販売パートナーに業務管理機能を一括提供 「外にも売れる」を目指し開発したシステム―フォーバルテレコムインタビュー

フォーバルのグループ会社で、中小企業向けに高速通信サービスや業務支援ソリューションを提供するフォーバルテレコム。同社は様々な商材を販売パートナーと提供する中で、膨大な請求手続きが課題となり、システムをスクラッチで開発。一方で、パートナーから顧客や契約管理などの機能でシステムへの要望が高まっていた。

こうした背景から、同社では、様々な業務を一元管理するプラットフォームを検討。そして、NTTデータイントラマートの「intra-mart」を採用し、顧客管理、販売管理、請求回収などを提供するクラウド業務管理システム「CollaboOne(コラボワン)」を開発した。

「CollaboOne」は、自社の業務だけではなく、販売パートナーなどの外部にも提供。フォーバルテレコムでは「intra-mart」のBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)機能を活用した業務効率化にも取り組んでいる。この「CollaboOne」の開発経緯や、特長、BPM活用などについて、担当した開発統括の内海義朗氏に聞いた。(聞き手:IoTNEWS 田宮彰仁)

自社の業務管理とパートナーのニーズが開発のきっかけ

IoTNEWS 田宮彰仁(以下、田宮):まずは「CollaboOne」を開発した背景を教えてください。

開発統括 内海義朗氏(以下、内海):当社は親会社のフォーバルがあり、そのグループ会社として、主に中小企業向けに通信機器や通信サービスを販売しています。ビジネスとしては、法人向けに加え、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)やモバイルルーターなどを販売するコンシューマー向けサービスも手掛けています。そのため、請求や顧客管理の業務が多く発生します。

「CollaboOne」は、2018年にリリースしたのですが、当時の状況として、法人向けビジネスは申込書を紙でもらって、それで取引を行っていました。一方で、コンシューマーでは法人の申込書のような紙をもらえない状態でした。こうした背景があって、当時はタイミング的に業務を管理する仕組みが必要となっていました。

業務管理は当初、他社のシステムを利用して行っていました。ただ、自分たち用にカスタマイズしたシステムを使いたい、同時に、システムを作るのであれば、幅広い商材を扱えるようにしたいと思うようになりました。これが「CollaboOne」の開発に取り組んだ一番の理由です。

開発統括の内海義朗氏
開発統括の内海義朗氏

田宮:システムは販売パートナーにも提供していますよね。

内海:そうです。当社では請求書の手続きを簡略化するためウェブを使った「WEB請求」というシステムを開発しており、10年ぐらい前からパートナーに提供していました。だから、システムの外販を全くやったことがないわけではありませんでした。

一方で、当社で提供する製品やサービスが多様化し、請求に限らず、顧客・契約管理など、より多くの機能の提供を現行のシステムに対してパートナーから求められるようになってきました。こうした状況があって、自分たちのシステムをせっかく開発するのであれば、パートナーからの要望なども吸収する一方で、売れるものにしたいとも考えたわけです。このことも「CollaboOne」を開発するきっかけの1つになっています。

田宮:なぜシステム開発で「intra-mart」を採用したのですか?

内海:理由は2つあります。1つはID単位ではなく、まとまった金額でライセンスが利用できる点です。当社の場合は、販売代理店パートナーがたくさんいます。そして、パートナー1社ごとにシステム用のアカウントを発行する場合、1社ごとの課金になる。そうなると管理も大変でコスト高になってしまう。それでは、とてもではないけどビジネスとして厳しい。だから、ID単位でのライセンス体系でないことが重要でした。

もう1つは、システム上でパートナーごとにテナント分けができる点です。開発時から、ゆくゆくは販売したいという要望があったため、この仕組みに対応できることが必要でした。この2つの機能があったことで「intra-mart」の採用を決めました。

「販売」「管理」「請求」の3システムで構成

田宮:「CollaboOne」の特長を教えてください。

内海:システムは、「for Sales」「for Management」「for Billing」の大きく3つに分かれています。メインは、「for Management」の部分です。ここでは顧客・契約管理を始め、組織管理、料金計算も行えます。また、データ収集や外部システムとの連携などの機能をオプションで提供しています。

「CollaboOne」を構成する3つのシステム
「CollaboOne」を構成する3つのシステム

「for Sales」は、申し込み受付管理の機能です。「for Billing」は、「WEB請求」の仕組みになります。この機能は先ほど話した以前から提供していたサービスにあたります。ここには運用代行も含まれています。

電力サービス販売業務の効率化でBPMを活用

田宮:「CollaboOne」では「intra-mart」のBPM機能を使っているそうですが、どう活用しているのですか?

