喫茶店とコンビニに見る、業界の境目
小泉: さきほどの、「不動産」の例について詳しく教えてください。
八子: 英会話やマッサージ、飲食などのサービスがクルマの中でオンデマンドに提供されるようになると、「部屋」という物理的な資産を持たなくてもいいということになるということです。
小泉: そうすると、サービス事業者は不動産から「部屋」を借りるだけでなく、クルマを借りるということも選択肢に入ってきますか?
八子: そうです。企業は、業界の垣根を越えた領域でどのようなサービスが提供できるのか、あるいは現時点で機会損失になっている既存事業に対して、今すぐオンデマンドでサービスを提供するには何をしなければならないかを考えていった方がいいですね。
小泉: コンビニエンスストアは最近、飲食スペースを出すことが多くなってきました。これまでの小売店ではありえないことですよね。何なら、「家に帰って食べなさい」と子供が親に怒られたりしていた話です。それが今は、コンビニの中で飲食する方がむしろ普通です。
今後はそれがコンビニどころか、クルマの中にコンビニが入っていて、その中で飲食をしてしまうということになりそうですね。

八子: モビリティの話をいったん置いておくと、コンビニの中でも「〇〇カフェ」というように、普通にコーヒーが提供されています。これについても、ある意味、境界はなくなっているわけです。おしゃれなカフェでなくとも、コーヒーを飲み終わったらすぐに出たいというビジネスマンにとっては、「コンビニでいいじゃん」ということになります。
小泉: 喫茶店とコンビニの境目がなくなっているわけですね。
八子: これはファシリティが共通化されるという意味での「境目がなくなる」事例ですが、データを活用してもっと境目を無くすというアプローチもあるでしょう。
特に日本国内において、コンビニやガソリンスタンド、ドラッグストアに関しては、これまで別々の業界に分かれていたサービスをまとめて提供し、ユーザーの機会損失をなくすという方向にますます進んでいくと思います。
小泉: 進みますよね。今は物理的なスペースについて無駄を省きましょう、なるべく機会損失をなくしましょうという話ですが、そこにテクノロジーがかけ算されることによって、もっと人の生活そのものが変わっていきそうです。
次ページ:すべてがサブスクリプションになる
無料メルマガ会員に登録しませんか?

技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。