パナソニック株式会社と同社の社内カンパニーであるオートモーティブ&インダストリアルシステムズは、周囲にある物体までの距離と方向を正確に計測できる三次元距離センサ3D LiDAR(ライダー、※1)を開発した。2018年1月よりサンプル出荷予定だ。
3D LiDARは、特に垂直方向の計測範囲が広く、自律移動ロボットに適用した場合に路面上の障害物や路面の凹凸状態の正確な検知が可能だ。加えて、スキャン範囲や解像度を可変できるため、利用シーンに適した計測を実現、人が行き交う施設内や屋外を走行する自律移動ロボットの普及加速に貢献できるという。
同社が開発した3D LiDARの特長をまとめると以下の3点となる。
- 広範囲の三次元距離計測を実現(垂直方向60度、水平方向270度)
- 垂直方向のスキャン範囲、解像度の任意設定が可能
- 日照環境下でも高精度な計測が可能
自律移動ロボット(自動搬送機、宅配ロボットなど)やフォークリフト、農業機械、建設機械、セキュリティシステムなどへの活用が期待される。
<詳細>
1. 広範囲の三次元距離計測を実現(垂直方向60度、水平方向270度)
従来の車載用途で使用される「3D LiDAR」は、広範囲かつ路面状況を検知したいという産業用途での要望に対し、単一センサでは対応できなかった。
そこで同社は、光ディスクドライブ事業で培われた光学設計技術とモータ制御技術の活用により、独自構造を用いたレーザスキャン技術を開発し、垂直方向60度、水平方向270度の広角スキャンを実現した。
これにより、単一センサによる広範囲な三次元距離計測を可能とし、他センサと組み合わせることなく、自律移動ロボットの走行制御システムの構成を単純にすることが可能になるという。

2. 垂直方向のスキャン範囲、解像度の任意設定が可能
自律移動ロボットでは、走行場所など環境によって障害物検知が必要な範囲が変化する。例えば、路面の凹凸がなく、障害物が現れる頻度が少ない場所での走行では、路面状況を詳細に検知する必要はなく、狭い範囲をロボットの走行速度に合わせて速くスキャンすることが必要だ。
一方、人が行き交うような場所での走行では、路面からロボットの高さ相当までの広範囲の状況把握が求められる。さらに、障害物を検知した場合には、障害物の詳細な形状把握が必要となる場合もある。
同開発品は、独自構造を用いたレーザスキャン技術により、垂直方向のスキャン範囲と解像度を数種類のモードから設定できる。これにより、利用シーンに適したスキャン範囲や解像度で距離計測が可能となった。

3. 日照環境下でも高精度な計測が可能
ロボットを屋外で使用する場合、日照環境下でも使用できることが求められる。同開発品は、出射レーザ光と物体で反射して戻ってくる光の光路を同一になるように設計することで、太陽光によるノイズ発生を低減した。
これにより、真夏の炎天下相当である100,000ルクス(※2)の照度下においても高精度な計測が可能だ。

【同開発品の仕様】
項目 | 特性 |
スキャン範囲 | 水平270度、垂直0度 ~ 60度(可変) |
垂直解像度 | 1.5度/3.0度/7.5度の3種類から選択可能 |
検出距離範囲 | 0.5 m ~ 50 m |
フレームレート | 5 fps ~ 25 fps |
周囲照度 | ~ 100,000ルクス(太陽光下) |
外形寸法 | 高さ130 mm × 幅120 mm × 奥行き140 mm |
※1 LiDAR (Light Detection and Ranging):パルス状に発光するレーザ光を対象物に照射し、反射した散乱光が戻ってくるまでの時間から距離を計測するセンサ
※2 ルクス:光源から発した光が照射対象に当たった明るさを数値化したもので、いわゆる照度の基本単位
【関連リンク】
・パナソニック(Panasonic)
・パナソニック オートモーティブ & インダストリアルシステムズ(Automotive & Industrial Systems)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。