専門的な知識のない人でも簡単に設定できるPepper向けアプリケーション「Smart at robo for Pepper」などを開発提供しているソフトバンクグループのM-SOLUTIONSが、ドローンで撮影したデータや飛行管理ができる「Smart at drone」を発表した。
今回、M-SOLUTIONS株式会社取締役 植草学氏、同社 旭川開発センター Smart at drone開発リーダー 田中 利英氏、同社 兼 ソフトバンク・テクノロジー株式会社 広報担当 皆口 朋美氏に話を伺った。

-新しいサービスについて教えてください。
皆口氏(以下、皆口): 今回リリースしたのは、「Smart at drone」というサービスになります。
これまで商用ドローンの活用においては、いくつかの課題がありました。まず、ビジネスでの活用までに多くの手間と時間がかかることが挙げられます。飛ばすまでももちろん時間がかかるのですけれど、実際に飛ばせた後も、撮ったデータをどうやって管理していくのか、どのように活用していくのか、そして最終的には撮影した動画からレポートという形で資料に落としレビューするという作業に、大変手間がかかっていました。
さらに、本体の管理が難しいのです。データの管理にもかかわってきますが、飛行のログや履歴の飛行時間もどうやって管理していくか、という課題がありました。そういった課題を解決するために生まれたのが、今回旭川の開発センターからリリースしたSmart at droneというサービスになります。
Smart at droneは、誰でも簡単にドローンの飛行データの管理、撮影の状況をレポートできるクラウドサービスになります。簡単な操作で、ドローン活用の手間とリードタイムを短縮することができるのが特徴です。
機体管理の手間に関しては、その管理の一環として、飛行の履歴、方向データもまとめて管理することができる内容になっています。
2つの提供形態がありまして、農家さんとかですと、撮ったデータをその場ですぐ見たいという要望があるので、そういった場合にはクライアントソフトウェアの提供を行うローカル版が適しています。クラウド版は、クラウド環境にレポートや撮影データを上げることで複数ユーザーに共有ができるので、例えば、自分たちでわからない内容をベテランの方に聞きたいときなどに使うことができます。
さらに大きな特徴として、ソフトウェアアップデートが含まれます。このサービスは、どんどん新しい機能を拡充していく予定がロードマップであります。クラウド版では、今後、追加される新たな機能を継続的にお使いいただくことができます。
今回ご紹介させていただくのは農業での活用例ですが、建物や道路の劣化検査や、事故・災害時の現場がどのようになっているのかという検証などにもご利用いただけるのではないかと思っています。
植草氏(以下、植草): 今、「農業が熱い」と言われていますが、今後は建物の経年劣化の点検や測量にドローンを使っていくニーズもありそうです。
-ドローン自体を解決するのではなく、今おっしゃった課題の解決にドローンを使うということですよね。
植草: そうです。ドローン自体は機械が解決していくところなので、撮った後の部分を我々がどうするかということです。
-ドローンで撮影したデータを使ってサービスをしたい人が増えているのでしょうか。
植草: 市場のマーケットでサービスが増えてくる予想が出ています。統計を見ると今は農業が多いのですが、土木建築の分野で「i-Construction」(国土交通省の建設現場の生産性向上に向けて、測量・設計から、施工、管理にいたる全プロセスにおいて 、情報化を前提とした新基準)に対応していかなければいけない、というご相談を受けるようになり、我々も対応していくことにしました。

-建築のビフォーアフターを撮りたいという需要が一番大きいのでしょうか。
植草: そこが一番大きいと思いますし、人が登れないビルの屋上などの撮影にも役立つと思います。
-コマツのスマートコンストラクションは、国土交通省も推進していますが、その流れの中で3D測量もできるのでしょうか。
植草: 3Dになると我々の専門外になってしまうので、専門になる前のところで汎用的に使えるサービスを目指しています。もともとSlerですので、もし3D表示をしたいというご要望があれば、カスタマイズをしていくことも検討していきます。
まずは自分たちで使ってみて、大変だったところのノウハウがありますので、その苦労話を田中からお伝えいたします。

