6か月というプロジェクトの期限
IoTNEWS 吉田:プロジェクトを進める上で苦労した点はありますか。
京セラ 稲垣:あえて1つ挙げるとすれば、プロジェクトの期限が有限だったことでしょうか。ソニーさんの「Sony Startup Acceleration Program」に参画するプロジェクトには6か月という期間の中で成果を出さなければいけない、というルールがあります。ただ、逆に期限を決めて進めたからこそ「Possi」を形にすることができたと思います。
ライオン 萩森:このプロジェクトについて、ライオンのイノベーションラボは今年1月からの途中参加でしたので、「Sony Startup Acceleration Program」に期限があることについては私も苦心しました。
ソニー 宮崎:プロジェクトの立ち上げから製品発表まで9か月でしたが、大企業の中で新規事業を起こして3社合同で進めたプロジェクトとしては、かなりスピーディに展開したものだと感じています。
稲垣さんと最初にお会いした時に「まずは製品発表の時期を決めましょう」という話をして、そこから逆算して稲垣さんに開発プランを練ってもらいました。
時間は有限なので、その中でどうやったら実現できるのかを徹底的に考えてもらい、ソニー側も支援できる点はしっかりとバックアップする、というのが「Sony Startup Acceleration Program」の特長です。
京セラ 稲垣:限られた時間でプロジェクトを完遂するにあたって、とにかく悩んだら周りに相談することを心掛けました。分からないことがあったらすぐに宮崎さんに相談する、といった具合に、自分の手元で仕事を溜め込まないようにしました。
ソニー 宮崎:稲垣さんは研究者・エンジニアとしてキャリアを積まれてきた方ですが、事業を立ち上げる経験は初めてです。そのため事業化のスキルに関しては「Sony Startup Acceleration Program」がレクチャーし、稲垣さんには事業の進め方を学んでいただきました。
とはいえ稲垣さん1人が頑張るだけでは、プロジェクトを達成することは出来ません。先ほどのお話にもありましたが、稲垣さんの思いに対して多くの人が共感を持ったからこそ、成功までたどり着くことが出来ました。そういう意味では事業の進め方としては泥臭い面もあったかな、と思います。
偶然の出会いが「Possi」を生んだ
IoTNEWS 吉田:稲垣さんがライオンさんへ共同開発をお願いしたのは、元々イノベーションラボの存在を知っていたからですか。
京セラ 稲垣:いえ、違います。CPS・IoTのイベントである「シーテックジャパン」で振動アクチュエータの展示を行っていた際に、ライオンさんの社員の方がたまたまブースにいらっしゃった事がきっかけです。
その時はちょうど「しっかりしたハブラシ部分を開発してくれるメーカーさんを探さなくては」という話がプロジェクト内で挙がっている頃で、「ならばこの機会に」ということで偶然ブースにいた私がご相談させていただき、ライオンさんとの共同開発が始まりました。
ライオン 萩森:実は私がプロジェクトに参加したのも、京セラさんから「Possi」共同開発のお話をいただいた直後に開かれたライオンの社内会議にたまたま出席していて「この企画、確かに期限が決められていて大変だと思うけれど、実現できれば非常に面白いな」と感じたことがきっかけでした。
この話を直ぐにイノベーションラボに持ち帰り、「このスピード感は従来通りでは到底無理だからこそ、イノベーションラボがやるべき」と説得しました。その後はスムーズに共同開発の話が進んでいきました。基本的に私は何事にも折れずにチャレンジする性格です。他のメンバーも「萩森がやると言えば、何があっても折れない」と知っていたので、プロジェクトに参加することが出来たのだと思っています。
京セラ 稲垣:萩森さんから共同開発を引き受けてくださるお話をいただいた時は、「これでプロジェクトを進めることができる」と本当に救われた思いになりました。
ライオン 萩森:最初にお話を伺ったときに直感的に「面白い」と思ったことが、重要なポイントだったと考えています。また、稲垣さんに初めてお会いした時に「非常に熱意がある人だな」と感じ、この人となら一緒に仕事ができる、という思いを抱いたことも大きかったです。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。