京都大学、5Gシステム向け新通信方式UTW-OFDMの実証実験に成功

京都大学 大学院情報学研究科の水谷 圭一 助教、松村 武 特定准教授、原田 博司 教授らの研究グループは第5世代移動体通信(5G)システム向けの新しい通信方式である、UTW-OFDM方式(※1)の実証実験に成功した。

現在、端末数の激増ならび超高速のデータから超多数の低速伝送のセンサーまで多様化する無線通信のトラフィックを収容するために、第5世代移動通信システム (5G) の研究開発が国際的に進められている。しかし、移動通信に適した周波数は現在逼迫しており、限りある周波数資源を有効利用するためには、現在利用可能な第4世代移動通信システムLTE/LTE-Advancedとも互換性があり、さらに周波数の高密度配置が可能な通信方式の開発が急務となっている。

このような背景の下、同研究グループが5Gシステム向けの新しい通信方式として開発したのがUTW-OFDM方式。計算量の少ない「時間軸窓処理(※2)」を用いることにより、現行の4Gシステムで採用されているCP-OFDM(Cyclic Prefix-OFDM)方式(※3)と比べ、帯域外不要輻射を1000分の1以下に削減することが可能な方式として注目を集めている。しかし、この方式をリアルタイムで動作させる実システムの構築ができておらず、その実現可能性について更なる研究開発が必要になっていた。

今回、現行LTE/LTE-Advancedシステムに対応したリアルタイム波形整形処理装置を開発し、実際のLTEシステムにおける送信信号のUTW-OFDM方式化に成功。さらにUTW-OFDM方式を導入したLTEシステムの評価を実施し、従来のLTEシステムのスループット(通信速度)を劣化させることなく、帯域外不要輻射を約20 dB(約100倍)抑圧することに成功したという。

同実証実験により、現行の4GシステムLTE/LTE-Advancedで問題となる帯域外輻射(※4)を、簡単な信号処理の追加のみで大幅に抑圧できることが実証され、移動通信に適した周波数(6 GHz以下)において、これまで以上に高密度な周波数利用や、5Gが目指す超多数端末の同時接続やチャネルあたりの通信速度の向上が期待できるという。また、UTW-OFDM方式は簡単な信号処理の追加のみで実現可能なため、現行の4Gシステムから5Gシステムへのスムーズな移行も期待できるとしている。

※1: Universal Time-domain Windowed Orthogonal Frequency Division Multiplexing(ユニバーサル時間軸窓直交周波数分割多重)方式。従来のCP-OFDM方式において、帯域の利用効率劣化につながる帯域外不要輻射の発生原因である、隣接シンボル間の不連続性を長大な時間軸窓で波形整形することで、強力に抑圧する方式。フィルタを用いた抑圧手法は畳み込み処理が必要になるが、UTW-OFDM方式では乗算処理のみで実現できるため、計算量が非常に小さい。また、受信側は従来のCP-PFDM方式のアーキテクチャがそのまま利用可能なため、従来システムとの親和性が非常に高い。
※2: 現行CP-OFDM方式において高い帯域外輻射を発生させる原因となる、隣接シンボル間の不連続性を平滑化する処理。フィルタの畳込処理と違い、乗算器1つで実現できるため非常に小さい計算量で実現できる。
注3: Cyclic Prefix Orthogonal Frequency Division Multiplexing(サイクリックプレフィックス直交周波数分割多重)方式。マルチキャリア伝送方式の一つで、マルチパスフェージングに対する耐性があり、現行の4Gシステム(LTE_LTE-Advanced)のダウンリンク、無線LANシステムなどに採用されている。
※4: 無線周波数の利用効率劣化の要因となる割り当てチャネル帯域外への漏洩電力。

【関連リンク】
京都大学大学院情報学研究科(Graduate School of Informatics Kyoto University)

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