COMPUTEX2023レポート第一弾は、台湾ハイテク産業のトレンドについてだ。
今年のCOMPUTEXは、コロナ以前と比較すると、大きく縮小されていて、1日もあれば見たいところは見れる、という規模感となっていた。
規模は縮小されていたが、台湾はご存知の通り半導体産業が盛んな国。毎年COMPUTEXを見ていると、ハイテク産業の様子がわかる。
なぜなら、台湾に世界からの発注が増えると、自ずと展示もそのテーマによってくるという性質があるからだ。
例えば、コロナ以前であれば、電球をスマホで操作するスマートライトからはじまり、スマートホーム、ロボット、ウェアラブル、ヘルスケアと、IoTNEWSではお馴染みのテーマがブースの多くを占めていた。
しかし、コロナ前最後のCOMPUTEXであった2019年では産業用PCやサーバ用コンピュータのブースが多くなり、今年は「スマート」というキーワードもほとんど見かけなかった。
これは、スマートXXというテーマへの世界の期待が一区切りつき、現実的な線として、ゲーム業界がeSportsを中心に盛り上がっていること、PC部品メーカーが、完成品としてのパソコンや、産業用PC、もしくは、産業用デバイスの中のコンピュータ機器として取り込まれていった結果であるとも言えるのではないだろうか。
つまり、完成品としてのスマートXXデバイスは、そこそこの規模の市場としては育ったものの、「ネクストスマートフォン」といえる規模までは成長することはできなかった状況で、それぞれの市場として成長していく可能性を秘めつつ、次の機会を待つというステージへ。
そして、大量なコンピュータリソースを必要とする事業として、クラウド上でのAI処理や、PC/デバイス上でのAI処理など、より複雑で高度な処理への対応する、という市場が大きく成長してきているという状況であるとも言えるだろう。
基調講演で登壇したNVIDIAが、時価総額1兆円を超えたというニュースがちょうど話題となっていた期間でもあるだけに、今後AIをどのように取り込んでいくかが大きなトレンドとなりそうだ。
では、そう言ったコンピュータ関連の話題以外に何もなかったかというと、その一方で、コロナ禍によってマーケットが急拡大したオンライン会議システムやそれに必要となるカメラについては、いくつかの展示が見られた。
複数のカメラで会議室のメンバーを撮影したり、スマートフォンのアプリで切り替えるようなデバイスはすでに日本でも流通しているが、カメラメーカーやpcサプライメーカーのサブブランドとしていくつかのブースで展示されていた。
さらに、最近話題の生成系AIについては、BenQのブースでD8AIが展示していた。
このソリューションは、AIチャットと、音声合成、顔の動きを再現するソリューションだ。
[D8AIのデモ。撮影時に音声が乱れてしまっているが、もっと綺麗な声だった]
この手のソリューションは、顔写真があればフェイク動画として作る技術も以前から存在しているので、新しいという感覚はないものの、自然な動きができるため、ゲームやパーソナル秘書などのサービス意外でも、たとえば、スーパーマーケットでの商品説明員として利用するなど、利用シーンも明確なため、徐々に広がっていく可能性がある。
また、サステナビリティというテーマから、EVが登場し、EVステーションに関するデバイスがASUSやacer、MSIなど、さまざまなブースで見ることができたのも、新たな潮流とも言える。
本格的なデジタル社会が世界中で到来しようとしている中、台湾のコンピュータ部品技術はあらゆる産業で使われる可能性があり、今後の動向が気になるところだ。
しかし、冒頭書いたように、コロナ禍の影響か、かなり規模が縮小している分、展示している企業もかなり少なくなっていたので、来年以降は、規模も通常通りに戻り、新しい変化を感じたいところだ。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。