IoTデバイスの増加にともない、懸念されるセキュリティの問題。日本国内でもIoTデバイスに対する不正アクセスの数は年々増加する傾向にある。だが、IoTデバイスは用途も種類も多様であり、セキュリティ対策に正攻法はないのが現状だ。OSより上位のレイヤーにエージェント等を導入し外部の攻撃から保護するといった方法が一般的だが、それで完全にデバイスを保護できるわけではない。
株式会社オプテージは、ソフトウェアが格納された「フラッシュメモリー」本体を保護することで、ファームウェア等の改ざんを防ぐIoTセキュリティサービスの開発を進めている。同社はそのコア技術を持つイスラエルのスタートアップ企業であるNanoLock Security社と提携。2021年春からのサービス提供を予定している。
オプテージが着目する、フラッシュメモリーに焦点をあてたIoTセキュリティサービスについて、同サービスの企画や開発を統括する同社ソリューション事業推進本部 ソリューション企画部長 矢野宏明氏に話を聞いた(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)。
※写真:左から株式会社オプテージ ソリューション事業推進本部 ソリューション企画部 ソリューション企画チーム 竹内淳氏、矢野宏明氏、川口雅史氏
フラッシュメモリーの保護とIoTデバイスの一元管理を実現する、新しいIoTセキュリティサービス
IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): IoTデバイスをフラッシュメモリーから保護するというのは、とても新しいアプローチだと感じました。
オプテージ 矢野宏明氏(以下、矢野): IoTデバイスのセキュリティ対策としては、OSやアプリケーションのレイヤーでウイルス対策ソフトをインストールする、という方法があると思います。しかし、この方法はデバイスの「入口」だけを守る方法となります。
つまり、侵入しようとするウイルスを、ウイルス対策ソフトが撃退できなければ、デバイスは乗っ取られてしまうことになります。デバイスを守りきるには、ソフトウェアが格納されているフラッシュメモリーそのものを保護する必要があると私たちは考えました。

矢野: 実際、OSより上位のレイヤーを保護するセキュリティサービスは市場に数多くありますが、OSより下位の領域(ファームウェア)を保護するサービスはほとんどありません。しかし私たちは、これからIoTデバイスの高機能化が進むにつれて、ハードウェアレベルの抜本的なセキュリティ対策が重要になってくるだろうと予測しています。
こうした背景から、私たちはフラッシュメモリーを保護することをビジネスチャンスととらえ、優れた技術をもつ企業を探してきました。そこで出会ったのがNanoLock Security社です。同社はイスラエルのスタートアップ企業で、フラッシュメモリーを保護する技術の特許を複数持っています。世界の大手メモリメーカーなどと協業しており、大変実績のある企業です。

小泉: 具体的には、どのようなサービスを提供するのでしょうか。
矢野: お客さまのIoTデバイスを保護するためのサービスを、「IoTセキュリティプラットフォーム」として提供します(下の画像)。そのプラットフォームには、次の4つのサービスが含まれます。
1つ目は、ファームウェア等の改ざんを防ぐためのフラッシュメモリーを保護する技術の提供(①)。2つ目は、セキュアなファームウェアの更新を行う機能(FOTA)です(②)。これにより、更新サーバのなりすましや不正ファームウェアの侵入を防ぎ、正しいファームウェアの更新だけを安全に行うことができます。
3つ目は、IoTデバイスの一元管理・監視を行うクラウドサービスです(③)。IoTデバイスごとに、死活や稼働時間、そして第三者による改ざんによってファームウェアが変更されていないことを確認できます。また、改ざんが実際に行われなくても、「何らかの攻撃を受けている」ということを検知できます。つまり、インシデントが起こって初めてそれを知るのではなく、自分たちの管理するIoTデバイスが安全な状況にあるのかどうかを、リアルタイムで確認することができる仕組みです。
4つ目はMSS(マネージドセキュリティサービス)で、お客さまへインシデント通知やレポートの通知を行うサービスです(④)。ただし、これはオプションとして予定しており、ニーズは調査中です。

小泉: ①のフラッシュメモリーを保護する技術というのは、具体的にどういうものでしょうか。
矢野: こちらは、「ハードウェア版」と「ソフトウェア版」の二つがあります。ハードウェア版は、NanoLock Security社が開発した専用のフラッシュメモリーをデバイスに搭載するというタイプです。この専用メモリーは特殊な信号が入力されないとファームウェアの書き換えができないというものです。
ただし、この専用メモリーを実装するには、デバイスの基板から設計しなおす必要があります。そこで、ハードウェア版より比較的に容易にフラッシュメモリー保護機能を付与できるタイプとして、ソフトウェア版を提供します。こちらは、当社から専用のモジュールやSDKを提供しますので、それらをOSに組みこむだけで、フラッシュメモリーを保護することができます。
なお、OSは標準としてLinuxに対応していますが、それ以外の個別のOSについても、ニーズに対応していこうと考えています。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。