DXの「D」は、「進化」と「発展」の二軸で捉えよう

DXについて話す時、最近よく話題となるのは、「X」の方、つまりトランスフォームする方が重要だということだ。

これは、「D」側、つまりデジタル側からみれば、最近登場したAIやxR、ドローン、3Dプリンターなど、さまざまな新しい技術が一定の認知を得て、次の局面に向かっている兆しであるとも言える。

剥き出しの技術では、「こういうことができそう」という話題が先行し、社会全体から見れば特殊な例が話題となり、我々の仕事や生活にも応用できるかのように感じるのだが、実際に利用しようとするとそうはいかないケースが多く存在する。

例えば、AIについて、犬と猫を識別できるモデルが発表された時、これからは人間の顔なども個別に認識できるようになるという想像が駆け巡ったわけだが、その後AIの進化を待たなければ単純に人の顔を高い精度で認識することはできない状態であった。

しかし、数年経って、現在では髪型を変えても、マスクをしていても人の顔を識別できるし、動画上で顔を動かし立体的に捉えることで顔認識の精度を向上させるようなことも可能となっている。

こういった進化は、単純な技術進化を待つだけでなく、社会からの要請を受けて課題を解決しようとするからこそ、起きる変化なのだとも言える。

さまざまな業種、業界で起きるDXの潮流と要素技術

こういった流れからか、2021年は、「こんな技術が登場した」というニュースだけでなく、「ある業界で、デジタルを活用することで、こんな変化が起きた」というニュースが多かった年だと言える。

2021年のニュースを大きく分類すると、

  • AIやxR、ブロックチェーン、ドローン、センサー、クラウドなどの純粋な技術の進化系ニュース
  • それらを核とし、新しくできるようになったことを伝えるニュース
  • 社会要望からくるデジタル活用を伝えるニュース

といった大きく3つがあるといえる。

この中では上の2つ、技術進化と、それに伴うニュースはわかりやすい。

AIやxR、ブロックチェーンやドローンといった、それぞれキーワードとしては存在し、これまでもその可能性が想像されていたが、それぞれが技術的に進化することで、想定された期待に応える解決策を提供することができるようになるというものだ。

冒頭の顔認識AIなどはその例とも言える。

一方で、2021年は、より具体的な社会にデジタル技術が入り込むが故の問題がたくさん顕在化した年だとも言える。

仮想通貨とブロックチェーン

例えば、昨今、デジタルキャッシュや仮想通貨が話題となっているが、その議論をする際に欠かせないのがブロックチェーン技術だ。

というのも、メタバース上で経済活動をしようとすると、デジタルのお金が必要になる。また、お金で購入する以上、その価値を何らかの形で固定できる必要があるからだ。

ブロックチェーンは、「デジタルデータの唯一性」を保証する機能がある。そこが当初注目を集めたきっかけとなっているのだ。

しかし、唯一性を保証できたとしても、保証した人なり組織に悪意があれば、ある一部の人の思惑で、その唯一性を否定することも可能になる。

つまり、あるデータの存在が何の権威にも頼らず、正当性が保障され、投入されたデータが正しい手続に基づいているということを証明できなければ成立しないとなるのだ。

これを実現するには、一つの要素技術の進化だけでなく、それを取り巻く周りのデジタル技術の発展も欠かせない。

他にもこういった状況が、いたるところで生まれてきている。

ドローンの無視界航行

ドローンは当初、有視界飛行で、しかも人による操作が必須であった。しかし、それでは実用化できない。本来的には、ドローンは自動航行するところに注目を集めたからだ。

そこで、無視界飛行でも自動航行ができるように、管制制御の仕組みを整え、法制度を整え、ようやく実用化に向けて一歩踏み出したような状態だ。

もちろん、ドローン単体の進化も必要で、状況を正確に捉えるセンシングや、風などの煽りをうけても姿勢を制御できるシステム、長距離航行できる仕組みなど、言い出すとキリがないくらいの課題があった。

しかし、こういった課題を一つ一つ解決し、少しずつ実用化に向かっている。

こういった、「トランスフォーム」すべき状態への必要な周辺技術の発展が、2022年以降も続き、徐々に我々のビジネスや社会のあり方を変えていくこととなりそうだ。

社会要望からくるデジタル化

先日の記事(2021年のDX的重要トレンド トップ3)でも述べた通り、昨今のデジタル活用は一企業のビジネスだけでなく、社会全体をトランスフォームし、問題解決を行う流れともなってきている。

例えば、「サステナビリティ」というキーワードは、COP26が開催され、ESG経営が注目を集めているというということもあり、どの企業も2022年は無視できない状況になると思われる。

その一方で、すべての企業活動において排出されるCO2の量を可視化し、改善状況を明確にするのは技術的には簡単ではない。

こういった具体的な社会問題をデジタル技術で解消しようと考えると、先ほど、仮想通貨やドローンの例で述べたように、いろんな壁にぶつかることになる。

しかし、2022年は、こういった壁を一つずつ打ち破っていき、社会問題を一つずつ解決していくことが必要になる年となるのだ。

DXでは、技術の「進化」と「発展」の二軸を分けて捉えよう

2022年明け1月には、ラスベガスとオンラインのハイブリッドでCESが開催される。

昨今、「目新しいものが見当たらない」という人をよく見かけるが、そういう人は、技術の「進化」と「発展」のトレンドを同一軸で見ているため、「全く新しい、想像が膨らむ技術進化が登場しないと、目新しいものがない」と考えがちなように感じる。

確かに技術の「進化」は面白い。基礎研究によって、今までできなかったことができるようになるきっかけが生まれる。こういったテクノロジーの進化はとても重要なことだ。

しかし、課題解決を具体的に行うための、進化を見せた技術の「発展」も、細かな変化と感じるかもしれないが、実はとても重要なのだ、ということにぜひ気づいていただきたい。

DXのトレンドとしても、2022年は、大味な進化した技術の話題ではなく、現場で使える技術への発展と事例に関する、情報収集や活用が求められる。

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