LINE APIを連携させることで、LINEユーザーとカジュアルにつながり新たな体験が生まれる ーLINE 比企宏之氏インタビュー

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LINE株式会社は、「LINE API Use Case」というサイトを2020年12月9日に公開した。

参考:LINE、APIに関する技術情報やデモアプリ等を紹介する専用サイト「LINE API Use Case」を公開

同サイトは、LINE APIを活用した様々なビジネスモデルにおけるユースケースとクライアント事例を紹介しており、各APIの挙動を体験しながら実際の活用例を参考にすることができるものだ。

同サイトの公開に至る背景とLINEが目指す世界観に関して、LINEでTechnical Evangelismチームマネージャーを務める比企宏之氏にお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

カジュアルにつながるという世界観

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): まず、同サイトを公開することになった背景を教えてください。

LINE 比企宏之氏(以下、比企): 私が所属するTechnical Evangelismチームでは、デベロッパーリレーションズという観点で、デベロッパーの方々にLINE APIの情報をリーチするということをメインに活動しています。

これまでは、コミュニティ活動を進めていて、1年半で4000名ほどのメンバーが集まり、直近で開催されたコミュニティのカンファレンスである「LPF REV UP 2020」では、休日開催にも関わらず551名の方にオンラインでご参加いただきました。

こうしたコミュニティでの議論を深めるには、共感する事例が多く必要になります。

LINEには様々なAPIがあり、それぞれのAPIを組み合わせて使うことで、様々な課題を解決できるようになっています。しかし、その情報をこれまではなかなか伝えていくことがうまく出来ていませんでした。

これまでも、開発者向けのドキュメントを掲載している「LINE Developers」というサイトや、LINEの法人向けサービスの活用事例などを掲載している「LINE for Business」というサイトを更新してきましたが、それぞれ特定の情報に特化したサイトになっていて、コンセプトと事例、開発のそれぞれに関係性がありませんでした。

そのため、実際にAPIを利用する企業の中でも、企画者と開発者で分断が起きてしまっていました。

しかし、LINEのそれぞれのサービスの営業担当が、短い説明の中で他のAPIの説明まで行なってしまうと、議論が発散してしまい問題が解決できなくなってしまいます。

我々としては、LINEをカジュアルに使ってもらうためにはどうしたら良いかということを考えています。今回の「LINE API Use Case」というサイトもその取組の1つです。

LINE APIを利用することで広がる可能性

小泉: 実際にLINE APIを組み合わせて利用することでどのようなことが出来るのでしょうか。

比企: LINEアプリ自体は8600万のMAU(Monthly Active User:月間利用者数、2020年9月時点)があります。これらのユーザーは、すでにLINEアプリをダウンロードし利用している人たちなので、新たにアプリをダウンロードさせなくてもサービスの利用を促すことが出来ます。ユーザーから見ると1アプリのように思われるかもしれませんが、そのアプリの中で様々なサービスをすることが出来ます。

また、各企業がネイティブアプリを作ろうと思うと、1つの機能だけのアプリを作ることはなかなか出来ません。会員証のアプリでも、会員証の機能だけではなく様々な機能を追加したくなります。しかし、たとえば「LINEミニアプリ」であれば会員証だけの機能でも成立しますし、裏側のシステムとも連携することが出来ます。

更に、ネイティブアプリだと、端末を変えたときには古い端末の情報が引き継がれないことがあります。LINE上でサービスを行う場合は、LINEの情報を引き継ぐことができれば新しい端末でもそのままサービスを利用することが出来ます。

LINE上でサービスを展開するというと、広告などのイメージを持たれることが多く、各企業で自由に出来ないのではないかと思われることがあります。しかし実際は、UIなどのフロント側をLINEで作成し、バックエンドは自社のデータベースやAWS、Azureなどで作成することが可能です。

「LINE DX Program with AWS」などの各クラウドベンダーとの共同プログラムなどを行いながら、LINE API×クラウドの推進を強化しているところです。

東急株式会社はLINEのUXを使用しているが、バックエンドは自社のデータベースで一本化されている。
東急株式会社はLINEのUXを使用しているが、バックエンドは自社のデータベースで一本化されている。

東急株式会社と取り組んでいる事例では、LINEのUXが全面的に出ていますが、バックエンドは東急のデータベースで一本化されています。既存のポイントカードとLINEアカウントのID連携を行うことで、LINE Payの使用時だけでなく、東急グループ内での様々なタッチポイントの情報を活用する事により、東急グループとしての顧客体験価値を高める施策を打つための基盤づくりをお手伝いさせていただいています。

