低消費電力無線ソリューションのプロバイダーであるNordic Semiconductorは、nRF52シリーズの新製品としてメモリ最適化されたnRF52810 Bluetooth Low Energy(Bluetooth LE) System-on-Chip(SoC)の量産・提供を開始すると発表した。
これにより、nRF52832(nRF52810とピン互換)とハイエンドのnRF52840 SoCを含む、同社のnRF52シリーズにはすべての用途に対応した製品が揃うことになる。
また、同社はnRF52810 SoCの量産開始に合わせ、Nordic S112 SoftDevice(Nordicの最新のRF Bluetooth 5(Bluetooth LE)プロトコルソフトウェア(スタック))、新バージョンのNordic nRF5 Software Development
Kit(SDK)も発表した。
nRF52810 SoCは、nRF52シリーズのアーキテクチャをベースとし、消費電力をnRF52シリーズとしては最小に抑えるとともに、Bluetooth5の2Mbpsスループット、コイグジステンスの改善、およびアドバタイジングエクステンションによるブロードキャスト容量拡大をコスト重視のマスマーケット向けアプリケーションにもたらす。
このnRF52810 SoCにも他のnRF52シリーズSoCで使用されている64MHz、32ビットのARM Cortex M4 MCUが採用され、LEセキュアコネクションや2Mbpsデータ処理などの機能に要求されるパフォーマンスを維持している。
また、nRF52810 SoCのFlashベースのソフトウェアアーキテクチャにより、無線(OTA)によるアプリケーションのアップグレードを従来はコスト面での制約のため不可能だった製品においても実現可能だという。
このSoCのターゲットとなるアプリケーションには、たとえばIoTを構成するネットワーク接続のセンサーやビーコン、ローコストのウェアラブル機器、コンピュータとタブレットのためのローコストのワイヤレスマウスやキーボード、使い捨ての医療用モニタリングデバイス、および高性能なMCUに付随する接続コントローラーなどがある。
S112 SoftDeviceはnRF52810 SoCが持つ196kB Flash/24kB RAMを補完するよう設計された軽量なスタックだ。S112 SoftDeviceは100kBしか占有せず、マスマーケット向けの幅広いBluetooth LEアプリケーションに十分な空きメモリを保証すると共に、OTAによるアプリケーションソフトウェアのアップグレードもサポートする。
nRF52810 SoCのパフォーマンスを最適化するためS112 SoftDeviceはデュアルペリフェラル/ブロードキャターのみのスタックとなっている。
しかし、2Mbpsのスループット、Privacy 1.2、LEセキュアコネクション、LE Ping;Long ATT MTU、Bluetoothメッシュや他の専用プロトコルの使用を可能にするTimeslot API、およびPA/LNAコントロール機能を含めたBluetooth 5/Bluetooth LEの機能は維持している。
同社は、SoCの量産と同時に開発ツールを提供するため、エンジニアは最新バージョンのnRF5 SDKを使用して、nRF52810 SoCとS112 SoftDeviceの開発/デザインをすぐに開始することができる。nRF5 SDK v14.1は量産に対応した開発ツールであり、nRF52810 SoCのペリフェラルドライバをすべてサポートしてる。
またnRF5 SDKにはIPv6 over Bluetooth LE adaptation layer(6LoWPAN)と完全なインターネットプロトコル(IP)スイートを含め、以前のIoT向けnRF5 SDKの機能が組み込まれている。
この機能によってnRF52810 SoC Bluetooth LEアプリケーションはIPv6をネイティブでサポートし、IPベースのネットワーク経由で接続されている「モノ」と直接通信することができる。
nRF5 SDKには組込み型アプリケーションの管理、構築、テスト、および展開を行うオールインワンソリューションであるSEGGER Microcontroller’s ‘Embedded Studio’ も含まれている。
nRF52810は基本的なBluetooth 5 SoCであり、より小さなメモリ割り当て、ペリフェラルセットもわずかに縮小されていることによって価格性能比を高めている。このペリフェラルセットにはADCとアナログコンパレータ、PDMデジタルマイク入力(x1)、4チャンネルPWM(x1)、SPI(x1)、I2C(x1)、UART(x1)、およびQuadrature Decoder(x1)が含まれている。
このSoCにはARM M4 MCUが内蔵され、他のnRF52シリーズのSoCに使用されている組み込み型プロセッサと同様な計算パフォーマンスとDSP機能を実現している。
nRF52810 SoCにはnRF52832 SoCと同じ100dBmリンクバジェットの2.4GHzマルチプロトコル無線(Bluetooth 5/ANT/2.4 GHz独自仕様)が搭載され、同様のRFパフォーマンスを実現しながら消費電流は0dBmのTxと1MbpsのRxでそれぞれ4.6mAに削減されている。
無線出力は最大+4dBmまでブースト可能。パッケージは6x6mm QFN32と5x5mm QFN16の2種類があり、2.5×2.5mm WLCSPも近々に提供開始予定だ。
Bluetooth 5が従来の規格と比較した場合に持つ主な優位性には、Bluetooth 4.2と比較して2倍のオンエアのデータ帯域幅、およびアドバタイジングエクステンションによるブロードキャスト容量の8倍増がある。
後者はアドバタイジングパケットペイロードのサイズを251バイトに拡大することによって特にビーコンアプリケーションにおいてより効率的なデータ伝送に貢献する。
【関連リンク】
・Nordic Semiconductor
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。