特集「DX KEYWORD TEST」では、DXで必須となるキーワードに関するテストを実施。
さらに、4枚の図を使って、サクッと解説します。今回のキーワードは「IoT」。全問正解目指してがんばってください!
解説編
ここからは、DX KEYWORD TESTの設問を図解していきます。
全部読んだら、再度問題にチャレンジしましょう!
「モノ」のインターネットとは?
IoT(アイオーティー)は、Internet of Thingsの略で「モノのインターネット」と訳されます。
モノのインターネットについて理解する前に、インターネットって何だっけ?ということを思い出してみましょう。
総務省によれば、コンピュータをケーブルなどでつなぎ、おたがいに情報をやりとりできるようにした仕組みをネットワークと言い、家、学校、オフィスなど様々な場所で作られている世界中のネットワーク同士をつながるようにした仕組みがインターネットであると説明されています。
「コンピュータをケーブルなどでつなぎ」とあるように、インターネット(ネットワーク)はコンピュータ同士をつなぐものだ、という前提があります。
しかし、IoTは「モノ」のインターネットと言われているように、コンピュータだけでなく「様々なモノがインターネットに接続すること」を指しています。
自動車、家電、ロボット、施設など、ありとあらゆるモノがインターネットにつながります。
ここでいうモノってどこまでを含めるんですか?と思われるかもしれませんが、定義はありませんし、また定義づける必要もありません。
というのも、勝手に視野を狭めて、コレはインターネットにつながっても意味がないよねと勝手に仕分けをしてしまうと、チャンスを見逃すことにも成りかねないからです。
もちろん、なんでもインターネットにつながればよい、という訳ではありません。先入観なく、インターネットにつながったらどうなるか?という視点を持つことが重要ということです。
さて、IoTは「様々なモノがインターネットに接続すること」であると理解したところで、今度は、なぜ近年になってIoTが注目され、普及してきているのかを簡単に説明します。理由は大きく2つです。
第1に、自然災害対策、インフラの老朽化に伴う安全・安心の確保、生産性向上といった社会的課題に対して、IoTで解決できるのではないか?と期待が持たれているという社会的的な要請などのニーズの側面。
第2に、センサーや機器に通信機能を持たせることができる通信モジュールの価格が安くなってきたり、処理能力が向上したりといった、素材や材料の進展が挙げられます。
まとめると、IoTというコンセプトが実現すれば、こんなことができるようになるねという期待が持たれている中で、モノにセンサーを取り付けたり、通信機能を持たせるためのハードルが下がり、いよいよコンセプトにとどまらず、現実のものに出来る環境が整ってきた、ということになります。
インターネットにつながったら、何が起きる?
前段で、色々な社会的課題に対して、IoTで解決できるのではないか?と期待が持たれていると説明しました。
言い換えると、IoTは、私たちが暮らす社会に横たわっている問題を解決する可能性を秘めているというわけですが、モノがインターネットにつながっただけで、そんなことができるのでしょうか?
そんな疑問に答えるために、「ドアロック」がインターネットにつながるケースを想定して、どんな良いことが起きるのかをイメージしてみます。
みなさん、人生で一度は「あれ、家を出るとき、カギかけたかな?」と不安になったことはないでしょうか。
家からあまり離れていなければ、さっと戻ってドアの施錠を確認できますが、電車に乗ってしまっていたり、会社に着いてしまっていたりすると、その日は家に帰るまで、誰かが出入りしてないだろうかと、ずっと不安な気持ちになりますよね。
では、ドアロックがインターネットにつながっていて、スマートフォンから施錠や解錠を管理できたら、どうでしょう?
遠隔地からでもスマートフォンでドアロックの状況を確認することができ、もしドアがロックされていなかったとしても、専用のアプリを経由して施錠することもできます。鍵を閉め忘れたりする不安は、これで解消されます。
これはスマートロックと呼ばれるもので、日本では2015年頃から普及し始め、現在では様々なメーカーがスマートロックの製品を提供しています。
メリットは、鍵の締め忘れというのにとどまらず、物理鍵が存在しないため紛失が起きないこと、メールアドレスなどを指定することで友人に一時的にロックを開閉する権限を与えることができること、開閉の権限を持つスマートフォンが近づくと自動的にロックが解除されること、逆に出かけると自動的にロックがかかること、などさまざまあります。
スマートロックは一般家庭でも活用されていますが、法人利用も進んでいます。
たとえば、不動産の営業マンであれば、大家や管理会社から専用のアプリを通して、内見するときだけ合鍵を複製してもらうことで、物理鍵を受け取りに行く(渡す)といった手間が省けます。
そうすると大家が不在だったり、管理会社の都合に左右されることなく、お客さんに物件を案内することができますので、顧客にとって無駄な時間が発生しないばかりか、営業マンは営業成績が上がり、管理会社や大家も空室率を下げることができるのです。
他にもいくつか例をあげましょう。
シェアオフィスでは、指定した日時に限ってユーザーに開閉の権限を与えたり、スマートロックの使用履歴をもとに自動でユーザーに利用金額を請求するということができるようになっています。
スマートロックを導入している民泊では、宿泊客に宿泊期間中のみ鍵の権限を渡すことことで、チェックイン/チェックアウトの手続きが不要になります。
従業員の入室管理にも有効で、スマートロックの利用履歴から、出社時の入室を勤務開始とし、最終退室を勤務終了として記録することができます。
なので、打刻忘れということが起こらなくなり、勤怠修正といった作業時間を減らすことができるでしょう。
さて、ここまで建物のIoTとしてスマートロックを紹介してきましたが、ドアロックというモノがインターネットにつながった「だけ」なのに、一般家庭、不動産業に従事する営業マンや管理会社(大家)、シェアオフィスのユーザーやスタッフ、民泊で働くオーナーや宿泊客など、社会に様々な良い影響をもたらすということを感じていただけたでしょうか?
