NECは、第五世代移動通信(5G)向けミリ波無線ユニットの小型化を実現し、設置場所の自由度を向上させる低消費電力回路技術を開発したと発表した。
5Gでは、ミリ波の広帯域性を活かして最大数十Gbpsもの大容量通信の実現が期待されているが、無線回路の消費電力増加により、ユニット内の放熱機構の体積が大きくなり装置が大型化してしまうため、無線ユニットを設置する場所が限定されるという課題があった。
ミリ波:一般には30~300GHzの周波数帯の信号を指す。5Gでは28GHz帯も含めて活用を検討されている。
今回開発された低消費電力回路技術により、ミリ波無線ユニット全体の消費電力を低減することで、無線回路の放熱機構が小型化できるため、ミリ波無線ユニットの筐体を、LTEの無線ユニットと同サイズにまで小型化することができたという。
この結果、従来のビル屋上だけでなく、街路灯や電柱など、これまで設置が困難であった場所へのミリ波無線ユニットの設置が可能となり、高精細動画(4K, 8K)などのコンテンツにストレスなくアクセスできる高速モバイルネットワークの提供が期待される。
背景
昨今、著しいモバイルトラフィックの増加に伴い、現在の4Gモバイルネットワークに比べて大容量・超高速・超低遅延などが見込まれる5Gモバイルネットワークの早期実現が期待されている。
しかし、広帯域なミリ波を用いると無線回路の電力効率が低下して消費電力が増加し、回路より発生した熱を逃がす放熱機構が大きくなり、無線ユニットの体積が増大するため、無線ユニットの設置場所が限定される課題があった。
今回、NECが開発した低消費電力回路技術は、5Gで使用される大容量ミリ波通信の無線ユニットをLTEと同サイズにまで小型化し、無線ユニットをおける設置場所の自由度を高めるものだという。
技術の特徴
1. ミリ波の広帯域増幅器の消費電力を1/5に低減
増幅器を高効率で動作させると信号に歪が発生するため、歪成分を観測して補償する必要がある。
LTEの基本帯域20MHzの十倍以上となる数百MHzの広帯域を用いるミリ波通信では、歪成分の観測に必要な帯域が現行のデバイスで観測できる帯域より広いため、歪成分全体を直接観測することは困難だが、NECは今回、受信帯域内の歪成分から受信帯域外の歪成分を推定して補償する技術を開発した。
これにより、信号の歪を抑えつつ増幅器を高効率で動作できるため、少ない消費電力で信号品質が確保可能となり、増幅器の消費電力を約1/5に低減することに成功したという。
2. 広帯域増幅器を除くアナログ無線回路の消費電力を1/2に低減
ミリ波無線ユニットでは、アナログ無線回路とデジタル演算回路を接続する信号変換回路の消費電力が大きくなる。
今回、デジタル信号をアナログ信号に変換する回路を不要にする「1ビットデジタル送信機」をミリ波の広帯域に適用し、増幅器を除いたアナログ無線回路の消費電力を、市販のアナログ変換回路に比べて約1/2に低減することに成功したという。
1ビットデジタル送信機:DSP/FPGA内で処理されたデジタル変調信号を、1ビットのデジタル信号系列に変換する送信機。1ビットのデジタル信号は、無線ユニット内部で、アナログ信号として扱うことができる。
【関連リンク】
・日本電気(NEC)
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