期待高まる、クルマから始まるスマートシティ
小泉: クルマとスマートシティの分野はどうですか。
八子: クルマについては、何といっても1月にCESでトヨタが発表した「e-Palette」でしょう。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)がいよいよ本格的に始まったなという印象を強く持っています。東急電鉄とJR東日本も、2019年春から伊豆エリアで「観光型MaaS」の実証実験を行うと発表しました。
小泉: スマートシティでは、クアルコムなどが進める「セルラーV2X」構想に代表されるように、「クルマから始まるスマートシティ」という流れがあります。大きなマーケットであるクルマ産業を起点にすると経済が回りますから、期待大だと思っています。
八子: そうですね。これまでのスマートシティは、どちらかというと社会課題の解決を目的とした行政主導の取り組みであり、お金が回るしくみになっていませんでした。それが今ではコンシューマの領域にまでひろがり、課金ポイントも明確になりつつあります。
小泉: クルマの自動運転という視点で見た場合にも、スマートシティは重要です。今の自動運転は、クルマが自ら周りを検知して、接近するクルマをよけるしくみです。しかし今後は5GやV2Xの導入が始まると、クルマと街のインフラが連携することで自動運転を実現する方向にむかうでしょう。
そうした社会では、街のインフラにさまざまな通信機器が入りこみ、コネクテッドになっていきます。信号機であれば、信号機の周りにいるヒトの安全を見守ることもできるかもしれない。少し前まで、私はスマートシティは絵空事だという気がしていましたが、最近では現実味をおびてきたなと感じています。

八子: 「スマートシティ」は、領域を分けて考えることが重要です。モビリティや輸送の領域でスマートなのか、お店の買い物体験がスマートなのか、自宅と外部のサービス連携がスマートなのか。それぞれの領域で今年1年、さまざまなプラットフォームやデータ流通のしくみができてきました。では、次に目指す姿は何かというと、製造業がプラットフォーム連携を始めたように、街の中で異なるデータ連携のモデルが統合され、スマートな街をつくりあげていくことです。
小泉: 農業はどうですか?
八子: 農業では、データ収集やドローンの活用、トラクターの自動運転などは始まっています。課題は、流通との連携ですね。どんなに高度な農業を実現したとしても、製品の出口が確保されていなければ、意味がありません。なので、これも異なる領域でデータ連携などを行い、需給のバランスが最適なところで取引ができるようなしくみをつくることが今後の課題になるでしょう。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。