富士通研、「顧客の重要な業務を停止させない」クラウド運用技術を開発

株式会社富士通研究所はこのほど、メンテナンスが原因で顧客の業務を遅延・停止させることなく、安心して使えるクラウドを実現するためのクラウド運用技術を開発したと発表した。

クラウド事業者がメンテナンスを行う場合、顧客が利用している仮想マシンを別のサーバに退避させるなどの対応の必要があるが、それが原因で顧客の業務が止まったり速度が低下したりするなどの影響が出ることがあった。そのため、ミッションクリティカルな業務にクラウドを利用しにくい問題があった。

今回、仮想マシンの負荷パターンと、機械学習によって算出したメンテナンスによる顧客業務への影響度合いを予測し、業務影響を避けつつ、メンテナンスを行う計画を短い時間で自動作成する技術を開発した。

同技術により、顧客の重要な業務を停止・遅延させないクラウド運用を実現し、より安定稼働が必要な業務を行う顧客のクラウド利用を支援する。今後、富士通株式会社が提供するクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」の運用を支える機能として2018年度中のサービス化を目指す。

開発の背景

近年、クラウドの普及にともない、基幹処理などミッションクリティカルな業務を、クラウドに移行するニーズが高まっている。しかし、パブリッククラウドでは、顧客の都合によらずにメンテナンスが行われる場合があり、顧客によっては業務に遅延などの影響が出る可能性がある。

顧客が重要な業務に安心して使えるクラウドを実現するためには、メンテナンス時にも安定稼働するクラウド運用が求められている。

課題

パブリッククラウドでは、メンテナンスのために、仮想マシン(以下、VM)を一旦停止させて別のサーバで再起動することが必要で、業務も一時的に停止せざるをえなかった。

また、VMを停止させずに別のサーバに移動するライブマイグレーション(以下、LM)により、業務の停止を回避することもできるが、VMが高負荷のときには、一時的な性能低下や数秒間の停止などの業務への影響が発生することがあり、VMが低負荷のときにLMを行う必要があった。

ただし、多数のユーザーが利用するパブリッククラウドでは、VM間で都合のよいタイミングを調整することが困難だった。

開発した技術

今回、業務負荷予測と高速な組み合わせ最適化により、クラウド内すべてのサーバについて、顧客業務への影響が少ない時間帯でメンテナンスを行う計画を短時間に作成する技術を開発した。

同技術の特長は以下の通りだ。

1. メンテナンスによるお客様業務への影響が少ない時間帯を予測する技術

あらかじめ、顧客の業務が実行されるVMごとに、過去のメンテナンス時にLMにかかった時間とその時のVMの負荷の関係を機械学習によりLM所要時間の予測モデルを作成し、この予測モデルにもとづいて、メモリ使用量や通信量など外部から観測可能なデータによって推定したVMの負荷から、VMごとにLM所要時間を算出することで、メンテナンスを行った場合のLMによる業務への影響を少なく抑えられる時間帯を分単位で予測する。

富士通研、「顧客の重要な業務を停止させない」クラウド運用技術を開発

2. メンテナンスを短時間で完了する計画を作成する技術

業務への影響の少なさとVMごとのメンテナンス完了期限を両立し、かつ、なるべく短期間でクラウド全体のメンテナンスが完了する計画を、大量の組み合わせの中から効率的に算出する技術を開発。

同技術では、サーバとVMの構成情報や、メンテナンス可能な条件などのクラウド運用特有の制約を用いることで、短時間で最適な解を算出するという。

効果

今回、商用クラウドの約5,000VM分の稼働データで、各VMは全体の8割の時間でCPU負荷が90%以上、残り2割の時間は負荷が低いという条件でのシミュレーションの結果、従来技術では、延べ425VMで業務の負荷が高い時にメンテナンスが実行されたのに対して、同技術ではすべてのVMについて業務の負荷が高い時期を避けてメンテナンスが実行されることを確認した。

今後

今回開発した技術を活用することで、クラウドのメンテナンスによる顧客業務への影響を少なくすることができるため、これまでクラウド利用が難しかった、より安定稼働が必要な業務を行う顧客のクラウド利用を支援する。今後、富士通株式会社が提供するクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」の運用を支える機能として2018年度中のサービス化を目指すとしている。

【関連リンク】
富士通研究所(FUJITSU LABORATORIES)

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