内海:「intra-mart」のBPM機能を使っている主な所は、当社が販売している電力サービスで、全国の販売パートナーに向けたワークフロー構築の部分です。電力サービスの受注では、顧客から、いろいろな情報をもらって、行わなければいけない業務がたくさんあります。例えば、法律的に顧客にはメールを必ず送らなければいけないであるとか、書類を送らなければいけないといったような作業です。

電力サービス販売のBPMN
電力サービス販売のBPMN

この業務の流れを、BPMN(業務プロセスモデル図)を使って明確にしました。この図を見ることで、パートナーは、「今はここだから、次はこのステージ」、そして「その次は、このステージ」と一目で把握できます。

例えば、確認依頼のメールについて、顧客からOKをもらわないと次に進めないとします。そして、OKがもらえていないのであれば、顧客に再度メールを送るアクションをする。また、手続きの進行が停滞しすぎていればアラート(警告)を上げる。こうしたプロセス管理が簡単に行えるようになっています。

この仕組みは、自社と販売パートナーとで利用しています。電力サービスの販売パートナーは、地方のOA機器販売店や電機店が多いのですが、販売の手続きで助かっているとの声をもらっています。

田宮:BPMNを実践してみて感じたことはありますか。

内海:BPMNを実際に作ってみて、自分で作成するのはちょっと厳しいと思いました。実はもう少し簡単に作れるかなと思っていたのですが、やってみるとなかなか難しい。このことから、BPMNを知っている人ではないと作ることができないとも感じていて、今後も実践していくのであれば、例えば、システムエンジニアのような知っている人の助けも必要になると思っています。

田宮:「CollaboOne」の導入で、どのような効果がありましたか。

内海:まず、コンシューマー事業では、管理が自動化したことで、関わっていた人が減りました。バックヤードで作業をする人が5人から3人と約半分ぐらいになったと思います。

次に、新商材を扱う際のスピードが速くなりました。当社の場合、新しいサービスとか商材を始めるとなると、登録しなければいけない項目や管理しなければいけない項目が変わります。これまでのシステムでは、そのカラムを1つ追加するだけでも開発が必要で、それがネックになっていました。

「CollaboOne」では、商材単位で自由に追加できる機能になっていて、すぐに対応できます。今までは新商材や新サービスを始めるとなると、毎回、数か月がかかっていましたが、それが一週間から二週間くらいで立ち上げられるようになりました。

田宮:販売パートナーからの反応はどうですか。

内海:パートナーからは販売や顧客管理業務が、かなり楽になったと言われています。「これまでは、顧客に契約書を紙で渡して管理ができていなかった」。また、「いろいろな顧客に商品やサービスを販売していて、どこに何を売っていたかわからなくなっていた」。こうしたことが、「システムで基本的に解消された」。「全てが画面上の中で収まるようになった」と言ってもらえています。

機能を絞ったミニマム版でユーザーのすそ野を広げる

田宮:最後に今後の取り組みについて教えてください。

内海:「CollaboOne」は、当社がそれなりの規模でビジネスを行っていることもあって、現在は大企業向けのシステムになっていると思います。

一方で、システム自体はフレキシブルに管理項目を追加したり、減らしたりできるのでユーザー企業は、それぞれで活用ができます。しかし、実際にパートナーが自分たちで、そうした作業をできるかといわれると、恐らく厳しいと思っています。そこで、システム導入のコンサルティング的な感じで、当社の人間が一緒になってパートナーとシステムを作り上げていく取り組みを行っています。

ただ、それだけでは利用者の数は増えないと思っています。そこで、ユーザー企業が設定しやすいように機能を少し制限したミニマム版を考えています。このサービスでは、今のものよりも安い料金で提供して、いろいろな人に使ってもらうことを想定しています。対象ユーザーは、現在、システム利用の中心となっている1000~2000社ぐらいの顧客を持つ企業ではなく、10~100社ぐらいの顧客を持つ企業です。

また、これまで「CollaboOne」は、顧客から「顧客や契約を管理できるシステムはないのか?」と言われたときに「実はこんなシステムがありますよ」という感じで提供していました。しかし、今年度からは本格的にシステムを外部に売り始めようと思っています。

田宮:今回は貴重なお話をありがとうございました。

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