NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、2017年7月よりeSIM(※1)の実証実験を開始した。SIMカードの通信プロファイル(携帯電話事業者、電話番号、契約内容などの情報)を遠隔から書き換えられる環境(※2)を香港のモバイル通信基盤上に構築し、IoTにおける活用やコンシューマー(一般消費者)の利用を想定した実証実験を、日本および香港で行う。なお、今回はGSMAの規格に準拠したeSIMの実証実験となる。
現在、一般的に使われているSIMカードは、あらかじめ通信プロファイルが設定されており、出荷後に内容を書き換えることはできないと言われている。しかしeSIMは、SIMカードを挿し替えることなく、遠隔から最適な通信プロファイルを設定できるため、例えばビジネスに以下のような効果をもたらすという。
- 海外において、現地通信事業者の安価な回線を利用することにより通信コストを最適化
- 製品にあらかじめeSIMを組み込むことで、出荷する国や地域、用途によらず製品仕様を共通にすることができ、在庫管理の効率化が可能
- 海外において、ローミングが禁止されている場合でも現地通信事業者と契約して通信することが可能
NTT Comは、同社が香港で提供しているモバイル通信基盤をベースに、遠隔SIMプロビジョニングが可能な環境を構築した。同環境の下で、日本および香港にあるeSIMを挿入した端末を用いて実験が行われる。なお、同環境はGSMAに準拠した(1)「M2Mモデル」と(2)「コンシューマーモデル」の両モデルに対応しており、日本、香港をはじめ米国など約40カ国・地域で通信が可能だという。
- 「M2Mモデル」の実証実験
あらかじめeSIMを組み込んだデバイスに対し、SIMを管理するサブスクリプションマネージャーから通信プロファイルの書き換えを指示する。無線通信を使って遠隔で通信プロファイルをダウンロードさせるほか、通信プロファイルの切り替え、無効化、有効化、削除といったオペレーションを行う。例えば、グローバルで利用するIoT機器にeSIMを組み込み、海外に出荷した後に遠隔で通信を有効化し、さらに運用中に通信プロファイルを切り替えることなどを想定してビジネスプロセスが問題なく実施できるかどうかの確認を行う。 - 「コンシューマーモデル」の実証実験
eSIMを組み込んだデバイスから通信キャリア・プランを選択し、通信プロファイルをダウンロードして通信を有効化するオペレーションを検証する。例えば、スマートウォッチやモバイルパソコンなどのデバイスにeSIMを組み込み、エンドユーザーが任意のタイミングで通信キャリアと契約して利用開始することを想定したプロセスの確認を行う。
また、NTT ComはeSIMと組み合わせることができる埋め込み技術(例えばSIMを挿すだけでセキュアな通信を実現する技術)を有するパートナーとの共同実験も実施していく意向だ。
※1 embedded SIMの略。遠隔で通信プロファイルを書換えすることができるSIMのこと
※2 いわゆる遠隔SIMプロビジョニング(RSP:Remote SIM Provisioning)が行える環境
【関連リンク】
・NTTコミュニケーションズ(NTT Communications)
無料メルマガ会員に登録しませんか?

技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。