これまでは、テレビのような媒体や他のSNSがある中で、LINEも1つのチャネルというイメージだったかと思いますが、これからはLINEというプラットフォームをうまく活用してもらうという形になります。元々、メールマガジンなどと比べ、開封率が高いためリーチ率が高いという特徴を持つLINE公式アカウントですが、自社のLINE公式アカウントの中でアプリのような挙動が出来たり、利用者とコミュニケーションを図ったりすることが出来ます。

APIには無料のものと、有料のものがあります。ユーザーが能動的にする操作に対しては、ユーザー体験を損なうものではないという判断から無料で使用することが出来るようになっています。現在サイト上に公開されているAPIの中では、Messaging APIによって一方的にユーザーに対して通知を行う部分とLINE Payの決済部分が有料になっています。

PAL CLOSETのLINEミニアプリの画面イメージ。オフラインで顧客と繋がり、オンラインでコミュニケーションを取ることが出来る。
PAL CLOSETのLINEミニアプリの画面イメージ。オフラインで顧客と繋がり、オンラインでコミュニケーションを取ることが出来る。

3COINSなどを運営している株式会社パルでは、LINEミニアプリであれば「5秒で会員証が作れる」という訴求をしています。店頭にQRコードを設置し、カメラでそのQRコードを読み込みLINEログインで許諾すると、すぐに会員証のバーコードが出てきてポイントを貯めることが出来ます。

こうしたLINEミニアプリも無料で作成することが出来ます。この事例は、オフラインの接点でも顧客とつながることが出来ることを表しています。LINEが目指す「Life on LINE」の考えのもと、OMOの取り組みを進めています。

LINEでは、このような良いコンテンツがLINEのプラットフォーム上に載っていくことで、LINE自体も活性化していくと考えています。

「LINE API Use Case」の中身

LINE API Use Caseのトップ画面
LINE API UseCaseのトップ画面

小泉: 「LINE API Use Case」にはどのような情報が載っていますか。

比企: APIを組み合わせて活用しているユースケースや、それぞれのAPIに関する情報が載っています。技術的な詳しい情報は、「LINE Developers」というサイトに載っているので、ここでは各APIでどのような機能が実現できるのかということを記載しています。

ユースケースのページには、利用の流れやポイント、エンドユーザーとサービス提供者それぞれの視点でのメリットやプロダクト事例がまず書かれています。また、記載されているQRコードを読み込むとLINE上でデモを確認することが出来ます。

ここまでを見ていただくことで、技術にあまり詳しくない企画者の方でも、APIを活用するイメージが湧くと思います。

更にその下には、デモアプリケーションのシステム図やシーケンス図が書いてあったり、ユースケース内で使われているAPIへのリンクを記載していたりと、開発者の方向けの情報が載っています。今後は、サンプルソースコードをダウンロード出来るように準備しているところです。

APIの説明のページでは、イメージ図やデモを確認することが出来る。
APIの説明のページでは、イメージ図やデモを確認することが出来る。

各APIを説明しているページも基本的な構成は同じで、企画者と開発者のどちらもが理解できるようなページになっています。更に、イメージ図や開発者向けドキュメントへのリンクなども載っています。

小泉: どんなAPIがサイト上で公開されているのでしょうか。

比企: 現時点で「LINE API Use Case」に公開されているAPIは、

  • Messaging API
  • LINEログイン
  • LIFF/LINEミニアプリ
  • LINE Pay
  • LINE Social Plugins

の5つになります。今後、「CLOVA Chatbot」や「CLOVA OCR」なども追加で、公開していこうと考えています。

APIという切り口でだけ語ってしまうと、様々なプロダクトが1つのAPIの中に集約されてしまうこともあります。例えば、LINE Beaconという機能があります。この機能は、ビーコンの電波の受信圏にユーザーが入るとユーザーとコミュニケーションが取れるようなものですが、この機能は現在公開されているMassaging APIの中の1機能です。

しかし、LINE Beaconのような機能を使いたい方からすると、Massaging APIの1機能であることを知る必要は無いです。このように実際に事業者が使用するユースケースを基に、こんなことが出来ますということをサイトには公開していきたいと考えています。

小泉: サイトの情報を見ることで、LINEを通じてできることやLINEが描くイメージを理解することができそうです。本日は貴重なお話ありがとうございました。

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