日本電気株式会社(以下、NEC)は、株式会社NTTドコモと共同で、次世代無線通信網「5G」の実現に向けて、5Gの要素技術であるMassive MIMO(Multiple Input Multiple Output)の検証実験を神奈川県横須賀市および東京都渋谷区で実施した。同実験では、NECが開発した低SHF帯(注1)超多素子AAS(Active Antenna System)を使用している。
通常、近接する複数の端末と基地局が同時に通信するために、それぞれの端末に対して信号(ビーム)を形成すると、互いの信号が干渉し合い通信品質が低下する。また、柱やビルなどの障害物によって発生する信号の反射、回り込みなど、直接波以外の信号 (マルチパス) を活用して大容量化することは困難だった。
今回の実験は、ビルや電柱・車や人が混在する屋外や、柱や壁など障害物が多い屋内において、NECの低SHF帯超多素子AASを基地局に適用して行われた。
NECのAASは、ビーム形成の精度向上を実現するフルデジタルビームフォーミング制御を採用している。対象端末に対してのビームを形成するとともに、マルチパスを利用して干渉する信号を打ち消すビームを形成できる。また、自信号のマルチパスを効率よく直接波と合成することで通信品質を向上させるビームを形成することもできるという。
これらにより、複数の端末が近接している場合でも、高い通信品質を維持したまま同時に複数の端末との通信を可能とし、大容量化や通信品質の向上を確認。また屋内では、LTEと比較して約8倍の周波数利用効率を安定して実現できることも確認された。(注2)
NECは、5Gを実現する超多素子AASとその制御技術などの研究開発を行っている。高い周波数帯の中でも、特に低SHF帯は2020年頃の商用化が見込まれているため、早期実用化に向けて積極的に取り組んでいる。今後もNTTドコモをはじめとした通信事業者との共同実験を進め、5G実用化に貢献していくという。
この発表には、総務省の委託研究「第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発~高周波数帯・広帯域超多素子アンテナによる高速・低消費電力無線アクセス技術の研究開発~」プロジェクトの成果の一部が含まれている。
(注1)Super High Frequency Band: 3GHz~30GHzの周波数帯。マイクロ波の一種で、波長は1cm~10cm。低SHF帯は、3GHz~6GHzの周波数帯
(注2)LTEの2並列伝送との比較。2017年2月20日、NEC調べ
【関連リンク】
・日本電気(NEC)
・NTTドコモ(NTT docomo)
・総務省(MIC)
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