フィンランドの「Whim」に学ぶ、街の「移動」を俯瞰する視点
八子: 東急電鉄とJRの実証実験は、とても画期的な事例ですね。欧州では、フィンランド発の「Whim」というMaaSのサービスがあります。これは、市が保有する路面電車やバス、タクシーを定額乗り放題で利用できるというサービスです。
これは、市内で閉じるからやりやすいです。一方で、各地に伸びていく中距離の幹線などでは、どこからどこまでをMaaSの対象にするのか難しい。日本でも「Whim」のように、市が保有しているモビリティをMaaSのパッケージとして展開していくのはありだと思います。
小泉: 昔の例で言うと、バスと電車の共通チケットのようなものですね。
八子: そうですね。そこにマイクロモビリティもセットになっているのが、フィンランドの「Whim」に代表される、MaaSのトレンドです。
また、ベルギーのブリュッセルでは、Uberが提供している「JUMP」というサービスがあります。これは、シェアバイクとeスクーターのいずれかで、ユーザーのその時の状況に応じて便利な手段を提案する、というサービスです。
これまで、クルマのシェアサービスを提供してきたUberのような企業もマイクロモビリティに参入してきているのです。
小泉: 日本でMaaSに取り組むうえで、大切なことは何でしょう。
八子: MaaSは、自治体を中心とした取り組みが必要です。ここでポイントは、自治体はバスや路面電車を持っていますが、その事業の多くは赤字です。もし、MaaSとして包括的にサービスを導入し、ある一定の金額をユーザーから徴収できれば、予算をそれぞれのセクターに分配できます。「ベーシックインカム」のように。
小泉: なるほど、個々の事業の採算を見るのではなく、「移動」をひとくくりにして事業を改善していけるわけですね。
日本は鉄道会社が中心となって街づくりを進めてきた背景がありますから、日本はMaaSを進めやすいという面もあるのではないかと思います。
八子: そうですね。さらに自動運転やシェリングのしくみも普及してくると、それぞれのエリアにある不動産やお店も有効活用されるようになりますから、鉄道会社のみなさんはビジネスがやりやすくなるのではないかと思います。
小泉: 一方、マイクロモビリティの事業を始めようとされている方にとっては、eスクーターなどの事業を単体でやるのも一つの方法だと思いますが、鉄道会社や自治体とうまくつながって、街の「移動」をどうしていくかという課題感を持って進めていくことが大切なのではないかと思います。本日も貴重なお話、ありがとうございました。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。