなり、利用者は共有ゲートウェイを使ってLoRaWANの通信をすることになるのだ。
例えば、個人で活動をしているエンジニアや、小規模事業者がお試しでLoRaWANをつかったネットワークを考えた時、ゲートウェイを自前で購入しなくても近くのゲートウェイをセルラーでいう基地局のような位置付けにして利用することができるのだ。
ビル一棟くらいであれば、LoRaWANのネットワークはすべてのフロアで使える可能性があり、その場合ビル内に何個もゲートウェイを置かなくても1つだけ置いて、ビルに入居する企業が共有して利用するという利用シーンも考えられるのだ。
ゲートウェイ、3つのモード
また、このゲートウェイには3つのモードが用意されている。「プライベート・モード」「シェアード・モード」「パブリック・モード」だ。
「プライベート・モード」では自分が登録したデバイスのみが通信可能となる。「所有モデル」でゲートウェイを利用する場合、初期設定では「プライベート・モード」になっているということだ。
また、「シェアード・モード」にすると、他者のデバイスであっても登録をすれば通信が可能になる。都内に密集する飲食チェーンでネットワークを組んだ時、直営店は「プライベート・モード」だが、フランチャイズ店は「シェアード・モード」にすることでネットワークに参加できるというイメージだ。
最後の「パブリック・モード」はその名の通り、誰でも通信が可能となる。自社におかれたゲートウェイを他者にも開放しても良い場合は、これを設定すれば良い。また、ソラコムがサービスを提供する「共有モデル」の場合は、当然「パブリック・モード」となっているのだ。
デバイス設定時にゲートウェイも選択可能に
ゲートウェイに3つのモードがあるのは理解できたと思うが、例えば個人でデバイスを開発していて、「パブリックモード」のゲートウェイに接続したい場合などはどうしたらよいのだろうか。
SORACOMのコンソールではデバイスを登録する画面があり、そこで指定すればよいのだ。
具体的には、まずデバイスのコンフィグ・グループを作り、そのグループに対してモード設定をする。プライベート・モードの場合やシェアー・モードの場合は、特定のゲートウェイへのアクセスも許可する設定をするだけでとても簡単だ。
上がってきたデータの格納方法
LoRaWANを活用してクラウドに上がってきたデータは、どのように料理すれば良いのだろうか。
特定のサーバに飛ばしたい、あるいは、Amazon AWSやMS Azure上のデータベースに格納したいというニーズは多いと思うが、セルラー型のSORACOM Airではすでに
- SORACOM Beam
- SORACOM Funnel
- SORACOM Harvest
が準備されている。Beamは特定のサーバへの遷移を助け、FunnelはAWSやAzureなどの特定のサービスへのダイレクトなデータ格納を可能とし、HarvestはSORACOMのデータベースに格納されSORACOMの管理画面で簡単に可視化ができるというサービスだ。
これが、LoRaに関しても提供されるため、LoRaデバイスと、ゲートウェイがあれば、LoRaで取得したデータはゲートウェイ、LoRaサーバを経由して、自分のデータサーバまでほぼダイレクトにデータ取得が実現できるのだ。
しかも、お分りいただけるように、設定をする程度の作業ですべて実現可能なところも驚きだ。
通信状態の把握が可能
世界基準でのLoRaWAN仕様では、上りの通信は定義されているが、下りの通信に関する定義がない。そこで、日本仕様では下りも定義することで、データがサーバに正しく送信されたことをデバイスに伝えることが可能となるということだ。
デバイスからデータをとっても、上りだけだとデータが上がったかどうかはサーバ上にデータが格納された状態を確認しないとわからない。
一方で、下りで帰ってきた正常終了の信号をデバイスで受け取り、例えばLEDランプなどを点灯すれば、デバイスを見ていればデータが正しくサーバに上がったかどうかはわかるということだ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。