田中氏(以下、田中): 苦労話ですか。そうですね、農業の旭川で実証実験したときに、自分が困ったことをお話いたしますね。
農家さんと直接コミュニケーションを取りながら圃場で飛ばしていたのですけれど、その時によく言われたのが、「あまり圃場が広いと、真ん中の方に入って行くということがなかなかできない。入っていくにしても、稲の根を傷つけてしまう」ということです。農家さんが見たいであろう映像をドローンをどう飛行させると実現できるか、どういう見せ方をするのがよいかと試行錯誤しながら進めていくところが大変でした。
ですので、ドローンの映像を農家さんに見せると「あ、こんなふうに見えるんだ」とか、「案外きれいにうわさってるね(植えられている)」などのお話をいただいて、農家さん自体も圃場の中の方を見ることは難しいのだな、という印象を受けました。
植草: 僕が聞いた話ですと、やぐらを建てて上から見ていたそうです。それでも見ることができる範囲は限界があります。
-確認したくても、今まではできなかったということなのですね。
田中: あぜ道から見える範囲は頻繁に見ることができるのですけど、中の方は確認できないので、全体で見るとバラつきが出るというお話は聞いています。
-例えば、何か問題を見つけたときは、人がかき分けて中に入るのでしょうか。
田中: そうですね。そのようなときはビークルという機械で中に入って、そこに肥料を撒いたり、農薬散布だと手で届く範囲で撒いたりしています。ただ、ビークルみたいなものを入れると、やはり機械の通り道ができてしまうので、稲にストレスを与えてしまいます。農薬散布や追肥ぐらいであれば、ドローンで撒くのが一番楽なのかなと思います。
-なぜ旭川でやろうと思われたのでしょうか。
植草: もともとセキュアドローン 協議会という団体に参画しており、そこで行った旭川の圃場での実証実験に、我々も参加している経緯からはじまりました。
その中で旭川に我々のIoTのセンターを作っていく計画があり、立ち上げました。現在センター長は本社と旭川を行き来しているのですが、田中も含めた開発者4名は旭川の人材を採用しました。
今年度は、農家さんなどの「目の代わり」になって実験ではなく、サービスを購入していただく段階に行きたいと思っています。
-このサービスでドローンは借りられるのでしょうか?購入するのでしょうか。
植草: ドローンは別途購入いただきますが、我々も持っており、実際に動かしている実績があるものをご紹介することもできます。ドローンのデータを取得して、我々のツールにデータを入れていくということができるような仕組みになっています。
-例えば、3時間飛行したときの動画データはけっこうな量だと思うのですけど、クラウドに上げるのはどのくらいかかるのでしょうか。
植草: 動画データをクラウドに上げないのが、今回のポイントです。
-ではクラウドには何が上がるのでしょうか。
植草: まずは、ローカルのクライアントソフトで操作してもらい、必要な情報だけクラウドに上げていくということをしています。
田中: デモをご覧いただくとわかりやすいかと思います。これは、実証実験で定期的に圃場を撮影した動画なのですが、昨年の8月に台風が北海道に上陸し、その台風の被害に遭われた圃場のデータです。
下記の左側にあるのが動画で、これを再生しながら検査をしていきます。
田中: 右上に青い線がありますが、これが自動航行時の方向経路になります。右下は、コメントを入れるツールです。
先ほどもお話しましたが、これまでは圃場の中央をなかなか見ることができなかったのが、ドローンを使った動画を見ることで「あ、ここ薄いな、ここ濃いな」などがわかるので、「もう少し、ここに肥料を追加しようか」というようなアクションにもつなげることができます。
さらに圃場が広いとほとんど同じ映像なので、位置がわからなくなるのですが、地図と動画のシームレスな連携を取ることで、どの位置にどういう問題があるかを視覚的に見ることができるように設計しています。
田中: そして、動画の場所や、丸を付けたり四角を付けたりしたクリッピングの状態、どのような問題があったのか、それはどの位置だったのか、というレポートの出力を行います。レポートの出力を行うと、その段階でクラウド上にデータがアップロードされます。
実験段階でのレポート作成時に、キャプチャを取って、貼付けて、それにコメントを加えるという作業に非常に手間がかかったので、このような形にしました。
また、機体の飛行時間を管理しております。これにより例えばモーターの交換時期や、機体のメンテナンス時期を管理することができます。ドローンのメンテナンスは、「何時間以上だったら、メンテナンスしてください」というように時間を指標にしているので、時間の管理というものが非常に重要になります。
植草: たしかこの時は2GB程度のデータをクラウドに上げました。先ほど田中が申し上げた機体の管理ですが、例えば1年の包括計画したときなど「いつどこで飛んだ」「いつどこで飛び終わった」という履歴を3か月に1回、国交省に出さなければいけないのですが、弊社のツールでしたら履歴を取っていますので、すぐに対応可能です。
田中: さらに、飛行するときは、一定の場所で飛ばすように自動航行させています。レポートするときも、例えば、圃場を9つに分けて、左上が1、左の真ん中が2、というように、7月10日と7月15日の動画でそのポイントをぴったり合わせて、時系列に並べていくというのは、非常にやはり手間がかかって時間がかかったポイントなので、そういうところにも使えるかなと思います。
-その正確性というのは、GPSで保証されているのでしょうか。
田中: そうですね、GPSでほぼ1メートルまでの誤差はありますが、精度は非常に上がってきているという実感はあります。強風が吹くと少し影響が出ますが、今はドローンの性能も上がってきているので、GPSの位置に戻ろうとする機体制御が働いて、それなりにちゃんとブレが少ないように飛んでいると思います。
-今後はどのようにしていかれるのでしょうか?
植草: 今後、このサービスは継続的に機能を拡充していきます。2〜3ヶ月に1度、追加機能のアップデートを行う予定で、見えているロードマップでは、「AIによる画像解析」があります。これは、AIが画像を読み取り、過去データとの比較などから、異常を自動でクリッピングする機能です。AIが、人の目視での検査・確認を補助することで、作業をさらに簡単に、効率化することができるようになります。
Smart at droneは、「誰でも、簡単に」というサービスコンセプトの通り、農業や建築の現場だけでなく、ドローンを使って撮影をするさまざまなケースで、汎用的に活用いただけるのではないかと思います。我々が想定している利用用途以外にも、お客様に自由に使っていただくことで我々にもよいフィードバックが得られますし、それをまたサービスに反映させていければと期待しています。
-本日はありがとうございました。
【関連リンク】
・Smart at drone
・前回インタビュー:ノンエンジニアでも設定できるPepperアプリケーション - エムソリューションズ 取締役 植草氏インタビュー
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