IoTの基本的なしくみ
IoTには、4つの工程があり、フィジカル空間(実世界)とサイバー空間を行き来することで、実現します。一つずつ見ていきましょう!
- データの収集(フィジカル)
- データの蓄積(デジタル)
- データの分析(デジタル)
- 分析・データに基づく作動(フィジカル)
順番に説明を加えていきます。
まずは「データの収集」です。
データの収集はセンサーによって行われ、たとえばカメラ(イメージセンサー)で視覚データを集めたり、マイク(音センサー)で聴覚データを集めることができます。
センサーの種類は多様で、人間の五感では感知することのできない電波や紫外線といったものもデータとして集めることができます。
このようにセンサーによりデータを収集し、ネットワークを通じて送受信することができる機器をIoT機器といいます。上記でいえば、カメラとかマイクがIoT機器になります。
次に「データの蓄積」です。
IoT機器が収集したデータは、サーバーに送信されて保存されます。
最近は、複数のIoT機器から得られたデータを長期に保存するケースが増えており、大容量のデータ保存が可能なクラウドサーバーが注目されています。
そして「データの分析」です。
蓄積された膨大なデータを分析することで、将来を予測したり、課題解決のヒントを得ることができます。
こうした分析や課題解決の糸口をデータから見つける作業は、従来は人手で行っていましたが、今はAI(人工知能)によってコンピュータが自動的に行うケースが増えています。
最後に「分析・データに基づく作動」です。
分析結果や受信したデータを活用し、自動的に機器を作動させたり、人間の行動を変化させます。
4つの工程を、スマート(賢い)なエアコンを例にとって、おさらいしてみましょう。
データの収集
エアコンには様々なセンサーが取りつけられていて、室温、湿度、外気温が収集できるほか、ユーザー
の操作履歴を収集します。これらのデータに加え、外部から気象データも取得します。
データの蓄積
エアコンから送られてきたデータをクラウドに保存、蓄積します。
データの分析
AIが各種センサーの数値とユーザーの操作履歴を総合的に解析して、ユーザーの好みの温度環境を予測
します。
分析・データに基づく作動
ユーザーの快適な温度を予測、先回りして、自動でエアコンを制御します。
こんなところにも使われている、IoT事例
突然ですが、世界のIoT機器の数はいくつだと思いますか?
総務省によると、2016年は約173億台だったそうですが、その4年後となる2020年では約253億台のようです。
2023年には340億台といわれていて、医療、コンシューマー、産業用途などで今後も伸びていくと見込まれています。
つまり、私たちの身の回りにあるモノが、次々とインターネットにつながり、データの収集、送受信をするようになってきているということです。
IoTが普及、拡大していく流れがあるということを踏まえ、具体的にどんな企業が、どういうふうにIoTを自社のビジネスに活用しているのか、ほんの一例ですが、紹介します。
食品メーカー、キユーピー株式会社はマヨネーズといった調味料のイメージが強いですが、ベビーフードのような加工食品も製造も手掛けています。
国内に9工場あるうち鳥栖工場は、ベビーフードの製造を担っている工場で、原料にダイスポテトという、さいの目状にカットされたジャガイモを使用しています。
このダイスポテトですが、受け入れ時の検査の基準を厳しく設定していて、単なる変色のような食べても問題ないものでも、母親は不安に感じてしまうということで、取り除くようにしているそうです。
そのため、工場スタッフの1/4にあたる30〜40名のスタッフを投入し、8時間に及ぶ目視検査を行っていましたが、ずっと目を凝らし、集中力を上げて不良品を見つけ出さないといけないため、非常に大変な作業でした。
そこで、この過酷な業務の負担を軽減するため、AIを使った原料検査装置の開発を始めたそうです。
仕組みは、ベルトコンベヤーの上を移動するダイスポテトをカメラで撮影し、その画像をAIが解析、サイズや色など不良品を検知したら音で従業員に知らせるというもの。
プロトタイプが出来た時点で、実用レベルに近く、生産性が2倍に高まったとされています。
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現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。特にロジスティクスに興味あり。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。