国立大学法人佐賀大学農学部(以下 佐賀大学)ならびに佐賀県農林水産部、株式会社オプティムは、三者連携協定の取り組みの中で、オプティムが開発した、殺虫機能搭載の「アグリドローン」を活用し、夜間での無農薬害虫駆除を目指した実証実験に、成功したことを発表した。
従来、農業が使えていなかった夜間の時間帯を活用して、夜行性の害虫が活発になる夜間にドローンを飛ばし、農薬を使わずに害虫駆除を行うことで、「夜の農業革命」を目指していくという。
なお、これらで活用される新しい技術群に関して特許出願を行っている。
「アグリドローン」開発への取り組み
拡大するドローン市場において、産業へのドローン活用は農業分野が最も盛んな分野の一つとなっている。オプティムではIT農業において有効なさまざまな機能を搭載したアグリドローンを開発した。アグリドローンを使用することで、農家の農作業負荷をへらし、農作業の質を高めることが可能となるかの実証実験を佐賀大学、佐賀県、オプティムで行っている。
殺虫機能搭載ドローンによる無農薬害虫駆除
「アグリドローン」では、夜間自動飛行と殺虫器による自動害虫駆除を行うことができる。
佐賀大学、佐賀県、オプティムは、三者連携協定の中で、農薬を使わずに害虫を駆除する手法を検討していた。そのような中、一つの仮説として、夜行性の害虫は、天敵の鳥を避けて昼間の間は葉の裏に潜り、夜間表面に出てきて活動することが多い特性をもっているため、夜間に殺虫器を使うことで、効果的かつ農薬を使わず害虫を取り除けるのではないかという仮説を立てた。
そこで今回、仮説を検証すべく、佐賀大学 農学部附属アグリ創生教育研究センターの圃場にて、「大豆」、「さつまいも」の上空を飛ばし、夜間に無農薬害虫駆除の実証実験を行ったところ、殺虫機能搭載の「アグリドローン」を活用した、夜間での無農薬害虫駆除を目指した実証実験に成功した。殺虫できた害虫を調査したところ、夜行性の甲虫、ガ、ユスリカ、ウンカなど、約50匹程度を殺虫することができていた。この中には、産卵孵化後に作物に対して影響を及ぼす害虫も含まれており、同仮説の有効性を確認することができた。
今後の取り組み
今後は、三者が連携し、作物品目ごとの害虫駆除手法の確立と精度の向上に努めていく。特に稲の害虫であるウンカでは、産卵孵化後に稲に対して深刻な被害を与えることがあるため、ウンカの飛散直後に駆除することで、産卵孵化後の虫害を減らすことが期待される。
将来は夜間に定期的に自動飛行することによって減農薬や無農薬へ貢献していくという。
アグリドローンの機能特長(特許出願中)
夜間での無農薬害虫駆除
ドローンにドローン対応殺虫器を搭載している。害虫が活発に活動する夜間にドローン飛行を実施することで、農薬を使用することなく害虫駆除が行える。
自動飛行機能
設定されたルートをドローンが自動で飛行するため、オペレータの負担を大幅に軽減することが可能。
カメラ切替え機能(近赤外線カメラ、サーモカメラなどマルチスペクトル撮影)
ドローンに搭載されているカメラを用途に応じて切り替えることができる。
ピンポイント農薬散布
病害虫が発生している箇所を自動で解析を行いピンポイントで農薬を散布することで、不必要な箇所への農薬散布をせず、農作物を育てることができる。
三者連携協定とは
IT農業に関する三者連携協定とは、2015年8月に、佐賀大学と佐賀県、オプティムとで「楽しく、かっこよく、稼げる農業」というコンセプトの下、世界No.1となるIT農業の実現を佐賀から行うべく締結した取り組み。産学官の三者による連携協定を行うことで、各々が持つ技術の融合を図り、技術開発の効率化、加速化、高度化、そして、現場技術として、生産者の方に着実に適用できるものが構築されると期待している。
【関連リンク】
・佐賀大学農学部(Faculty of Agriculture Saga University)
・オプティム(OPTiM)
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。