静岡県藤枝市とソフトバンク株式会社は、2016年6月1日付で両者が締結した包括連携協定に基づき、LPWAネットワークを活用したIoTプラットフォームを構築し、それを利用した実証実験を2017年8月から実施する。
そのIoTプラットフォームを利用して実証実験を行うサービス事業者の募集を、藤枝市が2017年4月10日から開始し、説明会が行われた。
藤枝市の概要
藤枝市 企画創生部 ICT推進室 係長 齋藤栄一郎氏より、藤枝市の概要の発表があった。
藤枝市は、静岡県のほぼ中央に位置し静岡市に隣接。人口146,700人である。藤枝市は、サッカー、お茶、蔵元、居酒屋、スイーツ、朝ラーメンなどが有名だ。
日本全体では人口が減少しているが、藤枝市は2010~2015年の5年間で1,500人増加しており、静岡県内の市で増加数1位、5年連続転入超過県内1位となっているという。しかし、進学により転出した若者のUターン少ない。特に女性は30%。そこで創生総合戦略として、「子どもの未来を作る」「産業を育て仕事を創る」ことを掲げている。
その戦略の一環として、ソフトバンクとの包括連携では、「ICT・ロボットを中心にした教育の推進」「健康推進のまちづくり」「環境に貢献するまちづくり」「危機管理の強化」を行っている。
また、平成29年3月30日には、ICTの効果的な活用による地域産業活性化、相互の成長・発展を目的とした藤枝ICTコンソーシアムが設立された。参加団体は、約70法人・団体で、ソフトバンク(株)、ITbook㈱、㈱静岡銀行、中部電力㈱、 ㈱村上開明堂、 ㈱TOKAIコミュニケーションズ、スター精密㈱、㈱アウトソーシングテクノロジー、セキスイハイム㈱、静岡大学、静岡産業大学、藤枝商工会議所、藤枝市、静岡県 などがある。
ICTで人の流れを呼び込むまちづくりとして、①次世代人材育成 ②地元産業の成長支援 ③働き方改革 を掲げている。その中の、地元産業の成長支援として、IoTの先導的導入を実施するという(詳細下記図)。
そして今回、ソフトバンクとの共同実証実験として、IoTプラットフォームを構築する。藤枝市内を広域にカバーするLoRaネットワーク、LoRa以外もマルチカバーが可能なIoTプラットフォームで、8月のローンチを予定しているという。
藤枝市LoRaWAN 技術情報
次に、ソフトバンク株式会社 IoT事業推進本部 技術デザイン統括部 IoTプラットフォーム部 IoTエコシステム課 浅川 拓輝氏より、藤枝市LoRaWAN 技術情報について発表があった。
LoRaWANは、定期的に観測するセンサーを大量に使用して、1回の送信データが数十バイトの小さなデータを集め、必要に応じて分析し、可視化するサービスに向いている。
ソフトバンクは、LoRaWANネットワークエリアとして、市街地・小学校を中心に藤枝市広域、屋外エリアをカバーする予定だという。屋内や地下などには対応していない。
システム全体像としては、藤枝市内LoRaWAN圏内のデバイスからデータを送信し、市内に設置されたゲートウェイを通ってSoftBankのLTE回線を使い、IoTプラットフォームにデータが蓄積される。APIを通じてサービス事業者の可視化アプリケーションなどと連携をする。
LoRaとLoRaWANの違い
LoRaとLoRaWANは違う。
LoRaは、通信方式を表す。センサーデバイスとゲートウェイの間はLaRaという通信方式でデータのやりとりをする。スマホとルーターの間のWi-Fiをイメージするとわかりやすい。
LoRaWANは、ネットワークエリアだ。LoRaWANのWANは、Wide Area Network(ワイドエリアネットワーク)の略称である。
LoRaWANの飛距離
ソフトバンク実施の試験結果によると、基地局からの距離が市街地では約500m~1km、郊外では約1km~2.5km離れたところまで通信が可能だという。
実証実験イメージ
実証実験のイメージとしては、例えば、温度計、湿度計、PM2.5、ドア開閉、人感、照度などの、想定データサイズが1バイトほどのデータを集めるために、市街地の複数の駐車場や駅周辺複数ビル、郊外の複数の畑、幹線道路沿い、小学校の通学路、交番、消防署、病院などにセンサーを設置する。
それらの収集したデータを駐車場の空き管理、畑の温湿度把握、天候把握、統計、ごみ管理、人の移動の可視化のためにアプリケーションにすることが考えられる。
実証実験を行うサービス事業者は、LoRaモジュールが組み込まれたセンサーデバイスを用意し、可視化の際にはアプリケーションを作る必要がある。
ソフトバンクLoRaWANに接続実績のあるセンサーデバイスや、LoRaモジュール、開発ボードを知りたい場合や、センサーデバイスの開発方法、実績のないLoRaモジュールを使用したい場合は、ソフトバンクに相談に乗ってもらうことができる。
SoftBank IoT プラットフォームの特徴
現在開発中とのことだが、以下のようなIoTプラットフォームを目指しているという。
1. 各種センサーデバイスのデータフォーマットに柔軟に対応
2. 通信プロトコルを意識せずにデバイスからのデータ収集が可能
3. 収集したデータはREST APIで取得が可能
4. IoT プラットフォームはソフトバンク管理の高セキュリティ環境で運用
API種別の種別としては、下記4つを検討している。
・データ取得、更新通知(2017年6月から提供予定)
・デバイス/ユーザ管理(2017年8月から提供予定)
また、デバイスからアプリケーションサーバーまでEnd to Endのセキュリティも提供される。LoRaは仕様の中に暗号化の仕組みが定義されているため、ソフトバンクLoRaWANも準拠しており、暗号化をサポートしている。
ゲートウェイからIoTプラットフォームまでは、ソフトバンクのキャリアグレードのセキュリティを確保できる通信となっているという。IoTプラットフォームはソフトバンクのセキュアな環境にデータが保存される。
【関連リンク】
IoT(LPWA)プラットフォームを活用した実証実験(一般公募型)
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